Yukako Kuratsune

島で東大を目指すニートのアラサー受験生。地元で高校教師→島に移住して塾講師→受験生。と…

Yukako Kuratsune

島で東大を目指すニートのアラサー受験生。地元で高校教師→島に移住して塾講師→受験生。とにかく前向きでごきげんなニート。ごはんを作ること、本を読むこと、文章を書くこと、絵を描くこと、物思いにふけること、新しい何かを生み出すことが好き。

マガジン

  • 寝ても食べても

    たべものにまつわるエッセイ集。寝ても覚めてもキッチンにいるわたしが、昔のことを思い出したり好きな食べ物を語ったりします。

最近の記事

高速バスに乗って異常なまでの責任感が芽ばえる女の話。

「安心とは、車の後部座席で眠ること」 と言ったのは、チャーリー・ブラウンらしい。 中学生くらいのころ、変に達観した少女漫画のキャラクターがこう言っているのを見た気がしていたのだけれど、そもそもなんの漫画だったのかさっぱり思い出せないし、もしかするとそれは私の夢だったのかもしれない。 ともあれ、高速バスの7列目で揺られながら、本当にそうだなぁ、と、チャーリー・ブラウンの言葉を受け入れる。 高速バスの3列目以降に座ると、子どもの頃の日曜日のことを、わたしは思い出すのだ。 父

    • 1日目のシュトーレン〈寝ても食べても第三夜〉

      今年こそはシュトーレンを食べようと思って、2年が経った。 どのシュトーレンにするか迷っているうちに12月がやってきて、シュトーレンを食べ始める時期をいつも逃してしまうのだ。 シュトーレンはドイツの焼き菓子で、クリスマスの4週間前の日曜日から少しずつ食べ進め、味の変化を家族で楽しみながらクリスマスを迎えるものらしい。 お酒で漬けたフルーツや、バターをたくさん吸い込んだ生地、雪のように振りかけられた粉砂糖が、クリスマスに向けてだんだんと馴染んでくるのだとか。 「今年こそは」を

      • はじめましてマッシュポテト〈寝ても食べても 第二夜〉

        粉ふきいもをマッシュしたやつにほんのりバター風味。 それがわたしにとってのマッシュポテトだった。 マヨネーズの入っていないパサパサしたポテトサラダというか。 まずくはないし、普通においしい。 けれど、誕生日にねだってまで食べたいものではない。 それなのに、先日27歳になった男、わたしの同居人は、誕生日の昼に「夜ごはんは何が食べたい?」と聞かれて真っ先に「マッシュポテト」と答えたのである。 内心、出たよ、マッシュポテト、と思った。 彼は何かにつけてマッシュポテトを食べたがる。

        • えんどう豆の音〈寝ても食べても 第一夜〉

          土曜日の昼下がり、家の外から「おーい!あれ、聞こえんだらぁか。おーい!」という声が聞こえた。 お隣さんにご用かしら、と思っていたら、しばらくして我が家のインターホンがなった。 我が家のインターホンはFamilyMartの音楽と同じ音だ。 引っ越してすぐのころ、「うちの音、FamilyMartだよね」と同居人に言ったら「そんなわけないじゃん、違うよ」と言われた。あら、勘違いだったかしら、と思ったが、こういうことは確かめないと気がすまない同居人が「鳴らしてみよう」と、わざわざ外に

        高速バスに乗って異常なまでの責任感が芽ばえる女の話。

        マガジン

        • 寝ても食べても
          3本

        記事

          「崖」と「桜」とたまってゆく「下書き」の話~同居人を添えて~

          わたしと同居人が住む家の裏には、コンクリートでできたものすごく高い壁がある。 わたしはそれを人に説明するとき、いつも「崖」と呼んでいる。 よく考えるとまったく「崖」ではなくて、どちらかというと「壁」なのだけど、「壁」と聞いて想像する高さの4倍はあって、どうも言葉では説明がつかないので「崖」と言うことにしている。 と言っても、わたしは家からほとんど出掛けず、基本的には家にお招きした方としかお話しないので、「こちらがその崖です」と窓を開ければ説明はつくのだけれど。 最初はこの崖

