日本語の発音体系 大胆な試論 おわり

日本語は、全体としてがっちりした体系をもちながらも、「ハ行」は調音点が歴史的に大移動している。「わ」や「ふ」のように、仲間を失って単独性の強い音もある。これらは、日本語が新しい体系を求めて変化してきたことを示している。

しかしおおまかに見れば、母音で身体を大きく使いつつ、「っ」と「ん」で、つねに喉の奥へと声を収斂させていく。おそらくこれは古代以来変わらない、日本語の原則なのだろう。

喉の奥へと収斂することは、たとえば民謡や演歌が「しぼりあげる」ように発声し、それが味のある声とされるところにも現れている。

この列島に住み、日本語の「共鳴動作」(黒川伊保子『日本語はなぜ美しいのか』)によって発音体感を共有してきた人々には、ある共通の身体感覚があると考えてもよいかもしれない。

英語の場合、声をひびかせる箇所は首の後ろあたりで、ほぼ一定している。いわば、一点から放射するビーム型である。

子どもに英語を教えることの意味は、まずなによりも、日本語とはちがう発音体感を体験し、違う発音体感によって他者とわかりあえるおもしろさを知ることにある。

子ども英語の要諦は、なにより発音の体験にある。



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