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山際響
2021年1月24日 13:28
雨上がり特有の土の匂いが、開いた窓から流れ込んできた。 秀樹が顔を上げると、プラスチック制の水のない水槽が、白いレースのカーテンに撫でられている様が見えた。カーテンと水槽が擦れる音を聞きながら秀樹は窓を見た。カーテンの合間から見える空は、まるで溶鉱炉のように赤かった。次に水槽の中で佇んでいる黄色と黒の肌を持つカエルを秀樹はしばらく眺めていたが、空からの飛行機の音で、集中が途切れた。秀樹は立ち上
2021年1月21日 21:26
自分の鼓膜を見るのは初めてだった。思いもよらない事だったが、彼は自分の一部に見惚れた。 自覚症状はないのだが、聴力が落ちていると、定期健診で言われた。彼は事務担当で、職業的には耳に負担はかからない仕事のはずだ。元々、静かなオフィスでひたすらキーボードを打っていたが。最近はすっかりテレワークが定着したので、彼もその波に乗り、オフィスよりもさらに静かな自宅でひたすらキーボードを打っている。いまや耳