安永 悟

所属:久留米大学文学部心理学科  専門:教育心理学・協同教育

安永 悟

所属:久留米大学文学部心理学科  専門:教育心理学・協同教育

最近の記事

第3回 仲間づくり (その5)  自己効力感を育てる協同学習

 今回は第3回(その4)の質問にお答えします。第3回のテーマ「仲間づくり」とは直接関係していない点も含まれていましたが大変興味深い内容でした。 〇学生と教師との認識のズレ  確かに、ご指摘にあるように「教員は言ったつもり、学生は聞いていない」という出来事は、教師であれば誰しも経験のあることだと思います。学生と教師との認識はズレるものだという前提で、教育指導にあたるのが肝要かと考えます。  人は、ある意味、自分勝手です。自分が考えているように相手も考えていると思いがちです。し

    • 第3回 仲間づくり (その4)  自己効力感にもつながる共に成長する喜びの実感

       読者からコメントが届きましたので全文を以下に掲載します。私からの返信は次回になります。                   *  第3回(その4)は、引き続き相模原看護専門学校の岡田佐枝子が担当します。安永先生からのお返事を読ませていただき、自分に足りなかったものを的確に指摘された思いでした。改めて単なるグループワークではない協同学習を進めるための原点に立ち戻る必要性を感じ、本を再読しました。学校内で話し合い、その中で3点の気づきを得たのでまとめてみます。 〇学生と「見通

      • 第3回 仲間づくり (その3)  協同を楽しむ

         今回は(その2)に対する私のコメントです。(その2)の内容は「仲間づくりの継続性について」「体験学習での学びを深める」「協同学習の評価のあり方」という3点について述べられていました。第3回のテーマ「仲間づくり」から判断して、今回は最初と2番目の内容を中心に検討します。最後の内容は「評価」にも触れていますが、2番目で取り上げた話題の延長線上にあり、同根の問いと理解できます。なお、評価は大きな問題です。回を改めて吟味したいと思います。 1.仲間づくりの継続性について  協同学

        • 第3回 仲間づくり (その2) 安心して学びを深め合える仲間づくりのために

           事前に登録していただいている読者からコメントが届きました。その全文を以下に掲載します。わたしからの返信は次回になります。 *  第3回(その2)は相模原看護専門学校が担当します。今回の担当は岡田佐枝子です。臨床で10年あまり、看護教員として働いて20年以上になります。臨床の場ではさまざまな診療科を経験しました。そこでの失敗も含めた色々な体験は、教員として学

        第3回 仲間づくり (その5)  自己効力感を育てる協同学習

        • 第3回 仲間づくり (その4)  自己効力感にもつながる共に成長する喜びの実感

        • 第3回 仲間づくり (その3)  協同を楽しむ

        • 第3回 仲間づくり (その2) 安心して学びを深め合える仲間づくりのために

          第3回 仲間づくり (その1)              出合いが肝心です

           授業に協同学習を導入する際、出合いが肝心です。ここでの出合いには2つの側面があります。1つは新しい仲間との出合いです。異質なグループ編成によって、自分とは異なる多様な背景をもった新しい仲間と出合える機会が広がります。たとえよく知った友だちと一緒になったとしても、友だちの新しい一面と出合うこともできます。  もう1つは協同学習との出合いです。理論と実践に裏打ちされた効果的なグループ学習である協同学習を体験することで、それまでのグループ学習のイメージを払拭し、仲間と真剣に学び合

          第3回 仲間づくり (その1)              出合いが肝心です

          第2回 グループの編成と配置 (その5)      集団と個の関係に心を配る

           今回は、第2回の返信(その4)に対する回答です。返信(その4)にある教師の思いを手がかりにグループ編成についてさらに理解を深めます。その後、返信(その4)の執筆にかかわられた千葉中央看護専門学校の先生方が実感した「学生を信じて任せる」という教育理念を吟味し、関連する質問にお答えします。 〇 バランスの取れたグループ編成  返信(その4)にはグループ編成に関して興味深い記述がありました。少し長くなりますが引用します。  「円滑なグループ活動のために、まずメンバーの中心となる

          第2回 グループの編成と配置 (その5)      集団と個の関係に心を配る

          第2回 グループの編成と配置 (その4)      学生を信じて任せる

           第2回「グループ編成と配置」(その3)に対する参加者からの返信が届きましたので紹介します。この返信に対する私のコメントは次回(その5)で掲載します。                   *  第2回(その4)は引き続き千葉中央看護専門学校の玉木弘美が担当します。安永先生からの(その3)拝読しました。はっとするご指摘をいくつかいただき、本校の3人で話し合いました。そこでの新たな気づきは次の3つです。1つめは「学生の主体性を育てる機会を奪っていた」、2つめは「教員がグループ活動

          第2回 グループの編成と配置 (その4)      学生を信じて任せる

          第2回 グループの編成と配置 (その3)     状況に応じたグループ編成を心がける

           今回は、第2回(その2)「全員が参加できるグループを編成する」への回答です。  質問をいただいた玉木弘美先生は担当科目「精神看護学」にグループ活動を導入しており、全員参加型の授業づくりを常に意識されていることがよくわかりました。たとえば「グループワークのルール」を学生と共有して支持的風土を醸成しようとされている点は高く評価できます。  むろん留意されていることだと思いますが、単にルールを与えるだけでなく、ルールの真意を学生と共に吟味し、主体的に守る姿勢を育てることが大切に