          「崖」と「桜」とたまってゆく「下書き」の話~同居人を添えて~

          明日のわたしのために皿洗いを残しておいてあげる話

          朝起きたときに、台所がきれいに片付いていると、清々しい朝の始まりという感じがして、朝イチの白湯も、最近はじめた家庭菜園の水やりも、ネギの水換えも、朝のストレッチも、すべてモデルさんのルーティンを撮影しているような気分になる。 一方、朝起きて前日の洗い物が残っていた日にゃ、同じ行動をしていても、わたしはどうぜくたびれたおばさんですよ、こんな汚いジャージ着てさ、太ってきちゃってさ、あー、やだやだ、という気分になる。 わたしがそういう単純な人間だということを知っているので、前日

          明日のわたしのために皿洗いを残しておいてあげる話

          「ジブリの中なら誰が好き?」の話

          どうにもこうにも暇なとき、「〇〇の中なら誰が好き?」という会話をひとたびはじめてみると、ものすごく気まずい関係性の相手を除けば、暇つぶし程度には盛り上がる。 中学2年とか高校2年とか大学2年とか。 全国的に暇な人間が増える「2の学年」の頃。 わたしも例に漏れず暇で、「〇〇の中なら誰が好き?」という、何も生み出さず何も動かない会話を友人とよくしていた。 実はこの手の話はとても好きで、実際の好きな人の話をするよりもうんと好きだった。 本当の恋の話をする方が、問題解決ができて生

          「ジブリの中なら誰が好き?」の話

          生理前のアラサーがわかめと自分を比較したり湯婆婆になったりする話

          夕飯をつくろうと思ったら、キッチンの作業台の上、シンクギリギリ崖っぷちのところで、ふえるワカメが増えていた。 昼に買ったわかめを瓶に補充したときに、ひとかけ落としたのだろう。 作業台に落ちていた、たった一滴のしずくを吸って、ふえるワカメは増えていた。 いつものわたしなら、「え、一滴でこんなに増えるの!?!?すごーい!!」と言って、早速同居人に報告しているだろう。 けれど、今のわたしは生理前なので、「わかめもこんなに成長するのに…一体わたしは何をしているのだろう…」と、わかめ

          生理前のアラサーがわかめと自分を比較したり湯婆婆になったりする話

          お酒を飲むと過去の恥に憧れる話

          はじめて飲んだ瞬間から、お酒がすきだ。 わたしが酒好きになることなんて幼いころから想像に難くないことだった。 そもそも両親ともに酒好きだ。 お金が無くてもお酒だけは我慢できないくらいに酒好きだ。 母親は焼酎。 父親はウイスキー。 もしかしたら体型を意識していたり、値段の安さで妥協していたり、酔いの速さで選んでいたりすることもあったのかもしれないが、2人ともそのあたりを好んで飲んでいたように記憶している。 しかもわたしは子どものころから中年のサラリーマンが好む酒のつまみのよ

          お酒を飲むと過去の恥に憧れる話

          本日の「どうでも良いのに時間をかけて考えてしまったことランキング」第1位の話

          昨日の夜、noteを書かなかった。 久しぶりに同居人と一緒に白ワインを1本飲んだからだ。 ほろ酔いと満腹で心が穏やかになったわたしは、リビングでぐっすりと眠った。 目覚めたのは3時間後。 幸い夕飯を早い時間に食べていたので、まだnoteを書けなくはない時間だったけれど、せっかくだしひと休みするか、と思って、昨日はサボった。 そのせいもあってか、今日の午前中は我が家全体が気怠い空気で充満していた。 8:30くらいには起きていたのに、「サボりついでにもうちょいサボるかぁ」とベッ

          本日の「どうでも良いのに時間をかけて考えてしまったことランキング」第1位の話

          休まないほうが良い不調と「あと少し症候群」の話

          昨日ごろからどうも調子が悪かった。 最後に1cmだけ残ったシャーペンの芯がフスッと頼りなく縮こまるときの。 あとひと巻きもないトイレットペーパーがペリッと予期せず離れるときの。 洗濯バサミがもうないのに、ハンガーから洋服がスルスル滑り落ちるときの。 あの出鼻をくじかれるというんだか拍子抜けするというんだか肩透かしを食うというんだか。 不完全燃焼でもやもやくしゃくしゃとした気持ちが渦巻く。 いつもだと何とも思わないことに、ちょびっとだけイラッとする。 いっそのこと怒り狂うくらい

