稲の香り

あの雨の日に稲の香りを私の記憶に植えつけた田んぼは、もうすっかり刈り取られて寂しい限り…

稲の香り

あの雨の日に稲の香りを私の記憶に植えつけた田んぼは、もうすっかり刈り取られて寂しい限りです。

最近の記事

デート

次は何について話そうか考えていた俺が 君にはぼーっとしてるように見えたみたいで 君は俺の前髪をあげた。 それが君にとっては思わぬ背伸びだったみたいで 小さい顔をリンゴみたいに赤く染めて 指の長くて綺麗なあまりに小さい手に隠れてしまった。 あぁこんな俺の比喩じゃ君に届かないな 君だったら未知の言葉操って、 世界一を更新してっちゃうからいっつも。 君のこと追っかけるだけで俺の人生がおわってしまいますように。 ねぇ俺今祈っているんだって。待ってよ。 ねぇ言ったらさ壊れそうだけど

    • 夜景

      真っ黒な闇に浮かぶ色とりどりの光は ずっと見てても飽きないな。 あのオレンジの色がいいなぁ。 いや、白も結構いいね。 あぁ、そっか。 全部誰かの頑張りらしいもんね。 そりゃ全部綺麗だね。 言い方悪いけど海の漂流物みたいだね。 私真っ暗な海は怖くて見れないから、 美しいものはそれだけ怖いから、 少し浮かんだ物がある位がいいな。 人間が少し侵略した跡があったほうが もはや落ち着くようになっちゃったね。 汚されてる方が安心するよね。 後部座席から運転する母を見ていると、 前の車の

      • 晴天

        あぁもう頑張れない。もう駄目だもう駄目だ、 そんな風に頭を搔き毟る頭の中の自分に言い聞かせる。 大丈夫。大丈夫。 結局のところ1番広い世界とは私自身なんだから。 大丈夫。大丈夫。 これからの予定も全部やめて駅のトイレで泣いて家に帰ろう。現実が待っているけれど、もうそんなのはしょうがないから。 私は今日も探している。 この毎日を解決する方法を。 力のない私を、いつかの私はどう思うのだろう。 そんな淡い期待でさえも、今はくすみ色に見えてしまう。 したい事はする

        • 煙草

          煙草の煙が上がっていくのを見ていた。 君と出会ったのはもうずっと前。 初めはお互いに遠慮や気遣いがあった。 でも、もうなくなった。 多分秋の終わりぐらいの烏の鳴く頃。 君は吸っていた煙草を地面に落とした。 君の吸っていたそれは他の沢山の煙草に紛れた。 あ、やべっという顔をした君。 煙草のポイ捨て。 私には隠していたのに思わずやってしまったのだろう。 肌寒いのに君の隣は少し暖かくて ふわふわした。 なんだか君の全てが愛おしくて 私はふふっと笑ってそれを許した。 きっと 

          勉強メンヘラ

          私は勉強が好きだ。こう言って、天才のように捉えられてしまったことがあって凄く嫌だった。 私は、別に出来るから勉強が好きなわけじゃない。実際できないことが沢山あるし。 どこが好きかと言われれば、多分存在そのものが好き(笑) 春休みになったり、3連休になったりすると、勉強が自分のペースで出来るようになる。 それに甘えて、つい最近まで1日に1分も勉強しない日が続いていた。昼近くに起きて、ゲームしてテレビ見て寝る生活。 しかし最近、私はちゃんと勉強を始めた。 勉強をするにあた

          勉強メンヘラ

          ララバイ

          もしかしたらどこかにあるかもしれない物話の一場面。 ある男がある女を何が尖ったもので刺す。 女の強い執着に対する苛立ちと恐怖から。 女は倒れ込む。元から計算済みだったかのように、不自然にゆっくりと。 倒れたその体からは承認欲求の血と、そこに流れていた確かな恋心が流れ出して男の目にふれる。 早くこの女の体から逃げ出したいつむじ辺りの黒髪が、毛先の金髪に押されて居心地が悪そうにいるのも見える。 その隙間からは自堕落の瞳が虚に床の染みを見ているのが透ける。 よく見ると

