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小説

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記事一覧

喧嘩(小説)

喧嘩というのはどのくらいで発生するのだろうか。和香は思い返してみたが、最後に姉妹で喧嘩し…

やぐま
7か月前
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税(小説)

春は花見で、終業後に代々木公園まで足を伸ばして酒を飲む。形式上は任意参加だが、いつも支社…

やぐま
7か月前
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退職届(小説)

「どんな嫌がらせをされるかわからない」と語調を強めて、加奈子は目の前のホットコーヒーに口…

やぐま
7か月前
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撮(小説)

高校に通っていたころ、私は誰にも写真を撮ることを許していなかった。それは信念というよりも…

やぐま
7か月前
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習作 #1

私は海を眺めながら、生活について考えていた。海に行けば現実から逃れられると思ったが、むし…

やぐま
10か月前
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習作 #2

画家というのは職業ではない。銀行が金を貸したがらない仕事を私は職業だとは思わない。では何…

やぐま
10か月前

習作 #3

湯船に浸かって天井を見る。夏のあたたまった身体の中にも冷えはあって、はいの底から空気の塊が押し出されてくる。足の指を拡げると、足裏の毛穴から皮脂が出た。事務という仕事は微細で煩雑な頼まれ事をこなしているうちに一日が終わる。給料が働きに見合っているかはわからない。ただ、大学の同期を見ていると、自分が選択せずに就職してしまったとおもうことがある。自分で望んで勤めているはずなのに、会社にも同僚にも期待をしていなかった。 中途入社のスズキさんは肌が浅黒く、何かにつけて私に話しかけて

習作 #4

平和は貧乏くさい。物語で描かれる戦争は決まって夏で、タンクトップに坊主頭の少年が木造家屋…

やぐま
10か月前
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習作 #5

戦争体験が忘れられていく程度で価値が見失われていくのであれば、平和など大した価値もないだ…

やぐま
10か月前
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習作 #6

後者の前を通る道路は交通量が多く、敷地に沿って曲がる緩やかなカーブからは常に騒音が届く。…

やぐま
10か月前
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習作 #7

美術室は校舎の中庭に面していて、一日の半分以上は日陰に甘んじる位置にある。窓のある壁には…

やぐま
10か月前
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習作 #8

文学や、それに隣接する例えば批評や哲学の界隈というのは、言葉を厳格に、弾力的に、しなやか…

やぐま
10か月前
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習作 #9

太っているというのはあくまで比較によって決まる相対的な状態であって、絶対的に自分自身が太…

やぐま
10か月前
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習作 #10

近頃、見ず知らずの人間に注意されることが増えた。相手は決まって50〜60代の男性で、どちらかというと常識を携えているような容貌をしている。その日の朝は、近所の低層マンションの生垣に腰掛けて靴紐を結んでいるところ、管理人と思しき男にいきなり怒鳴られた。 たかだか生垣に座ったくらいで騒ぎ立てるというのは神経質にもほどがある。むしろ容易に屈服できそうな人間がたまたま居たので、口実を見つけてふっかけただけなのかもしれない。もしも自分が強そうな人間だったらと思うが、仮定は確かめようが