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かけホーダイ 照れホーダイ

今日もお疲れ様でした。



週の初っ端から、いきなり自分のやらかしというか、
やってなかったことが明らかになり、大慌てでリカバリー。



何だか、全然上手くいきませんね。



皆さんにとっては、どんな月曜日でしたでしょうか。






さて、今日は久々にこちらのコーナーです。




「ストレスジャンププール」、略して「#SJP」というサークル活動。



線路に飛び込むのではなく、"不思議なプール"に飛び込むと、
思い描いた最高の世界に行けるというフォーマットに沿って、
各々が、好き勝手に"小説を殴り書く"という活動です。




JKとタピオカを飲んだり、友達と家でゲームをしたり、
そんなことを小説で書くという、この殴り書き感(笑)。



是非、皆さんも以下記載する小説をお読み頂き、
素晴らしい文学作品には無い荒々しさを(笑)、
ご堪能頂ければ幸いです。それではいきましょう。








~ストレスジャンププール(#SJP)~



「あぁぁー…」



死んだ魚のような目で、駅のホームに立つ男。



朝6時台の駅に、多くのサラリーマンがごった返す。



上司の顔を思い浮かべるだけで、吐き気が催してくる。



仲良く話が出来る相手も、あの職場には皆無だ。



虚ろな目で時計を見ると、まだ朝の6時20分。



これから満員電車に詰め込まれ、ノコノコと出社し、
悪夢のような時間が夜遅くまで続くかと思うと、
一日というのはかくも長いものかと、驚きを隠せない。



長い一日、長い一年、長い一生。



生きていれば、途方もなく続く苦しみ。



死ねば、ここで終わりに出来る苦しみ。



男は静かに、線路に向かって歩を進めていた。



「もうここで、人生に"辞表"を出そう…」



人でごった返す駅で、静かな男の歩みに気付く者はおらず、
駅に到着する電車のライトは、もうすぐそこまで迫っていた。






「そっちじゃないよ」



突然、男の手を強い力で引く小柄な女性。



女性が、ホームの端へと手を引っ張って走り出すと、
「えっ、えっ、えっ?…」と、成す術もなくドタバタとする男。



「あなたが飛び込むのは、こっち」



ホームの端まで来ると、何やら不思議なプールが広がっていた。



…駅の端にプール?



ついに自分も、頭が相当どうかしてきたかと思った男だったが、
何だかふと、電車に詰め込まれて会社に行くよりも、
この変なプールに飛び込む方が、ずっと簡単なことに思えて、
男は、女性に促されるがままに、目の前のプールに身を投げた。



