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詩のようなもの

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2022年9月の記事一覧

海の幸を見た

海の幸を見た

自信過剰な心意気が
見え隠れするそれは
荒々しい筆遣いで
描かれていた。

とてもシンプル。

海、と 波、と 岩、と 空。

それなのにどこか命が
逞しく生きていて。

命を命たらしめるものは
言葉でも脳でもなく
この4つの歯車なのだと。

気づいたならば
また私はひとつ
自分という命に
近づけた気がした。

線

お水の流れが滞っていると感じたとき
私は線を探す。

蟻になって掌の溝を歩いてみる。

蜂になって花びらの脈を感じてみる。

鳥の気持ちになってこの道路を飛び回ってみる。

ただの景色に線ができて
その線が新たな世界へ導いてくれる。

地図も羅針盤もいらない。

ただその流れにゆらりと身を任せて。

行きついたところがあなたの還る場所。

ヘンテコなわたしたち

ヘンテコなわたしたち

世界はこんなにも広いっていうのに。

私はそのたった0.0001%しか知らない。

70%を海が覆っているのに、私はまだ30%の陸で暮らしている。

それも能天気に、ゆったりと。

ヘンテコな生き物、私。

傾聴と包容力で出来ていて、計画と論理が苦手。

宇宙はこんなにも広いっていうのに。

私たちはそのたった0.0001%しか知らない。

数百億もの惑星が存在しているのに、私たちはまだ地球で暮ら

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隅田川にて

隅田川にて

PM6時、徐々に色が変わっていく空と一緒に
隅田川沿いを歩いた。

荒い息遣いをしながらランニングしている人
涼しげに寝そべって読書をしている人
可愛らしく恋人と手を繋いで散歩している人

同じ道を通りすがるのに
私たちの奥には
異なる宇宙が広がっている不思議。

駒形橋の下に潜るその10秒間
視界が暗闇に包まれるその時間
私は故郷を思い出す。

故郷の橋の下に潜るその10秒間
視界が暗闇に包まれ

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深夜のミュージック

深夜のミュージック

耳障りの良い繊細な声でカタルシスへ連れ出してくれる。

過去の名声を十字架で壊して
陰に隠れていた憂鬱が光に照らされた。

昼夜の境目が曖昧に溶けていく。

退廃的なうつしさに目がくらみ
またutopiaに足を踏み入れた。

花は一輪も咲かない
ただ空虚が広がっている。

その空虚の中で私は空気のように漂い
朽ちていくのをじっと待っている。

両手いっぱいに抱えた記憶の欠片を
ひとつずつ繋ぎ合わせ

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左様なら

左様なら

さようなら。

本当の意味は
“そうならねばならぬなら”。

私たちは別れ際に
諦めに近い言葉を唱える。

それはある意味
「死」を見つめているからかもしれない。

もう二度と会えなくなるかもしれない
そこに内包された
儚さ と 切なさ と 絶望 を
この言葉は表現している。

左様なら
私はあなたが見えなくなるその一瞬まで
手を振るよ。

星屑になったわけ

星屑になったわけ

空気の澄んだ夜空に満遍なく
飾り付けられた星屑を見ながら
君と何気ないことを語り合う時間が
好きだった。

星が降る夜に
熱心に願いを込める君の横で
僕も願ったんだ。

どうか僕のことを忘れないで。

星に願いを込めるような
ほんの少しの時間だけでも
君に思い出して欲しい。

それが僕が星屑になった理由だよ。

気怠い夏の夜

気怠い夏の夜

向日葵が太陽ではなく、地面の土を見つめるようになったころ

金魚の目は寂しい色をしていた

夜空に花火が咲く音が途絶えた

何かあるのではという淡い期待が私の心から消え去った

それでも生活は続く

私たちは毎秒酸素を吸う

営みを止めることができない

辞退したいです、と言っても神様どうか怒らないで

きれいなものがこわいのです

矛盾も理不尽もあなたからもらいました

置き場もなく私はずっと抱

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Shall we......?

Shall we......?

心が揺れる。
ふと揺れる瞬間がある。

地球上のここではないどこかで
今日も生きるあの子の鼓動に耳を澄ます。

窓から差し込む夕日が真っ白な壁をオレンジに染める。

ほんの一吹き0.15mlでリヴィエラの海岸へ連れ出してくれる。

そんなたった0.5秒の魔法で
私の鼓動は強く波打つ。

役に立つためだけに生きてるなんて
寂しいことは置いておいてさ。

ちょっとコーヒーでもいかが?

富士山

富士山

一緒にテラスへ夏の富士山を見に行った日。

目を閉じてしまうほどの眩しい日差しだった。

それに劣らず眩暈がするほど
多くの人が彼目当てに訪れていた。

いつも太陽に照らされて
彼は隠れたくならないのかなって。

彼はたくさんの人を癒しているけれど
彼を癒してくれる人はいるのかなって。

私を見つめる彼の眼は愁いの含んだものだった。
すべてをも赦すようなそれだった。

誰も知らないそれを私はそっと

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生きてさえいれば

生きてさえいれば

人生の叫び出したいほどの虚しさと
両肩が崩れるほどの理不尽さを
知ってしまって。

夜はまだ私を離してはくれない。

霧で目隠しをされたまま
先の見えない道を歩く。

そこに何があるのか
神さえも知らさせてはくれないけれど
何かが自分を待ってるんじゃないかと
勘違いまがいの期待を両手に
ただひたすらに命を生きて。

その先でまたあなたに会いたい。

変わる、変わらない

変わる、変わらない

新しい色に髪を染めるたびに

新しい自分になれるんじゃないなって。

新しい服を着るたびに

新しい自分になれるんじゃないなって。

新しい土地に引っ越すたびに

新しい自分になれるんじゃないなって。

そんな幻想が私の背中を押している。

いつまで経っても変わらない私。

けれども、振り返れば違う私がいる。

明日からまた新しい生活がはじまる。

今の私とは変わった私が

未来で待っているような

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あなたと、わたし

あなたと、わたし

遠く遠く、あなたを想う。

今私のいるこの空は雪を散らしている。

あなたのいるその空は何模様かな。

どうかどうか、私は願う。

あなたの心が温かな陽だまりに包まれていますように。

空がいろんな表情をするように
あなたの毎日も鮮やかな感情で満たされますように。

いつもいつまでも、私たちはひとつ空の下に。

どこにもない場所

どこにもない場所

どこにもない場所の話をしよう。

あなたが私で、私があなたで。

豆電球みたいな太陽がひとつ。

雨はイチゴ味、光は花びらのよう。

草木は自由に歌を歌う。

ビルの隙間を魚たちが泳ぐ。

ハンモックに揺られながら宇宙と会話する。

どこにもない場所、それはここにある場所。

誰も立ち入れられない、デストピアのようなユートピア。

あなたにも見せてあげる。

そこから始まる話をまたしよう。