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<第2章:その1>心の闇が埋まる

 お墓参りすることによって、実際に人生の難問を解決し、事態を好転させた人々はたくさんいます。
 すでに述べたように私自身、どうにもならない壁にぶち当たったときに、母のお墓にお参りして苦境から徐々に立ち直りました。はじめはただ「お母さんに会いたい」との幼い願いだけで墓所に向かったのですが、徐々に目に見えない母と対話を始めていたのでした。
 ひとりでお墓に向かっていると、おもしろいもので、矢印が外に向かう(何ごとも他人のせいにする=他罰的になる)よりは、自分に向かってくる(自罰的、自責的になる)のです。自分が弟に対して悪いことをしていたという罪悪感がひしひしと迫ってきます。何か心の闇があって、それを暴力で埋めていたのだということがしだいに分かってきます。
 母は、今この世にはいないけれども、きっと自分たちを見てくれているだろうとの思いも浮かびます。
 母は私たち3人をみんな愛してくれたので、その母の子どもである弟を殴っては、母も悲しむだろうとも考えます。
 それで弟に悪いことをしたとお墓に向かって話したり、もう暴力はふるいませんと、母に誓ったりしてきたのです。
 そういうことで少しずつ、心の闇が埋まっていったのでしょう。私の生活態度も改まり、弟に暴力をふるうということもなくなっていきました。
 お墓に真摯に向き合うことで、必ず大きなものを得ることができます。私と同じような境遇の方も世間にはたくさんいらっしゃると思いますので、解決する方法はありますよと、できればそういう人を元気づけたいと考えています。
 お墓参りで人生を好転させた人は私だけではありません。むしろたくさんいらっしゃいます。そういう人々のエピソードを読んで、何らかのきっかけをつかんでもらえたらと思うのです。


前回まで
はじめに
・序章
 母が伝えたかったこと
 母との別れ
 崩れていく家
 止むことのない弟への暴力
 「お母さんに会いたい!」
 自衛隊に入ろう
 父の店が倒産
 無償ではじめたお墓そうじ
 お墓は愛する故人そのもの
・第1章
 墓碑は命の有限を教えてくれる
 死ぬな、生きて帰ってこい
 どこでも戦える自分になれる
 お墓の前で心を浄化する
 祖父との対話で立ち直る
 お墓はいちばんのパワースポット

矢田 敏起(やた・としき) 愛知県岡崎市生まれ。高校卒業後、自衛隊に入隊する。配属された特殊部隊第一空挺団で教育課程を首席で卒業後、お墓職人となるため、地元有力石材店で修業をする。1956年に創業された家業の石材店を継ぎ、「人生におけるすべての問題は、お墓で解決できる」ことを見出し、「お墓で人間教育」を提唱する。名古屋の放送局CBCラジオで、平日午前の番組『つボイノリオの聞けば聞くほど』に2012年から出演を続けており、毎週火曜日に「お墓にかようび」というコーナーを持ち、お墓づくりや供養に関する話を発信している。建て売りで永代供養の付く不安の少ないお墓を提供する「はなえみ墓園」を2020年に始め、愛知県内28カ所(2024年5月現在)となっている。2022年にお寺の本堂を使った葬儀をサポートする「お寺でおみおくり」を始め、2023年にはお墓じまいなどで役目を終えた墓石の適正な処分や再利用を進める「愛知県石材リサイクルセンター」を稼働させた。

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