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vol 8. 続・BLMの抗議運動

vol 7.でBlack Lives Matter(通称:BLM)の誕生とソーシャルメディアによる新たな闘争の形に触れました。vol 8.でも引き続き,BLMの抗議運動をまとめてみます。

BLMと政治家

抗議運動と言うと,行進や座り込みなどをイメージするかと思います。また,BLMの抗議運動の多くも,非暴力による直接行動と言う抗議形態を取っています。一方,実例は少ないですが,BLMの活動家が白人政治家の集会に乱入した事件もあります。最も顕著な例は,2015年8月8日にシアトルで起きた事件です。翌日の8月9日はMichael Brown氏が射殺されてからちょうど1年が経とうとしている日であり,アメリカの数都市では大規模な抗議デモが行われており,シアトルもその内の1つでした。一方,同じく8日にシアトルでは,民主党大統領候補であったBernie Sanders上院議員が選挙集会を開いていました。突如,シアトルBLM支部のMarissa Johnson氏とMara Jacqueline Willaford氏の2人の黒人女性がSanders氏の演説台に駆け寄り,Sanders氏を脇へ追いやりながら,4分半の講義スピーチを行いました。2人は観衆からの罵声にひるむことなく,Brown氏の死に黙祷を捧げ,シアトルで起きている人種差別の現実を訴えました。その映像をこちらから確認することが出来ます。03:00過ぎからSanders氏の姿が幾度か映ります。

同様の事件は1月前の2015年7月19日にアリゾナ州Phoenixで行われた選挙集会でも起きていました。National Coordinator for Black Immigration Networkの代表を務めるTia Oso氏という黒人女性が,またもやBernie Sanders氏により行われていた議論の最中に,ステージ上に立ち,講義スピーチを行いました。今回の,Sanders氏は不快感を顕にしています。当時の映像をこちらから見ることができます。

フットボールにおける黒人差別抗議

また,抗議運動はスポーツ界でも続きます。2016年,アメリカのNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の人気選手であるColin Kaepernick氏とEric Reid氏の2人が,国家斉唱の際に抗議運動を行いました。起立と右手を左胸に当てるジェスチャーを拒否,代わりに斉唱中にひざまずき,アメリカへの忠誠を誓わなかったのです。黒人を差別し続けるアメリカの国旗と国歌には敬意を示さず,Kaepernick氏は「人種差別はフットボールよりも大きな問題だ」と述べました。更に彼は,警官により射殺され路上に放置され続けたMichael Brown氏の死についてのコメントも発表しました。

彼ら黒人選手の抗議に対して,トランプ大統領は国歌斉唱中に起立をしない者はこの国にいるべきでないと罵りました。更に,大統領は続けてこう述べます。"Get that son of a bitch off the field right now, out, he's fired. He's fired"(邦訳:あのくそ野郎をフィールドから摘み出せ,あいつはクビだ,あいつはクビだ)この発言と,選手らの勇気ある行動は,国民にどう映ったのでしょうか。トランプ大統領の言葉はこちらから確認できます。

メキシコオリンピックにおける抗議行動

また,半世紀ほど前,1968年メキシコシティーのオリンピックにおいても,陸上男子200mに優勝した黒人選手Tommie Smith氏と3位のJohn Carlos氏が,表彰台で人種差別が蔓延る母国アメリカに対して,抗議行動を行いました。黒人の貧困を世に訴えるべく,靴を履かずに黒い靴下だけでメダルを受け取り,2人は黒い手袋をはめながら,拳を上げ続けました。所謂,ブラックパワー・サリュートというものです。後日2人は,オリンピック村から追放され,アメリカに帰国すると命の危機を感じるほどの暴力などに悩まされました。

終わりに

vol 6~8で,Black Lives Matterの始まりやその抗議運動についてを私なりに説明してみたつもりです。公民権運動で戦った活動家の一部はBLMをLeader-less movement(邦訳:リーダーがいない運動)と批判する一方,BLMの活動家は誰もがリーダーとなれる平等な組織だと強調します。しかし,どちらも黒人社会の底上げを目指している点では同じゴールを掲げています。BLMが生まれると,All Lives Matter(邦訳:全ての命が大切だ)やBlue Lives Matter(邦訳:労働者の命も大切だ),更にはWhite Lives Matter(邦訳:白人の命も大切だ)と様々な運動が起こっています。それでは,またお会いしましょう。


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