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”成果のためにタイパ追求”が抱える、構造的矛盾とは?(理論編)

こんにちは。米川(@yoneshi0320)です。

本日は、これから新しい仕事を始める方、異業種への転職、他部署へ異動した方へおすすめの内容です。

お時間ない方は、以下を30秒でどうぞ。


30秒で読める要約

<結論>
– 質の高いアウトプットをするためには、効率が悪くみえても、質の高いインプット”だけ”する。

<理由・背景>
– 良いインプットとは、良いアウトプットができて初めて定義される

– ゆえに”知っていてもできない”は、”知らなくてできる”よりパフォーマンスが低い
– 上位者(=マスター)の見えている世界は、初学者には見えていない
– 70点程度のアウトプットを出す人間ならば、機械やAIですでに十分

– ざっと理解したいだけなら、この限りではない
– 具体的な実践とインプット方法は、次回の実践編で


動画でインプットするので。

 新しい仕事についた際、まず初めにやることといえばインプット。しかし、(当然ながら)最初は”何をインプットすべきか?”が、わかりません。”わからないことがわからない状態”です。

そこで必要なのは、”インプットすべき情報を知っている人”。多くの組織でメンターなどが担うでしょう。しかし、昨今は動画での学習も定着し、メンターが薦める本や論文でのインプットは、受け手側に”コスパやタイパ※の悪いもの”と認識されることも。

では、どちらを優先してインプットすればいいのでしょう?

※タイムパフォーマンスの略。本noteでは、”単位時間あたりの情報密度や質を指す言葉”として扱います。

ぼくの現時点の結論

質の高いアウトプットをするためには、効率が悪くみえても、質の高いインプット”だけ”する。

……どういうことか?ゆっくり説明します。

家庭の冷蔵庫から、三つ星は生まれない

累計32と、世界で最も多くの星を獲得した料理人である、故ジョエル・ロブション氏。世界最高のシェフである彼は、”料理”を次のように表現しました。

”最高の素材を選び、その自然な味を強調し、さらに高みに持っていくこと。それが料理である。”

出典:https://restaurant.ikyu.com/s-spot2278/

夕方のテレビ番組では、しばし有名シェフが冷蔵庫の余りものから、家庭では味わえない品を作る様子が。もちろん、番組自体はメイン層である30代〜50代主婦に向けて息抜きを提供するものであり、高い意義を持ちます。

しかし、料理の質において三つ星レストランにかなうことは、あり得ません。一流店であればあるほど己の目利き、もしくは絶大な信頼にたりうる卸業者に素材選びを任せます。2日間置いておかれたカット野菜とチューブの薬味から、世界のVIPを虜にするスープは作り出されません。

最初の一杯は誰の手に

 料理の”質”はわかりやすい。では、仕事の”質”=パフォーマンス が高いとは何か?

パフォーマンスは日本語で「遂行(perform)していること(-ance)」であり、同じ語源を持つ言葉にfurnish(備えつける)、furniture(家具)があります。つまり、パフォーマンスが高い人材とは、”相手に高付加価値となるスキルを備えており、かつ遂行する度合いが高い人材”と定義できます。

例えば、重要な取引先との懇親会。先方含め全員がビールを頼んでいる状態で、一つだけジョッキが来る。相手を優先して渡したいが、すると乾杯までに泡がなくなり、ぬるくもなる。ゆえに、”正解”は”自分が先に受け取り、最後に来たビールを相手に渡す”です。

仕事の質を語るのに飲み会の作法を話すのは少々、時代錯誤かもしれません。が、”初対面の相手をもてなし、これからの関係性を築くために酒宴を設ける”は、1,000年以上前から行われてきたのも事実。

ここで興味深いのが、評価の順位。正解を知っているのに遂行できなかった場合は、知らずに遂行できた場合よりパフォーマンスが低い、と評価される点です。

マスターと弟子の見えている”世界”は異なる

 なぜこのようなことが起こるのか?

1990年代のアクション映画やバトル漫画において頻出なのが、マスター(=老齢な師匠)と主人公(=若い弟子)の修行シーンです。

マスターは弟子に「いいからやれ」と説明もなく、掃除や直立不動でバケツをもたせるなど、一見戦闘において意味のなさそうな動作をまいにち要求。主人公は反発するものの、仕方なしに日々繰り返します。

そして戦闘シーン。主人公の体に染み付いた動作は敵の攻撃を防ぎ、避け、的確な一撃を食らわす。自分が幼い頃は「そんなものか」と、不思議ながら受け入れていました。

が、今になり思うのは、マスターには主人公が華麗に戦う映像が”最初からみえて”いた。つまり、マスターにみえているものが、主人公には修行開始時点ではみえていないのです。

良質なインプットは転換率が高い

 質の高いインプットとは、質の高いアウトプットつながるインプットである。つまり転換率が高いものです。

前述の例で、主人公がいくら必殺技の原理やエネルギーを理解していても、肝心の場面で技を放てない。そのインプットの質は、最悪の評価でしょう。(こんな描写はそもそも描かれませんが。)

もちろん体調や精神面など、考慮すべき面はあります。ただ、それらを踏まえた上でなお、どのような状況/状態でも出せるようになるまで、とにかく反復させる。

これこそ転換率が最高、つまり質が最も高いインプットといえます。

ざっと知りたいのなら、別

 しかし、全員が上記のようなインプットをすべき、とは思っていません。ここでの対象は、”そのスキルをメインに、向こう3-5年活躍したい人”です。

たとえばコンサルタントなど、その業界を数日でざっと理解し、あとは思考力で価値を出す人にとって、その業界での特有スキルは理解しているだけで十分です。(もちろん、その場合のコンサルタントのメインは”思考スキル”になります。)

しかし、業界特有スキルをメインで扱う人は、とかく質の高いインプットをどれだけ得られるかが重要に。なぜなら、70点程度のアウトプットであれば、chat-GPTなどの大規模言語モデル(=LLM)でほぼ出力できるようになるため。

同じインプットであれば、人間は量もスピードも勝てないLLM。唯一の綻(ほころ)びがあるとすれば、データ化できないものも含めた質の高いインプットでしょう。

で、何をすればいいの?

 では質の高いインプットを確保し、一刻もはやくパフォーマンスをあげる。その具体的な方法と実践について、は……次回の実践編に続きます。


30秒で読めるまとめ

<結論>
– 質の高いアウトプットをするためには、効率が悪くみえても、質の高いインプット”だけ”する。

<理由・背景>
– 良いインプットとは、良いアウトプットができて初めて定義される

– ゆえに”知っていてもできない”は、”知らなくてできる”よりパフォーマンスが低い
– 上位者(=マスター)の見えている世界は、初学者には見えていない
– 70点程度のアウトプットを出す人間ならば、機械やAIですでに十分

– ざっと理解したいだけなら、この限りではない
– 具体的な実践とインプット方法は、次回の実践編で


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次回は2023年04月23日(日)更新予定

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