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vol 6. 黒人の死と動き出す黒人社会

Black Lives Matterは警官の黒人に対する過剰暴力に抗議すべく,SNS上で誕生しました。そのきっかけとなった黒人射殺事件を今回は取り上げます。

Trayvon Martin氏の死

2012年2月26日。フロリダ州Sanfordで当時17歳だった黒人青年Trayvon Martin氏が,ヒスパニック系で当時28歳だった白人の元自警団員George Zimmermanにより射殺されます。26日の夜,フードを被っていたMartin氏は近くのセブンイレブンでSkittlesという駄菓子とArizonaというお茶を購入します。店を出た後,店員であったZimmerman氏はこのごく日常的な動作を怪しいと感じ取り,Martin氏を追跡し始めます。Zimmerman氏は追跡している最中に911(日本の110番)に通報をしており,警察からは追跡を止めるように指示されたのにも関わらず,彼は引き続き黒人青年を追いかけました。そして,非武装であったMartin氏は射殺され死体となって発見されます。しかし,2013年6月Zimmerman氏はフロリダ州のStand Your Ground法により不起訴,無罪放免となりました。この法律では,相手が自らの身に危害を及ぼす可能性がある場合,武器の使用を許可されており,Zimmerman氏の行動は合法とされました。この裁判所の評決に抗議するデモが全米で行われます。また,この事件を時系列に説明した記事をCNNが公表しています。

不起訴と新たに誕生する3つの黒人団体

そして,このMartin氏の死とZimmerman氏の不起訴が転換点となり,#Black Lives MatterというハッシュタグがSNS上に誕生しました。また,この不起訴をきっかけに,3つの黒人団体が設立されます。1つ目は,Black Youth Project 100(通称:BYP100)という 18-35歳の若い黒人によって構成される団体です。黒人の平等と自由を掲げ,活動を行っています。

2つ目の団体は,Daniel Maree氏により設立されたThe Million Hoodies Movementです。このHoodiesは,日本語で言うフードであり,まさにMartin氏が射殺された時に身に付けていた上着でした。こちらの団体は将来の若者を,銃による暴力と大量投獄から守ることを目指しています。

そして,3つ目の団体はDream Defendersです。Zimmerman氏が無罪と判決された時,Stand Your Ground法の撤廃を訴えながら,この団体メンバーはフロリダ州の議事堂を31日間にわたって占領しました。

Eric Garner氏の死

しかし,SNS上で産声を上げた,このBlack Lives Matterが全国的な社会運動に発展するために,もっと多くの黒人の死が必要でした。2014年7月17日,ニューヨーク市Staten Islandの道端でタバコを売っていたEric Garner氏がニューヨーク市警の白人警官により,脱税を疑われ,チョークホールドという禁止行為で窒息死させられます。警官により顔を歩道に押し付けられ,彼は窒息死する直前まで約11回"I can't breath"(邦訳「息ができない」)と叫んでいたのにも関わらず,警官はチョークホールドを止めませんでした。もちろん警官は告訴されまていません。実際の映像を以下から閲覧することが可能です。

Michael Brown氏の死

更なる悲劇が,ミズーリ州Fergusonで続きます。同年8月9日,当時18歳だった黒人青年Michael Brown氏が,白人警官のDarren Wilson氏によって射殺されます。Brown氏が車道の真ん中を歩いており,それがきっかけでWilson氏と口論になった末,非武装で両手を上げ降伏をしていたのにも関わらず,Brown氏は射殺されます。そして彼の亡骸は,夏の炎天下の元,約4時間も路上に放置されていました。その事実について米・New York Timesが記事を発表しています。

ファーガソンにおける人種暴動

また,ここにおいても,白人警官は不起訴となります。Brown氏の死をきっかけに,Ferguson市では暴動が勃発し,それを鎮圧すべくFerguson市警に加えミズーリ州兵も動員されました。この暴動の最中には,"Hands up, don't shoot"(邦訳「降伏するから,撃たないでくれ」)という言葉が繰り返し叫ばれました。Ferguson市での抗議運動はNew York Times紙のwebサイトに映像が掲載されています。

次回は,Black Lives Matterの発足と,1950-60年代にアメリカを動かした公民権運動との違いについて書く予定です。それでは,また。


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