          第2回 グループの編成と配置 (その3)     状況に応じたグループ編成を心がける

          第2回 グループの編成と配置 (その2)     全員が参加できるグループを編成する

           第2回「グループの編成と配置」(その1)に対する感想と質問が、参加者から届きました。この原稿に対する私の回答は次回(その3)で掲載します。                  *  第2回は千葉中央看護専門学校が担当します。今回の担当は玉木弘美です。教員歴は17年目になります。担当は「精神看護学」です。正解がない問に悩み、考え続ける力を育てたいと考えています。この数年は学校評価を担当し、学生による授業評価が軌道に乗るよう尽力しています。また、自主的に「校内に花を活ける係」にな

          第2回 グループの編成と配置 (その2)     全員が参加できるグループを編成する

          第2回 グループの編成と配置 (その1)  異質なグループ編成が基本です

           協同学習では小グループでの活動を多用します。今回はグループのつくり方とグループ替え、教室内のグループ配置について考えます。なお、第1回(その6)で提出されたグループ編成上の留意点についても、第2回の対話のなかで検討することになります。 〇グループの編成  協同学習では異質なグループ編成を勧めています。性別、年齢、出身、興味関心、成績などを手がかりに、できるだけ異質なグループを作ってください。背景の異なる仲間と交流することで、自分とは違う考え方や意見、感想に触れることができ

          第2回 グループの編成と配置 (その1)  異質なグループ編成が基本です

          第1回 授業を始める (その7)      課題明示の準備と実践

           今回は「第1回 授業を始める(その6)」に掲載した原稿を手がかりに議論を深めます。本対話の(その4)で、授業に導入したグループ活動がうまくいかなかったという事例が取り上げられました。そこで、グループ活動がうまく展開しなかった原因を「課題明示」の観点から(その5)で検討しました。この事例の検討が前回の(その6)でも引き継がれています。この流れを前提に、「課題明示の準備と実践」という観点から、さらに議論を深めたいと思います。 ○課題明示の準備と実践  教師が期待した授業を実現

          第1回 授業を始める (その7)      課題明示の準備と実践

          第1回 授業を始める (その6)      授業で残った「モヤモヤ」感の意味は

           第1回「授業を始める」に関する対話も今回で(その6)となりました。今回届いた原稿を以下に紹介します。この原稿に対する私のコメントは次回(その7)で掲載します。 * 〇自分の授業を振り返り、学生の「つまづき」を活用しきれなかったと気づく  東京都立広尾看護専門学校の中村 誠です。第1回(その4)で篠原先生の原稿にあった私の授業実践の事例を、(その

          第1回 授業を始める (その6)      授業で残った「モヤモヤ」感の意味は

          第1回 授業を始める (その5)      教師の感性が授業を育てる

           今回は「第1回 授業を始める(その4)」に掲載した篠原千鶴子先生の原稿を手がかりに議論を深めます。 ○教師の感性が授業を育てる  授業に対する教師の豊かな感性が主体的な授業改善のきっかけになる。篠原先生の原稿を読んで真っ先に確認できたことです。学びに対する学生の姿勢や授業展開に伴う学生の変化成長に寄り添いながら、教師として何を感じ、何を読みとることができるか。この教師の感性こそが授業改善の出発点にあるとつねづね思っていました。  授業のあと篠原先生は2つの「モヤモヤ」を感

          第1回 授業を始める (その5)      教師の感性が授業を育てる

          第1回 授業を始める (その4)      授業で残った「モヤモヤ」感

           第1回「授業を始める」(その1〜3)に続く反応が参加者から届きましたので紹介します。この原稿に対する私のコメントは次回(その5)で掲載します。 *  今回の担当は、東京都立広尾看護専門学校の篠原千鶴子です。  第1回(その2)の中村先生の同僚です。教員歴は26年目になります。助産師ですので、母性看護学を中心に担当してきました。10年ほど前から学校管理の仕事をしています。  実習や授業で学生と接する機会は少なくなってしまいましたが、看護学生が入学して初めて「看護とは何か」

          第1回 授業を始める (その4)      授業で残った「モヤモヤ」感

          第1回 授業を始める (その3)  「見通し」を伝えると学生が変わる

           今回は、第1回(その2)で寄せられた中村誠先生の原稿に対するお返事という形式で記述し、理解を深めていただこうと思います。先生の原稿を拝見して心に浮かんだことを述べます。 〇学生の学びを動機づける「見通し」  第1回(その1)「授業を始める」では、「見通し」の重要性を述べました。学習活動の目標とそれにいたる道筋を事前に共有することで、学習活動が主体的かつ積極的になり、学習に取り組む学生の姿が変わるとお伝えました。  それに対して「着地点がイメージできれば、学生の学び方も、教

          第1回 授業を始める (その3)  「見通し」を伝えると学生が変わる

          第1回 授業を始める (その2)  「見通し」の話は心に響きました

           第1回(その1)「授業を始める」に対する感想と質問が、参加者から届きました。この原稿に対する私の回答は次回(その3)で掲載します。               * 今回の担当は、東京都立広尾看護専門学校の中村誠です。  教員歴9年で、現在は基礎看護学、小児看護学を中心に担当しています。今年は、コロナ禍でのオンライン授業の推進と充実に向けてICTスキルの向上を目指し勉強中です。オンライン授業では看護技術などを動画編集、配信することで学生のわかりやすさにつなが

          第1回 授業を始める (その2)  「見通し」の話は心に響きました