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救うのは企業でなく"人" - 人財 -

12月5日の日経新聞に気になる記事を見つけました。すでにご覧になっている方も多いかもしれません。

フィンランドの経済を支えていたノキアが傾いた時、国が救おうとしたのは企業ではなく"人や技術"でした。個人のリスキリング(学び直し)や起業を支援した結果、ノキアを離れた人材などスタートアップの裾野が広がり、成長力が復活。なんと素晴らしい考え方でしょう。

この北欧型システムは、アメリカシリコンバレーのハイリスクハイリターンではなく、柔軟性と安全性セキュリティを兼ね備える"フレキシキュリティ"が起業のベースになっているようです。私は、ここに日本のチャンスがあると思うのです。日本経済が回復できるかは、いかに人的資本を最大限活用できるかにかかっているのではないでしょうか。

実は、このような北欧型の人材育成やリスキニングのような考え方は、日本市場にどんどん入ってくるのではないか、と私は数年前から考えていました。そんな思いのもとで弊社がいち早く活用・実践してきたのが、この場でも何度もお伝えしてきた「センスメイキング理論」です。

センスメイキング理論 

少しだけ復習しておきましょう。
「センスメイキング理論」とは、アメリカの組織心理学者カール・ワイクによって提唱された「起きている現象に対して、能動的に意味を与える思考プロセス」のことで、組織に大きなベクトルの推進力を持たせるための思考プロセスを意味します。

例えばビジネスが予期せぬ事態が生じた場合(2020年に発生したコロナのような突発的事象等)、過去のビジネススキームから論理的に正解を見出すことは困難でしょう。そのような場合にこの"センスメイキング"によって、進むべき方向の「意味づけ」を思考します。そして組織がその「意味」を理解した時に、組織全体が同じ方向を向いて突き進む大きなベクトルの推進力を持つようになるのです。

そしてまた先ほど述べた、これまでに経験のないような状況でビジネスの進むべき方向性を示す場合には、組織全体で多様な方向性の議論を尽くし、ステークホルダーが納得する"腹落ちする"ストーリーを導き出す必要があります。そのための方向性集約プロセスそのものが、センスメイキング理論と呼ぶのです。

従来型ロジカル優位マーケティングの問題点

従来のマーケティングで重要視してきたビジネススキームから論理的な正解を見出すことは困難であると、前項で記しました。それは何故なのか、もう少しここで触れてみましょう。

ロジカル思考優位マーケティングでは、市場環境分析(市場構造、顧客・生活者、ユーザー分析、商品分析、流通・販売分析、競合分析、コミュニケーション分析等)を既存データをもとに自社の強み弱みを分析して結論を見出してきました。そしてこれまではそれが大いにworkしてきた、私も当然マーケターとしてこのようなことを多分に行なってきています(もはやリサーチが専門ですか?と言われるくらい多くの調査や分析を行ってきました。笑)

しかしながら、ここに一つ大きな不具合が生まれてきました。"過去の延長に未来は存在する"ということが前提で分析をしてきたことが、段々と通じないと身に染みて感じてきたのです。

不確実性が高い時代の到来

私がどうしてこんな風に感じたのか、3つほど挙げてみます。

1つめは、予定調和的発想だけでは"イマ"の時代にそぐわない、速さに対応できないと体感したことにあります。VUCAの時代と言われるようになって気づけば久しくなりました。この環境になってから来月の動きですら予測不可能で変動性、不確実性、曖昧でかつ変化が激しく、PDCAを回すという発想では、Pを計画している段階で時間がかかり過ぎて、実施する計画を実行する段階では、すでに時遅しということを何度も経験したのです。これでは全く作業自体が無駄になってしまう、そう思いました。

2つめは、オリジナリティの欠如です。この予定調和的発想のデータには、客観的であるという従来のマーケティングで重視してきた概念が色濃くありますのでデータを構築して戦略展開すると、どの企業においても同じような結果(プラン)となってしまい、オリジナリティが欠如するのです。それはそうですよね、これまでの成功事例はなんたるかを分析してのプランです。売れる前提で作る、ここになんとも言えない矛盾を感じました。

