「お前らはゴミだ、ゴミだ」と言われ続けて
昨日からオリンピックが始まりました。
香港はこの5月に初めて香港政府がオリンピック放送権を購入するという特別措置が取られた通り、昨日から香港のメイン5チャンネルでオリンピック中継が放送されています。
76(香港国際財経チャンネル)、77(香港開チャンネル)、81(無線翡翠チャンネル)、82(無線J2チャンネル)、96(ViwTVsixチャンネル)、99(Viw TVチャンネル)
そしてチャンネル毎に、香港選手の出場有無に関わらず、色んな種目が放送されています。バレーボールだったり↓
バドミントンだったり(こちら香港選手が圧勝しておりました)↓
種目の切れ目には種目一覧が表示されたり↓
自転車レースや↓
シューティングや↓
フェンシング(こちらも香港勢)↓
そして卓球↓(放送されているのは水谷・伊藤ペアではなく香港勢ですが😅こちらも圧勝しておりました。)
こちら、上記5チャンネルにプラス、24時間ニュースしか放送しないニュースチャンネルでもがっつりオリンピックの様子を放送しました。
普段見るような、どのチャンネルでも色んなオリンピック種目放送が見れる。ここまでになるとオリンピックに特に興味がなくたって、ついつい見てしまう勢いです。そう、これはまるで
日本状態
過去記事(上記)でも書きましたが、中国に居た時は飛び込みと卓球ばかりが延々とハイライト放映され、この香港では、各テレビ局が各自で購入する為、見る事はできましたが夜中であったり、人気の高い種目を中心にという感じだったと思います。もしかしたら日本勢の活躍メインではない為に、「物足りない感」「あんまり見れてない感」を強く感じるという事もあるかもしれませんが・・・。
ところで、
「オリンピック中國香港代表」
皆さんはこう聞いたら強いイメージはありますか?
以下は、全てウィキに更に詳しく書いてありますが、香港勢は
これまでメダルを獲得した夏季オリンピックは、1996年アトランタオリンピックセーリングの金メダル1個と2004年アテネオリンピック卓球の銀メダル1個、2012年ロンドンオリンピック自転車の銅メダル1個の計3個である。冬季オリンピックでのメダル獲得はまだない。
*ちなみに香港は、長い間イギリスの植民地だった為、1952年から「香港チーム」としてオリンピックに参加し始め、1997年に中国に返還されて以降、1999年のオリンピックから「中國香港チーム」としてオリンピックに参加しています。
「中国の中の香港」ならではの卑屈
これまで香港内でよく言われてきたのは、中国本土のオリンピック選手は中国14億人の頂点に立った人たち。香港はわずか800万人にも満たない中の頂点。
「そりゃあ、どんだけ頑張ったって同じ土俵にすら立てるわけがない。香港のオリンピック代表が、じゃあ中国でオリンピック代表に選ばれるかと言えば選ばれるわけがない。予選だって無理だ。香港のオリンピック代表は香港だからオリンピック代表になれるんだ。だから香港の選手はゴミだ。」と。
香港チームとして、過去の業績は、金銀銅各1個の3個。
香港はイギリスの植民地だった頃から、それでも「イギリス」でもなく、中国に返還されてからも「中國」ではなく、「中國香港」という事で、自分を名乗る事を許されてきました。
それなのに?だからこそ?中国の中の香港という特殊な立ち位置から香港のオリンピック代表選手たちは、長いこと「ゴミだゴミだ」と揶揄され続けてきました。
だから、5月に放送権購入をキャリーラム行政長官がテレビで発表した時に、色々な選手たちの意気込みを聞くインタビューも放送されていましたが、その時に選手が「香港の選手はゴミじゃないんです!」と悔しそうに、吐き捨てるように、その一言を言い放ったのを見て、とても切なくなりました。
その自虐ネタみたいな話は、彼らにとっては本当にそう感じられる事実なのかもしれません。
しかし日本は
長年香港の中でまかり通ってきたその理論が正しければ、日本だって、わずか1億余りの中の代表選手です。人口的には香港に毛が生えたほどです。確かに中国のように13億人も人がいない中での代表ですが、それでも日本選手団の成績は、目覚ましく輝かしいものがあります。
これまで獲得したメダルは2018年平昌オリンピック終了時点までに累計では夏季オリンピックで439個、冬季オリンピックで58個のメダル。
こちらの表はこのURLの中からお借りしました↓
でもこの過去オリンピックにおける国別メダル獲得数を見ると、ハッキリ言って、まるで幾つもの国を連合させて存在しているかのような広大なアメリカや中国と違い、日本は小国ながらこんなに上位につけていると思うと、香港の選手云々いう前に、どうしても一旦、日本人アスリート達の凄まじさに息を呑まずにいられません。
人口の分母数からいえば、例えばこの国だって常に上位にいなくてはおかしいわけです↓
あと、アフリカとか?