          休まないほうが良い不調と「あと少し症候群」の話

          思っていることをそのまま表現するのって難しいって話

          「入学式」というハッシュタグがトレンド入りしている。 確かにそんな時期かぁ、と気づく。 先生をしていたころは、こういう行事ごとや長期休みなどで気持ちよく区切られた1年を過ごしていたなぁ、と思う。 生徒にとっても切り替えのタイミングだが、先生にとっても切り替えのタイミングである。 長期休みにあえて仕事をたくさんして、学期明けの余裕を作るもよし、終業式の日にくたくたな身体をひと休みさせるもよし。 区切りがなくなってはじめて、区切りの大切さを知った。 子どものころは、区切りのスタ

          思っていることをそのまま表現するのって難しいって話

          慢性運動不足な私が14日間筋トレをつづけたら人生が覆った話

          昼に目が覚めた。 びっくりした。 昨夜はいつもよりも早く寝たのに。 たぶんそれが問題だった。 寝床に入ったときに「よーし、今日はいつもよりたっぷり寝るぞー!」と心の中で唱えてから寝た。 私は寝る前に心の中で唱えたことが睡眠にかなり影響する。 「やばい!明日は早く起きなきゃ!」と思って寝ると、アラームよりも早く目覚めるし、ほんの小さな物音や光にも敏感に反応して目覚められる。 「ゆっくり寝るぞー!」と思った日には、10時間経っても同居人が横で目覚めても気を失ったかのように寝つづけ

          慢性運動不足な私が14日間筋トレをつづけたら人生が覆った話

          noteを書く時間がお気に入りの時間になっていたことに気づいた話

          今日は絶対にnoteなんて書いてやらないんだから。 ちょうど1時間前にそう決心した。 夜ごはんを食べたあと、同居人とリビングで30分くらいうたた寝をしてしまった。 ごはん中に観た『海街チャチャチャ』の絶対に泣くべきではないところで大号泣してしまい、少し疲れていたのだと思う。 私は子どもの頃から、泣くと疲れてすぐに寝てしまう癖がある。 むしろ寝るために大号泣をしていたので、私が急に怒って泣きはじめると、「あ、まただまただ。眠いんだ」と家族に笑われていた。 今日も泣いてしまったか

          noteを書く時間がお気に入りの時間になっていたことに気づいた話

          徹夜でnoteを書いたら、島暮らしっぽいことができた話

          朝日を浴びながら昨日のnoteを書いた。 月1の早朝読書会に参加している同居人の声が聞こえる。 「なんか、すみません、まさに2分前に起きたところなんで言っていることがめちゃくちゃかもしれません、なんか、はい、すみませんね」 開始時間を30分間違えていて大遅刻したらしい。 読書会が終わったら、数時間前にセッティングしておいたホームベーカリーの焼き立てパンを同居人と一緒に食べてわたしは寝るんだ。 そんなわたしの決心とは裏腹に、心地よい陽が部屋を照らす。 天気良いのか…羽毛布団を

          徹夜でnoteを書いたら、島暮らしっぽいことができた話

          noteを書いていたら中学時代の秘密の日記帳の存在をふと思い出した話

          4月になったのに冬のように寒い。 今日も石油ストーブを焚いている。 灯油が使い切れないと困るから、普段は18リットル買うところを10リットルでお願いしたのが3週間前。 予想より寒さがつづき、先日またガソリンスタンドに行くはめになった。 「18リットル?それとも10リットルにしとく?」 ちいさな島のガソリンスタンドなので、店員さんは以前わたしが10リットルにしたことを覚えている。 「あ~…どうしようかなぁ…18…いや、10リットルで」 とまた懲りずに10リットルだけ購入した。

          noteを書いていたら中学時代の秘密の日記帳の存在をふと思い出した話