3つめは、このままでは新しい知を生み出す組織にならないのではないか、という私の葛藤です。2つ目にお伝えした真逆の主観的、自分が思う、こうなりたいという思いがどうして従来のものでは生まれてこない。これは先の北欧的な人重視での動きとはかけ離れている。なんと悲しいことでしょうか。日本には素晴らしい人財がいるというのに…。

"私はこう思う"が重視される経営へ

私のクライアントにも、ご自身のVisionを自分の言葉で伝えない、社員と共有化されない経営者やボードメンバーが多い、と感じることがあります。
日本人にとっては、あまりそうしないことが美徳であった時代だったのかもしれません。自分が思う、自分がこうしたいというのは、X世代にとっては、組織の中でははっきり言わない方が良い。組織上それは暗黙のルールであると考えている方の方がまだまだ日本では、多いのではないかと思います。しかしながら、これが今の日本企業からダイナミズムを失わせているのではないかとも思うのです。

放送中の大河ドラマ「鎌倉殿13人(https://www.nhk.or.jp/kamakura13/)」で、北条義時(第2代執権)に対して長男北条泰時(第三代執権)のように「泰時が父親義時にはっきりとモノを言う、義時もそれに受けて立つ」ような知的コンバット関係の企業は、現代においては少ないと考えます。でも過去の日本人はそうしてきた(三谷幸喜氏は面白いとこに眼をつけましたよね)。源氏がたった3代の鎌倉殿の権力闘争で終焉したのに対して、その後の北条が、17代執権を繋ぐ土壌は一部には対話力からVisonの共有化にあると私は思います。

ピラミッド型からアジャイル型への変換

従来型のマーケティングでは、三角形のピラミッド型のもしくは逆ピラミッドを書いて、静的構造体を書いて説明することがありました。
「経営理念→ビジョン→マーケティング→コミュニケーション」
といった流れです。しかしながら、これでは"イマの時代"、線形的スタイルであってクリエイティビティが発揮できません。

現在のマーケティングは"アジャイル型"で、どこから始まっても可変的で自由度の高いものが求められています。アジャイル型マーケティングには、それぞれ異なる小さなチームが存在し、チームにはリアルタイム分析知見があると言えるでしょう。

大企業ではKPIを持つ各部署が、製品開発、マーケティングテクノロジーなどを各々のもとの理屈で行っていますが、アジャイル型の比較的小規模なプロジェクト企業では多様な専門知識をもつ部門が横断的専用メンバーで構成され、小人数で同一目的に取り組み壁を壊しながら活動しています

これはまさに、今回のワールドカップ日本代表のスペイン戦、後半10分の三笘、堂安、田中、前田、伊東純也の連動の役割分担にも見えるのではないでしょうか。あの動き、あのチームプレイはまさしくアジャイル型攻撃であったのです。

NHK: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221202/k10013910591000.html

マーケティングは知見の解釈を一瞬にする、エンジニアは作業プロトタイプで力を発揮する。繰り返しますが何層もの承認決定プロセスの従来型意思決定プロセスは、アジャイルマーケティングでは最も避けたいものの一つとなるのです。チームはあくまでも自律で、任務への意思決定の権限が必要です。

そしてトップマネジメントは強いコミットメントが必要で、経営陣は進捗をモニターしながらも戦略レベルでのフィールドバックを与えると同時にチームに自由度を与えコーチングする。経営陣が自ら主体的に全体戦略との整合を取らなければならないのではないでしょうか。

KMIが目指す未来

北欧型の人材育成やリスキニングついての記事をきっかけに、色々と私の考えをお伝えさせていただきましたが、まとめの代わりに弊社が皆様と共に目指している未来について、以下に記して本日のnoteを終えたいと思います。

1)対個人:イノベーションを引き起こす人財育成。Breakthrough mindの為に、まず自分を知り、新たなる自己の再活性化、リスキリング支援
2)対企業:柔軟性と安全性を兼ね備えるフレキシビリティある企業に向けての支援とチャレンジする起業への支援
3)対国:日本の成長力や危機からの回復力を高めるための支援活動

話が広がってしまいましたが、お付き合いありがとうございました。
また次回お会いしましょう。

(完)