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萌えの原点・高橋留美子の世界

今回は、高橋留美子先生について書いてみたい。
というのも、この令和になって「うる星やつら」のリメイク版が放送されていたのを見たからさ。
見た感想としては、正直面白くなかった。
アニメの出来が悪かったわけでもないと思う。
割と作画は良かったし、ちゃんと声優も一流どころを揃えてた。
なのに全然面白く感じなかったのは、これはもう時代のせいとしか言いようがない。
80年代漫才ブームの頃のツービートの漫才を今ビデオで見て、全く笑えないのと同じことである。
やはり笑いは生鮮食品みたいなもんで、どうしても賞味期限を過ぎると味が落ちるんだよな・・。

改めて思うことは、「うる星やつら」って出てくるやつら全員が異様にハイテンションで、ぶっちゃけうるさいんだよなぁ。
今、高橋先生は66歳というご高齢なんだけど、「うる星やつら」描いてた頃はまだピチピチの20代だからね。
そりゃもう、作風にもパワーが漲ってるわけよ。
だけど平成になってから連載を始めた「境界のRINNE」を見てみると、あまりやかましくないんだ。
「うる星やつら」や「らんま1/2」が時速150kmの剛速球だとしたら、「境界のRINNE」はせいぜい時速120kmといったところだろう。
先生も衰えた?
まあ、確かにそれはあるかもしれないけど、でも私はたとえ球速が遅くとも「RINNE」は意外に面白かったんだよ。
面白いといっても爆笑できる類いの面白さじゃなく、見てて安心できる類いの面白さ。
ドリフや志村けんのコント的な面白さ、とでもいうべきかな。
ほとんどが予定調和で、「ここでタライが落ちてくるぞ」というタイミングにしっかりタライが落ちてくる、みたいな。
特に爆笑まではしないんだけど、何だか見てて愉快。
高橋先生は剛速球を投げられなくなった分、逆にコントロールは冴えてきたんじゃないの?

特に「RINNE」で秀逸だと思ったのが、ヒロインのキャラなんだ。
「うる星やつら」でも「らんま1/2」でも「犬夜叉」でもヒロインは男勝りの腕っぷしが強いキャラだったのに、「RINNE」のヒロイン桜は女の子らしい女の子である。
その一方、女の子とは思えないほど冷静沈着な性格で、常にテンション低めなのが桜の特徴。
ラブコメ要素ありの作品なのに、桜は一度たりともデレたことがない。
そのくせとても優しくて、主人公の仕事をいつもお手伝いしてくれる。
つかみどころのないキャラだよなぁ。
だけど、これがいまどきのラノベ型テンプレのキャラとは一線を画し、妙に新鮮で私は大好きだった。
さすがはキャラ作りの天才、高橋先生である。
時代の流れを読んだ上で魅力的な女子キャラを作るのが高橋先生だし、桜は今の時代、ラムやあかねやかごめよりもずっと魅力的に見えるんだよね。

思えば、高橋先生の転機は「犬夜叉」だったと思う。
それまでドタバタコメディばかりやってきたのに、唐突に伝奇ファンタジーだから驚いたよ。
でも今まさにサンデーで連載してる「MAO」も伝奇ファンタジーらしく、これはもともと先生がどうしてもやりたかったジャンルなんだろう。
そして「犬夜叉」と「MAO」の間に挟まれた連載が「RINNE」であり、これは「うる星やつら」「らんま1/2」のノウハウを伝奇に落とし込んでみた習作といったところか。
私は、高橋先生に一番合ってるのはギャグ、ラブコメだと思うので、あまり軸を本格的な伝奇へは振ってほしくないんだけどなぁ。
「RINNE」ぐらいが一番いいバランスだと思うよ。

しかし高橋先生は海外での人気も高くて、今年はフランスで「シュバリエ」勲章を貰ったらしい。
今さらの「うる星やつら」再アニメ化も、おそらく国内より海外市場を視野に入れてのことと思う。
日本での「うる星やつら」人気はというと、意外とアニメオタクは劇場版の「ビューティフルドリーマー」の方を支持してるんだよね。
しかし、これは押井守オリジナルの「うる星やつら」である。
高橋先生は、この「ビューティフルドリーマー」見てキレたことを押井守が自ら証言しており、実際彼はこれ以降「うる星やつら」から外されている。
「うる星やつら」は高橋留美子版を好きか、押井守版を好きか、好みは結構分かれるんだわ。
私は案外、押井守版が好きだったりするけど・・。

高橋留美子といえば少年サンデーのイメージが強く、その作品のほとんどがサンデー掲載じゃないだろうか。
私の勝手なイメージとして
・少年ジャンプ⇒バトル
・少年マガジン⇒スポ魂
・少年サンデー⇒ラブコメ
という解釈をしている。
サンデー=ラブコメというイメージを作ったのは、高橋先生とあだち充先生に他ならない。
ジャンプやマガジンの硬派路線に比べれば、ちょっと軟派なんだよね。
高橋先生の絵は、萌えという概念のルーツだとする説もある。
ある意味、高橋先生の作品は今でいうラノベ的作風ともいえるんだ。
ジャンプやマガジンとがっぷり四つの相撲をしても勝てないゆえ、サンデーは常に隙間を狙っていたのかもね。
そういう意味じゃ、少年漫画の隙間を狙って台頭してきたラノベと全く同じスタンスなんだよ。
最近サンデーの「葬送のフリーレン」が人気うなぎ上りなのを見て、私は「来た!」と思ってるんだ。
高橋留美子先生、再評価の頃合いである。
思えば、既に80年代で美少女キャラの語尾に「だっちゃ」を付けるセンスは先進的なんだよ。
方言女子萌えじゃん。
もちろん「犬夜叉」は巫女萌えだし、高橋先生は萌えを生み出すことにかけてはマジで天才である。
66歳の先生が今後どこまで萌えを表現できるかは分からんが、とりあえず「MAO」、読んでみようかなぁ。


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