そこには、たくさんの個人の努力ではどうにもならないそもそも論(戦乱の問題、経済的問題、行政の問題etc)が存在しています。
そこが「オリンピックは平和の祭典」と言われる所以なのでしょう。
オリンピックに参加できるという事は、少なくとも、その国がそういう文化活動が出来る状況にある事の証でもあります。
とにかくオリンピックに参加できるような治安の安定したところにいるという身の幸せを理解し、更にその中で代表選手に選ばれるという栄誉。それが、たまたま適合者が自分しかいなかった不戦勝的勝利であっても「勝利は勝利」「代表は代表」です。
だから、仮に香港の選手が中国本土の選手と比べて歴然とした差が確かにあるとしても、それは努力をしていないという意味では全くありません。何を卑下する事がありましょうか。それは「ゴミ」ではなく「ラッキー」なのです。ましてアスリート本人でもないのに、そんな侮辱を口にする人達に至っては全く言語道断です。
結局世界という舞台で最後にメダルをその手にできるかどうかというのは、個々の持って生まれた才能、センス、生まれ育った環境はもちろん、時の運(体調や開催のタイミングなどもココに含む)、縁(どんなコーチ、どんなライバルに恵まれるか)、そして最後の瞬間まで途切れる事ないスタミナ、集中力、執念、プレッシャーを味方にできる強靭なメンタルetc・・・色んな要素に左右されるものです。
種目によっては、超僅差で甲乙がつけ難いものだってあります。
メダルが取れるか否かに至っては、取れないのが普通であって、取れた人は実力、努力、運にも恵まれていた超スゴイ人。
ただし、勝負の世界ですから成績が出せるか出せないかは間違いなく評価の分かれ目になることでしょう。
惜敗でなく大敗なら、そこには確かに何か見直すべき点があるという客観的事実があるだけです。
現に今日も、金メダルを何度も獲った事がある素晴らしい選手だって、時の運で予選落ちしてしまう事だってあるというのを目の当たりにして、改めて勝負の厳しさにショックを受けた人も多かったと思います。
オリンピックに出れるという事は、既にえげつない闘いを自分に強いてきたからこそです。競争の激しさ具合は別として、競争に勝ち抜いてきたからこそです。
日本は、オリンピック期間になるとメディアはほぼオリンピックで持ち切りとなり昼となく夜となく思う存分見れます。
香港でオリンピックと言えば、まずチャンネルが少なかったせいもあるかもしれませんが、夜中放送であったり、人気種目に限られたり(まあ、日中仕事があるからどっちにしても観るのは夜中だったり、人気種目じゃなければ見ようとも思わなくて、大して不便はなかったかもしれませんが)という感じです。
今年、香港政府が初めて購入した事で、これまでタイムリーに見れなかった種目もタイムリーに見れたり、こうしてたくさんのチャンネルがオリンピック中継を放送する事で、今まで以上に多くの市民がオリンピックを見ることでしょう。
この東京オリンピックで、自分達の代表選手たちの素晴らしい戦いっぷりを、より多くの人が、がっつりと目の当たりにした時、たとえ、その結果が敗北だったとしても、もう誰も「香港の選手はゴミだ」なんて言えなくなるのではないでしょうか。そうであって欲しいなと思います。