<序章:その6>再録『心が強くなるお墓参りのチカラ
自衛隊に入ろう
母の死から家の中も外も荒れ、弟いじめをきっかけにお墓参りをするようになり、そうして元の落ち着きを取り戻すまでに、足掛け3年の月日が過ぎ去りました。学年で言えば、小学校4年生から6年生までということになります。
写生大会で思いを裏切られて以来、父への複雑な感情は続いていましたが、それでも祖父から続く石材業には私なりの誇りを持っていました。
小学校の卒業文集には、将来は家の石屋を継いでいくとはっきりと書いています。
その通りにやがて父の跡をついで3代目となるわけですが、高校を出た後で少し寄り道をしています。それが自衛隊入隊です。
高校3年の時、卒業後の進路を考えていた際、父はいきなり石屋になっても世間が狭すぎるから、大学に行ってもいいぞと言いました。ところが私はあまり勉強が好きではありませんし、成績もよくありません。大学に進学するとなると必ず親の援助も必要になります。親に負担をかけるのは嫌でしたから、大学進学は初めから選択肢にありませんでした。
しかしそうなると、どこかに就職するのかということになります。父もすぐに石屋の世界に入るのではなく、石屋以外の仕事を探してほしいと言っていましたが、なかなかピンとくる職場が見つかりません。
そんな時にたまたま高校で同級生が「自衛隊の試験を受ける」と言ったのです。実は私は中学に入ったころから、弟いじめの反動からなのか、人の役に立ちたい、正義の味方になりたい、という思いが強くなって、仮面ライダーとかウルトラセブンの大のファンだったのです。
単純と言えば単純なのですが、何となく悪を凝らしめる仮面ライダーのイメージが、自衛隊と重なってしまって、
「そうか、自衛隊という選択があったか」
と妙に納得したのです。
そこで、自衛隊のことを調べたり、自衛隊の駐屯地が近くにあったので見学に行ったり、船に乗せてもらったりしました。隊員の皆さんがいずれもすごく生き生きと仕事をしていますし、国を守るということに誇りを持っていましたから、素敵なところだと思いました。
こうして、一任期の2年間だけ、修行のつもりで入ろう、国のお役にたつことでもある、心身の鍛錬にもなるだろう、ということで、試験を受けて入隊したのです。
<つづく>
「再録『心が強くなるお墓参りのチカラ』」は、月曜日に不定期(2週間おきくらい)でリリースする予定です。
<前回まで>
・はじめに
・序章
母が伝えたかったこと
母との別れ
崩れていく家
止むことのない弟への暴力
「お母さんに会いたい!」
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