売れる仕組み作りの基本設計|マーケティング
Marketingとは、売れるための仕組み作りです。
この仕組み(ビジネスモデル)構築に有用なアプローチが3つあります。
最初にこの3つのアプローチを図で整理しておきます。
本質的には、同じことを目的や課題に応じて、別の視点で捉え直している事にお気づきになるかと思います。
売れる仕組み
ちなみに、日本の企業の特徴の一つに、先に「物」があって、後で「売り方」を考えるというスタイルが多くあります。ある意味、日本企業の物作りの技術とマインドの高さや職人魂の力強さでもあり、それらが日本の最大の強みでもあります。
上記の3つのアプローチは、売りたい物が先にあるという、日本型のビジネススタイルにも非常に良くマッチします。
【余談1】マーケティングのベキ論で言うと、先に「市場・ユーザーの理解」があり、それに立脚したQCD(品質・価格・供給)を論じることで、最終的に、何をどう売るかという方法論(4P)に落ち着きます。Market-oriented(ベキ論)とProduct-oriented(日本型)のどちらがよい悪いの話ではなく、出発点は違えども最終的には売れる仕組みに到達すればよいだけの話です。
【余談2】コンサルティングのご依頼に「売れていないものをなんとか売って欲しい」というご相談があります。典型的な「先に物ありき」です。3つのアプローチで単に売り方を解いていくだけでなく、潜在需要の掘り起こしという大きなテーマへのチャレンジの意味も出てきます。
うまくいっている企業は、自然とこれらの売れる仕組みの手法に当てはまっている事がほとんどです。彼らからすると今更感しかありません。
こうした企業においても、3つのアプローチを活用することでビジネスモデルを「見える化」し、多様な人材らとの「共有」を通してノベーションが起こりやすい環境が整い、更なる成長の源泉になって行きます。
また属人化を防ぐこともできますので、スキルアップや参画意識を喚起しモチベーションアップにも繋がります。個の力はもちろんのこと、チーム力が底上げされます。さらに、指標化と定量化がやりやすくなりますので、プロジェクト運用も効率的になります。
一方、こうした仕組みの構造を知らないまま、結果オーライで続けていたり、ビジネスが停滞している場合は、一度、自社の販売活動を図解してみるとよいかと思います。MECEに見通し良くなりますので、合理的な集中と選択や追加施策の有無がクリアになり業績が改善して行きます。
基本構造
入口商品(FE)で集客し、本命商品(BE)で収益を上げるスキームです。
マーケティングの基本中の基本です。古くから知られており、現代においてもほぼ100%、このスキームに基づいた仕組みがあらゆるビジネスモデルで用いられています。
FE(Front End):できるだけ多くのユーザーを取り込むための「入口商品」
BE(Back End):利益を創出する「本命商品」
US(Upselling):本命商品の「上位商品」
CS(Cross-Selling):本命商品の「関連商品」
EN(Engagement):リピーター化のための「付加サービス」
これらは、商品やサービスの位置付けを戦略的に行い、単発案件(点)から継続案件(線)にしていく、言わば商品戦略の構築とも言えます。
先に商品やサービスがある場合は、基本構造の構成要素として、商品の位置づけを明確にしていきます。
具体的には、初回購入大特価や◯ヶ月無料体験など、安価で心理的ハードルを低くした商品やサービス(FE)でできるだけ多くのユーザーに体験していただき、その中から収益性の高い商品の購入やサブスクの会員(BE)に惹き込みます。その後は、ポイントなどの特典による付加サービスの優遇(EN)で、上位商品(US)や関連商品(CS)を購入していただき、客単価を上げていきます。
コンセプト設計から入るスタートアップのような場合は、潜在需要を仮説設定し、需要の顕在化に必要なアプローチをFE、企業との接触に貢献するモノやコトをBEの位置づけるとよいかと思います。
いずれにせよ、最終的には、ユーザーのエンゲージメントと企業の収益を共に満たすwin-winの関係を構築していきます。
ついでに言うと、このプロセスは、ライトユーザーをヘビーユーザーに育てるリードナーチャリングそのものです。
