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【倉庫】『はい作業主任者』とは?

■はい作業とは?

 「はい」とは、倉庫、上屋、または土場に積み重ねられた荷の集団を指す言葉です。
所説ありますが
・  配置するの『配』
・『High』たかいところの荷物
・『はえ(掽)』古い日本語で木材などを積み上げた状態やその数※これが有力
などがあります。
なんとなく初見の漢字『掽』にロマンを感じてしまいます。

 はい作業とは、袋や箱の荷を一定の方法で規則正しく積み上げたり(はい付け)、 積み上げられた荷を移動するために崩したり(はいくずし)する作業のことをいいます。(小麦、大豆、鉱石等のバラ物の荷を除く) ※自然に安定状態になる物は除かれます。

パレットに乗せられた段ボールも該当!?


■はい作業には有資格者が必要な場合も

 物流倉庫などでは、うず高く段ボールの荷物が積みつけられている場面も多く見られますが、実は高さが2メートル以上の「はい」の「はい付け」又は「はいくずし」の作業については、事業者がはい作業主任者技能講習を修了した者のうちから、「はい作業主任者」を選任し、その者に作業に従事する労働者の指揮、その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければなりません。(労働安全衛生法第14条、同施行令第6条第12号、同別表第18第15号)
 ここでいう高さ2メートルの高さというのは2メートルの場所で作業を行うことではなく荷物が2メートルに達して入れば該当になります。(高さ1mの荷物を2段積みなど複数の荷物を重ねても該当します)

 高さ2メートル以上のはい作業でも(荷役機械の運転者のみによって行なわれるものを除く)という除外事項もあるのですが、よほど動線や作業が定型化しているなど洗練されていないと不可能であり、物流業者では必要な場合が多いです。
 逆にいえば2メートル以上の荷物の取り扱いを手作業で行うと「はい作業主任者」の選任が必要になるので例えば、他の作業員が容易に荷役機械の作業スペースに立ち入れたり、結束バンドやラップを巻く、パレット上の荷物をバラすなどの作業が生じる場合、除外の要件を満たさなくなる可能性が高まります。

 荷物自体に意識がいきがちですが、空パレットや輸送用コンテナの積上げなども倉庫内の保管方法次第で「はい作業主任者」の選任が必要なはい作業に該当する場合があります。

よく見る倉庫脇に積み上げられたパレット

■でも『はい作業主任者』って聞かないですよね?

 物流や倉庫において『運行管理者』や『倉庫管理主任者』はメジャーなのですが『はい作業主任者』は大手企業勤務でもなければ講習の受講や選任を推奨されることもなければ、そもそも存在自体知られていない可能性すらあります。(私見ですが過去3PL倉庫の委託先監査で管理状況聞いたところ???のリアクションを頂いたことが多々あります・・・)

 このように割とマイナーな『はい作業主任者』は労働安全衛生法に基づく技能講習を修了し、事業者が選任した者ですが物流・倉庫事業者の主たる監督官庁である国土交通省関連の法令(貨物運送事業法や倉庫業法など)では存在していません。したがって何かの許認可資料に添付したり、定期的な届出も不要なこともなかなか知られていない主な要因ではないかと過去の経験上は感じます。

 国土交通省関連の監査や適正化巡回指導でも指摘されることはなく、労基署の定期調査でも指摘されることはかなり稀な印象です。特に定期調査では限られた時間ということもあり書面上でわかる就業規則、賃金台帳、勤務記録など未払代金の有無や36協定違反は重点的に調査しているように見受けられますが安全衛生に関する事項などは安全衛生委員会の議事録やその周知状況などの確認で終了する場合が多いです。
 年に数回以上、労災が発生しているような事業所では安全衛生の専門官が差し向けられそこで『はい作業主任者』の未選任が初めて発覚する場合も多く見受けられます。対応や改善状況が悪いと労働局長から『安全衛生管理特別指導事業場』に指定され(もはや労基署ではなく、都道府県単位の局長から悪質な事業者が数社程度指定される)地獄の1年を送ることも。これはまた後日。


■それでも『はい作業主任者』重要ですよね?

 そんな不本意にもマイナーで未選任でも発覚するケースがかなり稀な『はい作業主任者』ですが労災防止の観点では非常に重要な業務を抱えています。
 
 厚生労働省が発表している陸上貨物運用事業の労災発生状況では起因物トップの「トラック」を除けば倉庫作業を連想するようなキーワードが散見されます。これらを発生させず社員を守ることが『はい作業主任者』の重要な業務なのです。

厚生労働省 2016年(平成28年)から2020年(令和4年)
陸上貨物運送事業における労働災害発生状況

■『はい作業主任者』の職務は?

 はい作業主任者は安全にはい作業を行うことを目的に以下の作業の直接指揮、実施の確認を行うこととされています。

はいの崩壊防止①
平積みを基本とし、最大限はいを高く積まないような措置を講ずること。

はいの崩壊防止②
はいの状態を確認、はいが崩壊しないように荷崩れ防止シートを使用し、ロープで縛り、くい止めを施すなどの措置を講ずること。

はいくずし作業①
中抜き、下抜きを行わないこと。

はいくずし作業②
容器が袋・かます・俵の荷で構成されるはいは、ひな段状にくずし、ひな段の各段は1.5m以下とすること。

保護帽の着用
高さ2m以上のはいの上で作業を行う場合や荷の落下の危険がある場所で作業を行う場合に、保護帽を着用させること。

昇降設備の使用
高さ1.5mを超えるはいの上で作業を行う場合は、滑止装置機能つきのはしごや階段を使用すること。

立入禁止措置
はいの崩壊または荷の落下の危険がある場所に、関係労働者以外のものが立ち入らないよう立入禁止措置を講ずること。

はいの間隔
高さが2メートルを超えるはい(容器が袋、かます又は俵である荷によって構成されるものに限る)の下端に 10cm以上の間隔をあけること。

照度の保持
はい付け・はいくすしの作業が行われている場所については20ルクス以上、労働者が作業のため通行する場所については倉庫内であれば8ルクス以上、屋外であれば5ルクス以上の照度を保つこと。


■『はい作業主任者』になるには?

 都道府県労働局長登録教習機関などで実施される講習を受講し終了試験をパスした後、事業者から選任を受ける必要があります。

講習受講にあたっては以下の要件があります。
・満18歳以上
・「はい付け」又は「はいくずし」作業に3年以上従事した経験


■まとめ

 はい作業主任者は、目立たないながらも墜落・転落災害、飛来・落下物による災害など危険性の高い作業を安全に行うためのプロフェショナルです。
 未選任の物流・倉庫業の皆様は一度、安全衛生委員会などで業務を棚卸しし、その要否を検討してはいかがでしょうか。


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