          ララバイ

          君の好きなバンドを聴いた

          君の好きなバンドを聴いた。 思っていたよりも爽やかで、切ない歌だった。 気持ちが先へ先へと急いでしまって、 最後まで聴ききらないうちに、いいね👍とLINEで言ってしまった。 本当はそんなに良いと思わなかったのに。 君のロックはこの声と重なってるんだ、とか 君はこんなのをかっこいいと思うんだ 私にとっては君の方がかっこいいのに なんて恥ずかしいこと思ったりして。 君にこの歌を歌って欲しいと思った。 君の中の音楽の形が気になった。 私みたいに激しいロックが好きでいてほしい、とい

          君の好きなバンドを聴いた

          k

          何も覚えていないほど必死に泳いだクレヨン。 あどけないままに、いたずらに走った丸い鉛筆。 人のことを見ないで力加減も分からないままでポキンと折れた鉛筆。 したいことがあるようでなかった、止まる派手なシャーペン。 2日で引き出しの中へ行く万年筆。 緊張して手汗で濡れた無地のシャーペン。 最後のはらいを駆けて、最後まで一緒の人を賭けて、最後まで思いやりに欠けて、パタンと置かれるボールペン。 君のボールペンは荒々しく駆けて、君は毎日絵を描いて、いつかパタっと止まるだろ

          梅雨を引きずり下ろして秋

          5月病の空が泣いたんだ 去年枯れた涙を必死に抽き出して だらだらとグダグダと メンヘラみたいな事ばっか言って 横目で私のことを見ながら 僕はもう一生晴れないよ なのに君は君ってやつは そんな無様でまだ立ち上がるのかよ そう聴こえた気がしたけれど まあ何でもいつかは消えて無くなると 思うから バカな言葉なんて僕が耳に入れないだけで なくなると思うから 相変わらずの初心な目で 億万光年先を見るつもりで 靴紐をアゲハかモンシロにするんだ もう行くからね 何言っても効かないよ だって

          梅雨を引きずり下ろして秋

          19℃

          君のスカートが揺れる。真っ黒なタイツの、踵のあたり、肌の色が少し見える。そこがたまらなくえっちだと思った。 冬の昼。眩しく控えめに降りかかる金の糸に結ばれた君の睫毛のその向こう。半透明な黒色の中のひまわりは、僕の世界を照らすものだと思った。 独りぼっちの歩き方。君の足首が靴に吸い込まれている狭間の美しさは、僕にしか見えないべきだと思った。黄金比をもうそれにしたいくらい、綺麗の中に少女らしさがあって、僕に可愛いものの存在を嫌でも認めさせる。 俯きがちに歩く君の体が少し斜め

          みっつめ。

          3度目の投稿になる。記念にクッキーを作ろう。 朝焼け(焦げた赤色)、水筒(淡いピンク)、制服(濃い青)、筆箱(アイボリー) 疲れたのに怠惰を辞めないコンタクト付きの瞳、14日に1回3分の努力で一向に変わらぬ肉のついた足、そして、根の曲がっている酷いくせ毛。 それを全部ごちゃまぜにして、150センチの型に入れる。少し溢れるのも計算の内だ。 しばらく置いておくと、私が現れた。クッキーモンスターだった。これは誤算だった。 ふわっとしてはいない、結構リアリティーのある感じ

          みっつめ。

          君の視線。

          あんな普通そうな子をなんで見つめるのかと思ったけれど、君はあの子が1番独特で大変そうなものを抱え持ってるって言ってた。私はてっきり君には夢が見えるのかと思ってた。でもそうじゃなくて、あの子との未来を見ようとしていただけだった。私には見れなかったんだって泣いた。

          君の視線。

          140字で、歌姫。

          昨日あいつは、取り柄なんて顔だけの、馬鹿な女だった。俺の話に合わせて笑い、自分は語らない。なのに今は、眩しいフリルと言葉にならぬ歌で僕をひれ伏せる。君の姿が霞む。あぁ、君は紛れもなく本物の歌姫だ。君は歌姫だよ。冷たい床を濡らして貴方の才能に降参する。この瞬間が彼は大好きだった。

          140字で、歌姫。