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2018年6月の記事一覧
なぜ言語の音体系は美しいか
フランスの言語学者・A・マルティネ(1908-1999)は、言語の音には「経済性の原理」が働くとした。
全体のなかにうまく組み込まれていない、仲間はずれの音があると、それだけのために特別の動きが必要になるので、「経済的」ではない。すべての音を効率よく組み込んだ、より言いやすい体系を求めて、言語は刻々と変化する、と。(マルティネ『言語学事典』大修館書店)
同じようなことで、「縄張りの原理」という
/m, n, l, ng/ はネコのヒゲ
英語には、鼻腔をひびかせる音(鼻音)が四つある。
/m, n, l, ng/
かなり英語の上手な人でも、この四つを中途半端な発音ですませていることがある。
/m, n / に日本語の「ム」「ヌ」のイメージが残っていると、無意識に唇を丸めてしまい、「ウ」のような母音が入りこんで、英語らしくなくなる。
/l/ も、「ル」のイメージが残っている人がかなりいる。たとえば real のように語尾に
"I'm sorry." は「アイムソーリー」?
学生と英語の発音練習をしていたら、気になる現象を発見した。
"I'm sorry" を、「アイム・ソーリー」のように発音する学生がときどきいるのだ。
「ム」のところが英語らしくない。なぜだろうと観察してみると、そういう学生は、「ム」のところで少し唇を丸めている。
sorry の出だしも、日本語の「ソ」のイメージでいると自然に唇が丸くなる。するとますます、「ム」と「ソ」の間に母音が入り、英
日本語の発音体系 大胆な試論 おわり
日本語は、全体としてがっちりした体系をもちながらも、「ハ行」は調音点が歴史的に大移動している。「わ」や「ふ」のように、仲間を失って単独性の強い音もある。これらは、日本語が新しい体系を求めて変化してきたことを示している。
しかしおおまかに見れば、母音で身体を大きく使いつつ、「っ」と「ん」で、つねに喉の奥へと声を収斂させていく。おそらくこれは古代以来変わらない、日本語の原則なのだろう。
喉の奥へと
日本語の発音体系 大胆な試論 5
以上の子音と半母音を、まとめて一列に並べると、調音点が外側にあるものから順に、
わ ばぱま ふ ら だたな ざさ がか は ぃ っん
となる。これに「あいうえお」の五種類の母音変化を掛け合わせれば、「新五十音図」が作れるかもしれない。(興味のある人、やってみてください)
このように日本語は、短い「ぃ」を加えて音に多様性を加えつつ、全体に喉の奥の半母音(「っ」「ん」)へと収縮点とすることで
日本語の発音体系 大胆な試論 4
C 半母音 母音と子音、両方の性格をもつ。
①「ぃ」 舌の後部を一瞬盛り上げる。他の音と強く融合するので、拍数(音の長さ)を増やすことはない。「やゆよ」「きゃ、きゅ、きょ」など。
②「っ」「ん」 … 喉の奥を一気に収縮させる。非鼻音「っ」と鼻音「ん」がある。
「っ」は拍数を増やさないが、「ん」はそれじたいで一拍となる。「ん」の発音は、m,n,ng と変異があるが、日本語話者にとっては、喉を一
日本語の発音体系 大胆な試論 3
B 子音 舌や唇や口蓋が触れたり、口内の一箇所を強くすぼめる音。日本語の子音は、母音を融合させて発音する。
日本語の子音には、調音点によって八つの段階がある。
①わ(ゐうゑを) …調音点は唇の外側。ただし、「わ」以外は退化して消滅した。
② ばびぶべぼ/ぱぴぷぺぽ/まみむめも … 調音点は唇。「バ行」は上あごの外側を振動させ、「パ行」は上あごの内側を緊張させ、「マ行」は鼻腔を振動させて言い
日本語の発音体系 大胆な試論 2
日本語は子音または半母音ではじまり、母音で声のひびきを上半身の各所に拡散させ、喉の奥で「っ」「ん」に収斂させるという仕組みでできている。
まず、母音から見てみよう。
A 母音 舌や唇が触れない音
あいうえお 既述のように、身体のひびく部位によって言い分ける。
なお、「あいうえお」は厳密には純粋の母音ではなく、はじめに「ん」に近い声がわずかに入る。これは日本語が「っ」と「ん」という半母音
日本語の発音体系 大胆な試論 1
日本語で「あいうえお」というとき、身体のどこが共鳴しているだろう。
床に寝転がり、身体に手をあてながら、「あーーーーー」「いーーーーー」などと言ってみると、ひびいている部位が、音ごとに違うことがわかる。
「あ」は、胸のあたり。
「い」は、後頭部のあたり。
「う」は、唇の周辺。
「え」は、お腹のあたり。
「お」は、おでこから頭頂部あたり。
このように、日本語の母音がそれぞれに異なる「ひびき」の
教室英語は、水に入らない水泳
「授業名人」といわれる中学校の英語の先生の授業を、テレビで見たことがある。
なるほど、生徒思いで、授業に工夫をこらす素晴らしい先生だった。だが、私は憂鬱になった。
なにが憂鬱か?
それは、ほとんどの生徒が、けっきょく「英語ができる」ようにはならないだろうと、画像から感じたからだ。うまい授業、まずい授業はあっても、「できるようになるかどうか」という角度からみれば、現状では、どの授業も大差ないだ
「あいうえお」 にも子音があるのではないだろうか
「あいうえお」は、純粋な母音というイメージがある。
しかし、よく観察すると、「あいうえお」にもはじめにごく短い「ん」がある。
じっさい、「ん」の準備なしで「あいうえお」と言うのはむずかしい。(まさか! と思う人は、やってみてください)
「かあさん」の「あ」には「ん」がいらないが、これは「か」の子音 k があるので、「ん」を言う必要がないからだろう。
だとすれば、「かきくけこ」などと同様「あ
「かきくけこ」は、本当に "ka ki ku ke ko" だろうか
ワープロを使うとき、日本語をローマ字で書く。
そのせいか、日本語の音声について、われわれはついつい誤解してしまう。
たとえば、「かきくけこ」と言ってみると、たしかにはじめ子音的で、そのあと母音的になる。だからワープロで ka, ki, ku, ke, ko と書くのは正しいような気がする。
だが意識のうえでは、われわれは「かきくけこ」をひとつの音として言っているのではないだろうか。
つまり
英語はローマ字で書いてあるのではない(あたり前ですが)
日本語を書くときのローマ字と、英語で使うアルファベットは、まったく同じ文字を使っている。
このことが、われわれが英語を日本語風に読んでしまう原因、つまり英語を英語として発音できない大きな原因になっている。
もともと日本語のローマ字書きは、外国人がかなや漢字を読むために工夫されたものだが、日本人がアルファベットに慣れるにも良いということで、学校教育にとりいれられた。
そしてわれわれは、大人にな