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煙草

煙草の煙が上がっていくのを見ていた。
君と出会ったのはもうずっと前。

初めはお互いに遠慮や気遣いがあった。
でも、もうなくなった。

多分秋の終わりぐらいの烏の鳴く頃。
君は吸っていた煙草を地面に落とした。
君の吸っていたそれは他の沢山の煙草に紛れた。
あ、やべっという顔をした君。
煙草のポイ捨て。
私には隠していたのに思わずやってしまったのだろう。
肌寒いのに君の隣は少し暖かくて
ふわふわした。
なんだか君の全てが愛おしくて
私はふふっと笑ってそれを許した。

きっと 
きっと そういう何気ない何かが
私たちをダメにしていったのだろう。

もうすぐ君がほつれたジーンズで現れて
2人で少し歩いて煙草を吸うだろう。

やっすいレストランに入り
禁煙席に座り
ワインで乾杯する。

煙草の匂いがするだろうに
禁煙席なんて迷惑だろうね。
そんなことは私も君も言わない。

この後明け方に家に帰ったら
有給で仕事を休むのだろう。
そして貯め込んだ有給で行こうとしていた
4泊5日の旅行の予定を
3泊4日に書き換えるのだろう。
私って馬鹿だ。
そんなことを考えながら
目の前の冴えない男を見て飲むワインは
冷たさしか感じられない。

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