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<序章:その6>再録『心が強くなるお墓参りのチカラ

愛知県で墓石の施工などを手掛ける矢田石材店の矢田敏起社長は、2012年に本を出版しました。『心が強くなるお墓参りのチカラ』(経済界)。お墓を通じて、家族の絆、先祖供養の大切さを伝え、「お墓参りこそ最高の人間教育」と説き、「命のつながりを知ることで、あなたの生き方は一瞬で変わる」といった想いや、そこに至った自身の半生などをまとめたものです。発行から10年以上が経ち、改めて、みなさんに読んでいただければと、このnoteの場で再録することにしました。少しずつ連載します。

自衛隊に入ろう

 母の死から家の中も外も荒れ、弟いじめをきっかけにお墓参りをするようになり、そうして元の落ち着きを取り戻すまでに、足掛け3年の月日が過ぎ去りました。学年で言えば、小学校4年生から6年生までということになります。
 写生大会で思いを裏切られて以来、父への複雑な感情は続いていましたが、それでも祖父から続く石材業には私なりの誇りを持っていました。
 小学校の卒業文集には、将来は家の石屋を継いでいくとはっきりと書いています。
 その通りにやがて父の跡をついで3代目となるわけですが、高校を出た後で少し寄り道をしています。それが自衛隊入隊です。
 高校3年の時、卒業後の進路を考えていた際、父はいきなり石屋になっても世間が狭すぎるから、大学に行ってもいいぞと言いました。ところが私はあまり勉強が好きではありませんし、成績もよくありません。大学に進学するとなると必ず親の援助も必要になります。親に負担をかけるのは嫌でしたから、大学進学は初めから選択肢にありませんでした。
 しかしそうなると、どこかに就職するのかということになります。父もすぐに石屋の世界に入るのではなく、石屋以外の仕事を探してほしいと言っていましたが、なかなかピンとくる職場が見つかりません。
 そんな時にたまたま高校で同級生が「自衛隊の試験を受ける」と言ったのです。実は私は中学に入ったころから、弟いじめの反動からなのか、人の役に立ちたい、正義の味方になりたい、という思いが強くなって、仮面ライダーとかウルトラセブンの大のファンだったのです。
 単純と言えば単純なのですが、何となく悪を凝らしめる仮面ライダーのイメージが、自衛隊と重なってしまって、
「そうか、自衛隊という選択があったか」
と妙に納得したのです。
 そこで、自衛隊のことを調べたり、自衛隊の駐屯地が近くにあったので見学に行ったり、船に乗せてもらったりしました。隊員の皆さんがいずれもすごく生き生きと仕事をしていますし、国を守るということに誇りを持っていましたから、素敵なところだと思いました。
 こうして、一任期の2年間だけ、修行のつもりで入ろう、国のお役にたつことでもある、心身の鍛錬にもなるだろう、ということで、試験を受けて入隊したのです。

<つづく>


「再録『心が強くなるお墓参りのチカラ』」は、月曜日に不定期(2週間おきくらい)でリリースする予定です。

前回まで
はじめに
・序章
 母が伝えたかったこと
 母との別れ
 崩れていく家
 止むことのない弟への暴力
 「お母さんに会いたい!」

矢田 敏起(やた・としき) 愛知県岡崎市生まれ。高校卒業後、自衛隊に入隊する。配属された特殊部隊第一空挺団で教育課程を首席で卒業後、お墓職人となるため、地元有力石材店で修業をする。1956年に創業された家業の石材店を継ぎ、「人生におけるすべての問題は、お墓で解決できる」ことを見出し、「お墓で人間教育」を提唱する。名古屋の放送局CBCラジオで、平日午前の番組『つボイノリオの聞けば聞くほど』に2012年から出演を続けており、毎週火曜日に「お墓にかようび」というコーナーを持ち、お墓づくりや供養に関する話を発信している。建て売りで永代供養の付く「不安」の少ないお墓を提供する「はなえみ墓園」を2020年に始め、愛知県内25カ所(2023年12月現在)となっている。2022年にお寺の本堂を使った葬儀をサポートする「お寺でおみおくり」を始め、2023年にはお墓じまいなどで役目を終えた墓石の適正な処分や再利用を進める「愛知県石材リサイクルセンター」を稼働させた。

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