キラキラした水面を突き破った瞬間、真っ白に消えていく視界。



その直後、全く新しい世界が男の目に飛び込んできた。








知らない夕方の街を、多くのサラリーマンが行き交っている。



「どこだ、ここ?」



皆目見当も付かず、どうして良いやら分からず、
男はとりあえず、近くにあったベンチに腰を下ろした。



腕時計を見ると、もう終業時刻を過ぎており「ヤバッ」と慌てる男。



すると次の瞬間、ポケットのスマホから着信音が鳴り出した。



上司に熱い怒鳴りを聞かされるんじゃないかと、冷や汗が額を流れ、
慌ててスマホを手に取ると、画面に映る発信者名を見て驚いた男。



その名前は、以前いた会社で、割と仲良く話してくれた、
当時、派遣社員として働いていた女性の同僚だった。



男「もしもし?」

女性「あっ、お久しぶりですー。以前、お世話になった〇〇ですー」

男「あ、どうもお久しぶりです。お元気ですか?」



怖い上司とは打って変わり、久々に聞いたその女性の、
ほんわかした声に、何だか随分と癒されたような気がした男。



女性「何とかかんとか、元気でやってます。

  前の会社をお互い辞めてから、全然お話する機会が無かったですねぇ」

男「確かにそうですね。

  私もまぁ…、何とか元気にやってますよ」



女性の前では、つい意味も無い見栄を張って見せようとする男。



女性「でも転職が続くと、本当人間関係が定着しなくて、

   今の職場でも、正直全然心を開いて話せる人もいないし。

   急にお顔を思い出して、…ついお電話をかけてしまいました」

男「あ、本当ですか。いやぁ、そんなこと言って貰えて嬉しいなぁー。

  また、いつでもお電話頂ければ、お話お聴きしますよ」



さっきまで線路に飛び込もうとしていた男だが、女性との電話で、
すっかり"大人の余裕"みたいなものを見せようとし始めていた。






その後、20分近くその女性と他愛もない話に花を咲かせた後、
電話を切り、缶コーヒーを開けて一息を付く男。



こんなに人と楽しく会話したの、何年振りだろう。



そう思いながら、ぼんやりと夜空の星を眺めていると、
またしてもスマホが鳴り出し、今度は違う人からの着信。



画面に映された名前は、また別のかつていた会社で、
新人の頃から男が面倒を見てきた、若手女子社員だった。



女子「先輩ー!!私です、覚えてますかー?」

男「あぁ、久しぶり。君のことはほとんど忘れかけてたけど、元気か?」

女子「ひどーい、忘れかけないで下さいよー、もう!」



元気で明るい女子社員に対し、つい小粋な返しを見せようとする男。



女子「先輩、ちょっと聞いて下さいよー!」

男「どうしたんだ、急に」

女子「営業の□□さんが、最近私に付きまとってくるんですよー。

   妻子もいる良いオジサンのくせに、気持ち悪くないですかー!?」

男「そりゃヤバいな」

女子「あまりにもしつこいんで、今日人事に相談して、そしたら…」



昔、面倒を見ていた若手女子社員のセクハラ相談電話も、
20分近くの長電話となり、段々とヒートアップする彼女の話に、
よく女性はこれだけ感情を込めて、長い時間話ができるなと、
途中から、逆に感心すらしてしまっていた男。






電話を切って、缶コーヒーをグイッと飲み終えると、またも着信。



今度は、以前お世話になった別の会社の先輩女性社員からだった。



色々と未熟な自分を面倒見てくれた、"姉御肌"の先輩と、
また久々にお話が出来るのが嬉しくなり、電車に乗るのを辞めて、
数駅の区間を、話を聞きながら歩くことにした男。






しばらく経ってからも、自分を思い出してくれる人、
悩みを相談してくれる人、逆に今でも面倒を見てくれようとする人。



さっきまで、本気で死のうと思っていたことなどすっかり忘れて、
スマホの画面が耳の汗でベットリする程、長電話をし続けた男。






彼が通り過ぎた商業施設の大型ディスプレイには、
「自助・共助」を是とする、官首相の記者会見が映されていた。



官首相「国民の皆さんには、政治の助けを当てにすることなく、

    是非とも『自助・共助』で、この不況下を乗り切って頂きたい。

    その為の政策として、各携帯会社の電話料金の見直しを図り、

    皆さん同士で、より多く電話をかけ、話して欲しいと思います」




突然、フリップボードを提示した官首相。



そこには"かけホーダイ 照れホーダイ"という文言が記されていた。




官首相「月額の基本料金をですね、電話をかければかける程、

   長電話をすればする程、相手が内心喜ぶ人にかける程、

   どんどん安くなるプランというのを、各社に要請したいと思います。

   特に、オジサン世代の男性なんて言うのはですね、

   悩みを溜め込む割に、誰にも相談しようとせずにですね、

   誰かが話しかけてくれるのを、いつまでも待っているんですね。




   そういうオジサンに、どんどん電話をかけて下さい。

   そして、他愛もない話や、相談などを持ちかけてみて下さい。




   オジサン達、喜びますよ。

   コンクリートミキサーみたいな顔も、思わず和らぐことでしょう。

   それで皆さんの月額料金も、どんどん下がっていきますから。



   これこそまさに、『自助・共助』の社会ではないでしょうか」




何を企んでいるのか分からない、官首相が浮かべる薄ら笑いに、
取材陣から、無数のフラッシュが炊かれていた。








翌朝。



男が目が覚ますと、そこは自宅のベッドだった。



「何だ、…夢か」と落胆する男だったが、
ふと机に目をやると、スマホが何やら点滅しているようだ。



見てみると、ショートメッセージが届いていた。






"先輩! 先程は話を聞いて下さり、ありがとうございました!




今夜もちょっとだけ、…長電話して良いですか?"






~ストレスジャンププール(#SJP) 終わり~

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