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コンテンツマーケティングというマーケティングはない


コンテンツマーケティングってなんだろう?

この数年ですが、「コンテンツマーケティング」に関する質問や相談が多く来るようになっています。


「コンテンツマーケティングがうまくいかなくて」

「コンテンツマーケティングのコンテンツ作りのコツを教えてほしい」

「コンテンツSEOのポイントを教えてほしい」


正直に言うと、「コンテンツマーケティングはマーケティングではないんじゃないか?」と思っています。

別の記事で書いた通り、そもそもマーケティングはビジネス全体に関わる概念です。コンテンツマーケティングに関わる話題は、狭い意味でのマーケティング、Webマーケティングに絞った話ではあります。それを踏まえたうえでも、「コンテンツマーケティングってくくりはないんじゃないかな?」と思っています。


理由は簡単です。


ありとあらゆるマーケティングにおいて、コンテンツは不可欠


だからです。


広告宣伝、販売促進、営業、これらの部分をマーケティングと取る狭義のマーケティングにおいて、コンテンツはなくてはならないものです。

お客様との接点全てにコンテンツがある

いま、コンテンツマーケティングという言葉を使うときにイメージされるコンテンツは、左上の部分が主でしょう。しかし、左側のいわゆる4大メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)、ダイレクトメール店頭のPOPなども立派なコンテンツです。もっと言えば、アウトバウンドのコール、いえ、インバウンドでの電話対応も、営業の方のトークも店頭での販売員の対応も、すべて「お客さまとのコミュニケーション」が発生するときには、コンテンツが存在します。広い意味で言えば、サービスや製品そのものもコンテンツと言えるかもしれません。

ところが、現在、ものすごく狭い意味で「コンテンツマーケティング」と言われている気がします。「Webマーケティング」のなかでブログやホワイトペーパー、オウンドメディア、メールやSNSなどの“コンテンツ”を活用して行われるプロモーション=コンテンツマーケティングという認識が主流のようです。
さらにはいま、Webマーケティングそのものが「リード獲得」に偏っている印象もあり、「コンテンツSEO」などという謎ワードまで耳に入ってきます。

マーケティングをやってきた人間が、コンテンツを軽視してきた証拠では?

ではなぜ、いま「コンテンツマーケティング」が声高に叫ばれているのかと言うと、少し主観的ですが、仮説があります。
それは、「これまでWebマーケティングに携わってきた人間が、コンテンツを軽視してきた」からではないか、です。
Webマーケティングの歴史はさほど長くはありません。普及し始めたのが2000年代からになります。


インターネット利用率(個人)の推移 (出典)総務省「通信利用動向調査」

総務省の通信利用動向調査によると、個人のインターネット利用率が1/3を超えたのが、2000年です。その頃から「Webマーケティング」が始まるのですが、最初の頃は「メールマーケティング」という言葉がありました。メール(eメール)をダイレクトメールのような媒体として広告していこうというものです。まだWebサイトは多くなく、ネット広告も出始めたばかりで、手軽なメールが活用されたのでしょう。それがやがて、いまのヤフー広告やグーグル広告につながる「バナー広告」が誕生します。またSEOの草創期でもありました。それが発展して、いまに至るのですが、この歴史は「ウェブ上でのマーケティング手法の開発」の歴史でもあります。
メール、バナー、ブログ、ディスプレイ広告、SEO、そしてリスティング広告、オウンドメディア、LP、ホワイトペーパー…
さまざまなものがマーケティングに活用されるようになっています。
でも、そのどれにも「コンテンツ」は必要なのです。
メールにせよ、サブジェクトから本文まで、立派なコンテンツです。

しかし、Webマーケティングの世界では「WEBでマーケティング、狭い意味ではリード獲得(見込み客の獲得)」ができること、「顧客とコミュニケーションを取り続けて、ナーチャリングできること」が発明だったのです。なので、そのツール、メールやブログ、オウンドメディアなどの「手法」に注目が集まりやすくなります。
しかも、レガシーな広告の世界、まだコンテンツをクリエイティブと呼んでいた広告の世界の人たちは、Webマーケティングの世界には本格参入が遅れました。クリエイティブ=コンテンツの作り方を学んでいなかったウェブマーケターが、マーケティングを担ってきたのです。自然と手法に注目が集まり、コンテンツはおざなりになっていたのです。