また、なぜこれが基本構造かというと、ユーザーが享受する価値を具現化したモノやコトが、商品やサービスですので、カスタマージャーニーマップやデマンドウォーターフォールで戦術として施策化していった際に、商品やサービスの位置づけや関連性を曖昧にしたままだと「軸」がブレてしまうからです。
カスタマージャーニーマップ(CJM)
CJMは「ユーザーの行動変容の見える化」を行い「販促の施策策定」に用いるものです。
ユーザーに商品やサービスを認知してもらい、最終的に購入やリピートに繋げていく流れをユーザーの心理的行動の段階ごとに整理していきます。
商材やサービスのターゲットの人物像を具体的に仮定し(ペルソナ設定)、どうやって認知率を上げ、どういう内容を提示すれば興味や関心を持ってもらうか、各段階をステップアップしてもらうためどんな仕掛けが必要か等、販売促進の施策を具体的に書き出し決めていきます。
言い換えると、先の基本構造で述べたBEを「購入」段階に置き、FEをどの段階でどのように使っていくかの検討です。先に商品戦略を整えておくと、それが軸になって、より効果的なCJMの作成が可能です。
CJMを作るメリットは、ターゲットと施策が具体的に見える化できますので、チームで戦術のコンセンサスを図ることができるため、「建設的」な施策検討と改善を行うことができる点です。
よくある悪い例としては、SNSや宣伝活動にあれもこれもと手をつけるだけ付けて効果を実感できないまま、更なる施策追加ばかり考えてしまうような場合です。
そういう意味では、販促活動をしっかりマネジメントすることが可能になります。
デマンド ウォーターフォール(DW)
もともとはB2Bで用いられるビジネス管理の手法ですが、その本質はB2Cでも発揮されます。
CJMはユーザー視点(ユーザー心理)で考えますが、DWは「企業視点」で収益性を定量的に検討するために用います。
<ビジネスステージの例>
「集客・問合せ」→「ユーザーの顕在化(リードジュエネレーション)」→「売り込み(リードナーチャリング)」→「顧客化(購入)」
ビジネスステージの各層のユーザー数と層間遷移率を具体的な数値で表現していきます。これらをビジネス進捗の指標として使用していきます。
例えば、最終的に〇万円の収益を得たい場合、そのために必要な購入顧客数を算定し、さらにその段階までユーザーを惹きつけるためには、◯万人のユーザーに認知してもらわないと目標を達成できない、という様に企業も目標収益から逆算して、各段階でどれくらいのユーザー獲得が必要かを具体的に見積もります。基本的にはその業界毎の特性を勘案した仮説設定で数値化しますので、PDCAで補正しながらビジネスのスケールのノウハウを獲得していきます。
DWの結果をCJMに反映させ、CJMの構想で想定した集客や遷移促進の施策では不十分な場合は、施策のテコ入れをしていくことになります。
大雑把な言い方をすると、CJMとDWは横と縦の違いと、上述した通り、ビジネスステージを前者がユーザー視点で捉え、後者は企業視点で捉える両面一体の関係とも言えます。
ついでに言うと、基本構造であるFE/BEの商品戦略もDWの骨子としてそのまま適用されます。
【補足1】各層のユーザー数が上から段階的に減っていく様子が、じょうろから水が落ちる様に似ていることから、ウォーターフォールという名が付けられています。
【補足2】DWは、デジタルマーケティング(マーケティングオートメーション)の基本スキームとして知られており、顧客の嗜好・行動・リレーションをデータベース化し、ビジネスを合理的かつ定量的に分析・スケールさせるのに有用です。顧客数が表計算ソフトで管理しきれなくなる1000名台を超えたあたりから導入を検討するのが妥当と言われています。
まとめ
売れる仕組み作りを構築するには、基本設計(骨組み作り)・カスタマージャーマップ・デマンドウォーターフォールがあります。
これらの手法を活用することでビジネスモデルを「見える化」し、多様な人材らとの「共有」を通して合理的に販促活動を推進させることができるため、効果的にビジネスをスケールさせることが可能になります。
また、指標化と定量化がやりやすくなりますので、プロジェクト運用が効率的になります。
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