見出し画像

人類の起源から映画『Don’t Look Up』を考える[Vol.1]

バカだなぁと笑っているあなたも同じ人類

『Don’t Look Up』
2021年上映
監督/脚本:アダムマッケイ
キャスト:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ティモシー・シャラメ 等
ーあらすじ(filmarks引用)ー
天文学専攻のランドール・ミンディ博士(演:レオナルド・ディカプリオ)は、落ちこぼれ気味の天文学者。ある日、教え子の大学院生ケイト(演:ジェニファー・ローレンス)とともに地球衝突の恐れがある巨大彗星の存在を発見し、世界中の人々に迫りくる危機を知らせるべく奔走することに。仲間の協力も得て、オーリアン大統領(演:メリル・ストリープ)と、彼女の息子であり補佐官のジェイソン(演:ジョナ・ヒル)と対面したり、陽気な司会者ブリー(演:ケイト・ブランシェット)によるテレビ番組出演のチャンスにも恵まれ、熱心に訴えかけますが、相手にしてもらえないばかりか、事態は思わぬ方向へー。果たして2人は手遅れになる前に彗星衝突の危機から地球を救うことが出来るのでしょうか!?

現実を見ろ!が届かない…ドタバタ劇

本作では、半年後に地球を木っ端微塵にする彗星の存在を証明した天文学者達が対応を訴えても世の中は聞く耳を持たずによそ見ばっかりしている。

大統領選の獲得票数や、経済、会社の利益そういったことの方が大事で、よくわからない彗星に色々邪魔はされたくないし、利益にはならないのなら、都合いい方に事実をねじ曲げる。それを受ける市民は昨日を労い、今日を生きる事で精一杯。ルールの中で生き、基本的に流れに身を任せることで共存している。

本作を視聴した人は「いやいや、早く彗星を何とかしろよ」と思いながら、登場人物を焦ったく、哀れんで観ていた人も多いのではないだろうか。

そんな作中のアホな人類は、紛れもなく私たちである。
そんな私達が地球の覇者のくせに彗星を前にして作中のような立ち振る舞いをする理由を人類発展の起源から考察したい。

人間が地球の覇者になれた理由

人間は動物に比べて、サイズや腕力もなければ、毒牙を持っているわけでもない。空も飛べなければエラ呼吸も出来ない。なのにゾウやライオンなどを差し置いて地球の覇者として君臨している。

その要因は明確にある。
人類が群れとして規格外の大きさと結束力を誇るからだ。

人間にとても近いチンパンジーの群れの個体数上限は50頭程と言われている。それはフィジカルな支配力を基軸としているからだ。ボスとなるオスが自分の力を実際に見せつけることで自身の権力をかざし、その他を服従させ、群れを維持するシステムだからだ。

50頭を超えると「見せつける」行為が行き届かなくなり、群れの秩序が崩れ内乱がはじまる。手が届かない距離に影響力を発信する手段を持たないのだ。チンパンジーをはじめとする動物の脳は理解に一定の実体験が必要なのである。

それに対して人間は集団で無形の意思を共有し、「概念」で繋がり合えるという能力が動物とは比べものにならない高いレベルで備わっている。実際に見せつけられなくても、存在しなくても、色々なものを信じることが出来るのだ。

人類は宗教や国境等の「概念」的なアイデンティティーを作る。加えて政治、通貨、株式、権利等の「概念」的価値を作り、それら「概念」の中で生きている。その「概念」的繋がりがあるからこそ全然知らない人とも同調が出来る。「概念」の下に手を取り、規格外サイズの群れを構成し、繁栄を成し遂げ、地球の覇権を我が物としたのだ。

形のない「概念」

紙幣の価値は材料の価値ではなく、通貨という「概念」が紙に与えた価値だ。国境とは実際の線でなく、ここからここまでが我が国家という「概念」の約束事だ。宗教や神話も実体験ではなく「概念」を信じ継承することだ。言わずもがな株式も「概念」である。

我ら人類はこれら「概念」の下に生きる価値を見出し、協力することで発展してきたのだ。

人類にとって「概念」は大切な生きる意味なのだ。

概念と同調の行く末

では、果たして人類は概念の前例にないことが起きた時、溢れる情報の中で取るべき行動を見極められるのだろうか。概念から飛び出すのか。既存の概念の中で生きることを優先するのだろうか。

本作を見ている私たちの中には「死んだら「概念」もクソもないだろう!」と笑う人が多いだろう。しかし本当にそうだろうか?

実際に人類には職場における「過労死」という意味のわからない死因がある。社会的役割や通貨という「概念」のために命を削る人がいる。国境や権利という「概念」のために戦争が起こり、たくさんの命が奪われてきた。人類にとって概念はとっくに命よりも大切なものだと私達が身を以て証明しているではないか。

本作では、人類と「概念」の関係を彗星との距離で測っていく。人類は地球を「概念」ごと木っ端微塵にする彗星の存在に気づいた時に動くのか。目視できる時に動くのか。落ちるまで動かないのか。

視聴者に本質への「気づき」を訴えかけているのか、「諦め」を促しているのか。どっちなのだろうか。

『DON'T LOOK UP』を取り扱った記事シリーズ



-YOHUKASHI BLOGについて-
1989年東京生まれ。
アメリカはミシガン州にてマルチメディアのマーケティングと商品企画をしながら、
音楽制作(Youtube)/イラスト(Instagram)/ブログ等をやっています。
アメリカをふらふらしてますが、どこにいても同じようなこと考えてるんですよね。
そんなこんなで場所に依存しない自分を大切にしています。
あと関心あることには素直になったほうが良い。時間が豊かに埋まるから。

主なブログ内容:
・映画感想文/考察
・実体験に基づくエピソード
・書籍/音楽レビュー などなど

SNSリンク
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCrDsU-Y7on0AuJKxxLkF6GA
Instagram:https://www.instagram.com/yohukashi_records/

-その他おすすめ記事-





この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?