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vol 3. 増え続ける暴力と奇妙な理由

vol 2に引き続き,今回も警官による黒人への過剰暴力/殺害をテーマに取り上げます。vol 3では,個々の事件ではなく,その全体図に迫ってみます。
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警官による射殺の実態

アメリカにおいて黒人が警察により殺害される事件の全体図を見てみましょう。まず知ってもらいたいのは,法執行機関がアメリカ全土における警官による殺害,又は暴力の統計データを収集し損ねていることです。各州や各群によって,殺害を報告する基準が異なり,殺害方法によっては報告を義務付けられていない地域も存在します。ですので,ここで紹介するデータはMapping Police Violenceという民間団体が公表し,最も包括的だと言われているものです。

このデータによると,2019年に警官は1,099人を殺害しました。その内,黒人は24%を占めていますが,全米人口の13%だけという数字を考慮すると,その数は不均衡だと言えます。また,統計を取り始めた2013年から2019年にかけて,各人種100万人あたり,白人に比べ黒人が警官に射殺される割合は約3倍高いです。また,99%の警官は起訴されることがありませんでした。数値だけだと誘導的に見えますが,実際に「身の危険が迫ったため」や「武器らしき物体を向けてきた」などと言った理由で逮捕されないケースが非常に多いです。

奇妙な理由

罪の無い黒人たちが殺害されるに至った理由を紐解いていくと,どの事件も正当な理由があっての発砲と言えるものではないことが分かります。

近年のBlack Lives Matterのきっかけとなったと言われている2012年のTrayvon Martin氏の射殺事件では,自警団のGeorge Zimmermanがフードを被っていたMartin氏を不審に思い,彼を追いかけ口論の後に射殺します。2014年に路上でタバコを販売していたEric Garner氏がNY州で,警官に脱税を疑われ,窒息するまで警官に地面に押さえつけられ死亡。ミズーリ州ファーガソンでは車道の真ん中を歩いていた,18歳の黒人少年Michael Brown氏が,白人警官と口論になった後,撃たれる直前に両手を上げて降伏をしたのにも関わらず,射殺。オハイオ州では当時12歳の黒人少年,Tamir Rice君が玩具の銃を持っていたため,射殺。2016年,ミネソタ州では当時32歳の黒人男性,Philando Castile氏が自動車の後部ライトの故障で呼び止められ,免許証を取ろうとポケットに手を伸ばした際に,警官に撃たれ後日死亡。

ここで紹介した例は,氷山の一角です。たとえ射殺されなかったとしても,数多くの不当な理由で暴力を振るわれた,又は投獄された事件は後を断ちません。こちらの動画では実際に殺害された黒人被害者の23の殺害理由がまとめられています。

但し,全ての警官による暴力又は射殺が非合法的だと述べている訳ではありません。もちろん適切な判断の上での最終手段という場合もあれば,白人が警官に射殺されるケースもあります。また,黒人が黒人を射殺する事件もあります。しかし近年の兆候として,白人警官に射殺される黒人被害者の増加と,無防備でありながら殺害された事件の2つの増加は覚えておいて損はないでしょう。

最後に,次回はアフリカ系アメリカ人が警官による暴力の対象になる可能性が高い現実を歴史的に考察します。

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