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言葉の宝箱 0324【才能っていうのは、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、闘志とか、そういうものと似ている】

『羊と鋼の森』宮下奈都 (文春文庫2018/2/10)


高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、
調律に魅せられた外村は念願の調律師として働き始める。
ひたすら音と向き合い、人と向き合う。
個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、
調律の森へと深く分け入っていく一人の青年が成長する姿を描いた
恋愛小説、調律師のお仕事小説でもある。解説佐藤多佳子。


・頼みごとをされることは多かったけれど、
大事なことを頼まれるわけではなかった。
大事なことはちゃんと大事な誰かがやってくれる。
どうでもいいようなことを頼まれるのはどうでもいいような人間だ P8

・聞くという行為は、責任を伴う。
聞いて、答えてもらったら、
もう一度こちらから何かを返さなくてはいけない P11

・知らないっていうのは、興味がないってことだから P39

・どこに行ったって感じのよくない人はいて、
人をじりじり踏みにじるようなことをいう P88

・あきらめはしない。
ただ、あきらめなければどこまでも行けるわけではないことは、
もうわかっていた P94

・「あきらめないと思います」声を出さずにつぶやく。
あきらめる理由がない。
要るものと、要らないものが、はっきり見えている P96

・才能っていうのは、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。
どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、闘志とか、
そういうものと似ている P139

・自分の好きなピアノの音色のために、
誰かの不運を願うようなことはありえる。
たとえばコンクールに出た誰かが勝ちますようにと願うことが、
他の誰が負けますように願うことと似ているのに、
それを咎められないのは、ただ願いだからか。
願ったからといって叶うとは限らないのだ。
僕がいてもいなくても、木の実は落ちる。
誰かが笑い、誰かが泣く P153

・だいじょうぶ、と言ってあげたかった。
ぜんぜんだいじょうぶじゃないのに P176

・あきらめる。あきらめない。――それは、どちらかを選べるものなのか。選ぶのではなく、選ばれてしまうものではないか P201

・思いついたことをやってみたらいいと思うの。
うまくいかなかったら、戻せばいいじゃない P209

・そんなに練習できるというのは、それだけで才能ですね P214

・どんなことでも一万時間かければ形になるらしいから。
悩むなら、一万時間かけてから悩めばいい P222

・一万時間越えなくたって、できるやつはできる。
一万時間越えても、できないやつはやっぱりできないんだよなあ(略)
口にしないだけで、みんなわかってるよ。
だけどさ、才能とか、素質とか、考えないよね。
考えたってしかたないんだから(略)
ただ、やるだけ(略)
才能がなくたって生きていけるんだよ。
だけど、どこかで信じてるんだ。
一万時間を越えても見えなかった何かが、
二万時間かければ見えるかもしれない。
早く見えることよりも、
高く大きく見えることのほうが大事なんじゃないか P245




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