しかも、WEBという世界では、ビジネスが始まって、まだ四半世紀も経っていないのです。当初、手つかずの原野が広がっていたのです。誰もメールをビジネスで使っていないときに、初めてメールで顧客に情報提供をすると、競合がいません。受け取った顧客も新鮮です。おそらく高い効果が得られたはずです。それはバナーやブログを始めたときも同じでしょう。
(ただ残念ながら、すぐにそういった初期効果は薄れていきます。これはまた別の記事で触れることにします)
 

「一文字いくらですか?」と聞くことの矛盾


「一文字いくらですか?」
 
この質問はよくされるのですが、ストレスに感じます。「いえ、一文字いくらで原稿を書いたことはないです」と答えると驚かれることも珍しくありません。古い広告の世界の人で、コピーライターに「一文字いくら」の価格設定をしたことがある人はいないでしょう。この一文字単位の価格設定は「工数」という概念に似ています。WEBマーケティングに携わり始めた人たちが、もともとウェブサイトの開発に携わっていた、どちらかというとエンジニアに近い人たちだったから、こういう考えが根付いたのではないかと推測しています。
 
余談ですが、「一文字いくらですか?」と聞かれたとき、こういう質問を返すことがあります。
 
「では、“様々な”と“さまざまな”の値段が違う理由を教えてください」
 
これまで、この質問に合理的に答えてくれた人は一人もいません。

なので、「コンテンツマーケティング」という言葉を聞くたびに、なにか据わりの悪さを感じてしまうのです。

コンテンツを考えるときに気をつけること

先ほど、Webマーケティングの草創期、「メールマーケティング」と呼ばれるものがあったと書きました。過去形なのです。いまも存在するのですが、メール単体でマーケティング(この場合は狭義です)が成立することはありませんし、なによりも、「当初ほどの効果は出ない」のです。

誰もメールマーケティングをしていないときは、目の前には無限の荒野が広がっていたはずです。しかし、それがうまくいくとわかった瞬間、競合他社が大挙として参入してきます。メールに限りません。バナーだって、SEOだって、オウンドメディアだって、ウェビナーだってそうです。その手法が開発されたときには、大きな効果が出たはずですが、すぐに「誰もが手を付ける」=コモディティ化します。そこは血で血を洗う激戦区になるのです。

だからこそ、手法で差がつかないなら、「質で差をつける」、その考え方がコンテンツマーケティングです。

カスタマーインサイトに沿ってコンテンツを考える。

SEO用のブログコンテンツなどならば「SEOで集めたいキーワード」で「上位に表示される内容」を考えるはずです。そこで、そのキーワードで検索したときに上位表示される「他のコンテンツ」を見て、モノマネします。実はこの数年はそれでSEOの効果が出ていました。ただし、どこも同じことをするので、ノルマンディー上陸作戦もかくや?というくらいの激戦場になっています。
ナーチャリング用のオウンドメディア、ホワイトペーパーなどでは、いかに自社のサービスや製品が優れているかのアピールが始まります。
それに限りません。ちょっと「ポケットWi-Fi おすすめ」あたりのキーワードで検索してみてください。
「2024年ポケットWi-Fi比較ランキング」や「ポケットWi-Fiおすすめ◯選」などという記事がたくさん表示されます。それをいくつか読んでいくと気がつくはずです。

「ああ、◯社の企画記事なんだな」

特定の販売会社が自社に誘導するための露骨な提灯記事だったりするのです。

顧客にコンテンツでバリューを提供しているのか?

ここで考え直してしいのです。別記事(マーケティングを知るとビジネスの可能性が広がる)で書いた通り、マーケティングで大切な視点として「Market in」があります。ひらたく言えば「顧客視点」なのですが、上記のような記事は「顧客視点」でしょうか?

とにかくSEOで上位表示させるために全力で工夫をこらした記事。
問い合わせや申込みをしてもらうために全力で自己アピールしているホワイトペーパー。

顧客はなぜそのキーワードで検索したのか。
そのオウンドメディアでなにを得たいと思っているのか?

この視点でコンテンツを見直す必要があると思っています。

コンテンツは、お客さまとのコミュニケーションにおいて、「なにをどう伝えるか」の「なに」にあたるものです。
あなたが本当に伝えたいことはなにか。お客さまが本当に知りたいことはなにか。
これが重なるところがあるはずです。
それを探すことこそ、コンテンツマーケティングだと言いたいと思います。

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