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第3回 仲間づくり (その4)  自己効力感にもつながる共に成長する喜びの実感

 読者からコメントが届きましたので全文を以下に掲載します。私からの返信は次回になります。
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 第3回(その4)は、引き続き相模原看護専門学校の岡田佐枝子が担当します。安永先生からのお返事を読ませていただき、自分に足りなかったものを的確に指摘された思いでした。改めて単なるグループワークではない協同学習を進めるための原点に立ち戻る必要性を感じ、本を再読しました。学校内で話し合い、その中で3点の気づきを得たのでまとめてみます。

〇学生と「見通し」を共有する重要性
 前回、仲間づくりの継続性が課題ですと書きました。安永先生のnoteを読み、学生と教員の認識のズレ、という言葉に改めてハッとしました。
 ゲームなどで導入をしても、その後の関係性につながらない、教員の思った通りにならないと嘆いていましたが、その前に、そのねらいや願いを伝える努力をどれほど行えたか、ということだと思います。学生たち1人ひとりが、何のためにこれを行うのかをわからないままに実施しても、当然ながら発展性はありません。ただその時間、その関わりが「楽しかった」で終わってしまっていたのは無理のないことだったと気づきました。
 教員と学生には、伝えることと伝わることの差が起きやすいです。教員は言ったつもり、学生は聞いていないというのは、日頃からよくあることです。課題の共通理解を図るために安永先生は試験問題を始めに提示することもあると言われていましたが、私もレポートが評価対象になるものの評価表は、初めに提示するようにしています。途中で見返したり、注意喚起を繰り返したりすることで、学生と目指す課題を共有できていると感じることが増えるように思います。
 先生の言われるように課題・見通しを明確かつ丁寧に伝えることは、その認識の差を少なくすることに役立つと感じました。各授業で丁寧にワークの目的や意味を説明し、「ゲーム的活動で創り上げた仲間との良好な関係を活かし、お互いに協力しながら学び合える活動性の高い授業にしたい」ということを明確に伝えることで、学生もその意思をもって授業に臨むことができるようになるのだと思います。
また、その実現に向けた授業の構造化や、相手の話を心から聴く傾聴や、聴いた内容を踏まえて自分の意見を伝えるミラーリングなどの方法を効果的に活用できるようにしていきたいと考えています。

〇自己効力感にもつながる共に成長する喜びの実感
 体験学習で学生同士の学びが深まらなかったことについて、安永先生は「協同の精神に基づく切磋琢磨が行えなかった」のではないかと述べておられました。
 グループワークでの「〇〇さんは課題をちゃんとやってこないし、私たちに聞くばっかりで、書いてきたのを見せてと言われて困ります」という取り組みの差に基づく不公平感は、自分が考えなくてもほかの人がやってくれるという「社会的手抜き」によるものであったと気づきました。グループの話し合いで、互いに学び合い、高め合うための責任感や自覚が不足していたのではないか、それを防ぐための対策が取れていなかったのだと感じました。
 先日、学習支援という単元の授業で、学生同士で2人一組になり改善したい生活習慣の支援計画を立て、お互いに指導を行ってもらいました。
 学習支援とは、学習ニーズを持つ人が自分で意思決定を行い、行動変容していけるように支援していくものです。以前の教育・指導の考え方では知識の伝達が主でしたが、学習支援の理論では、自己効力感を上げることで結果につなげられるように働きかけます。これは、協同学習の考え方にも共通するところがあると感じています。
 生活習慣の相互指導終了後、相手にきちんと感謝を伝えて終わるように話しました。クラスで共に学ぶ仲間は、共に成長していく同士であること、あなたのために時間を作って、計画を考えてくれたこと、良い成果につながればお互いに嬉しいと伝えました。
 これは安永先生の言われるように、お互いが協力しないと達成できない活動をとおして、学生同士の人間関係の向上や、協力関係に基づく学びの素晴らしさを知ることで、仲間を思いやり、共に成長しようという思いを強くしてほしかったからです。
 そこで、動機づけの1つとして「自分のためだけなら頑張れないけど、誰かのためなら頑張れる」と話しました。すると学生の感想に「自分のためには頑張れない、誰かのためにも頑張れない、だけど自分と相手のためなら頑張れる」と書かれていました。まさに相互作用です。なるほど、と学生の感性に感心しました。
仲間を尊重し心を合わせて、今なすべきことを見つけ真剣に取り組むこと、目標を持って学生同士が学びあう、まさに「認め合い、教え合い、学び合い、高め合い」という切磋琢磨を行うための一歩だと感じました。
 最後の授業では、生活指導後に取り組んだ結果をお互いに確認し、そこから学んだことを個人でまとめ、さらに他のメンバーに伝えて(ライト=ペア=スイッチ)もらいました。
 取り組みの結果は、7割以上の成果を得られたという学生がほとんどでした。「最初は自分にはできないと思っていたけれど、行動してみるとだんだんとできるようになった。指導されたことを意識できるようになった結果、自分のためにもなり、自分はやればできると自信がつくきっかけになった」「自分だけの振り返りでは気づけなかったことを気づけたので、複数の人と振り返ることの大切さを感じた」と協同学習の成果を実感していました。
 また「自分が立てた計画通りに生活してくれて効果があったと言われた。達成感を得られている様子を見ることができて支援して良かったと思った」「お互いに高め合える関係性が大切と学んだ」というように、自分の思い通りには変えられない他人を少しでも変えることができたことは、学生たちの自己効力感=自信を高める結果になったと思います。お互いに「高め合いたい」という学生の持つ力を実感し、信じることの重要性を痛感しました。

〇学びの動機づけへの協同学習の活用
 今在学している学生は、新型コロナウィルス感染症が蔓延している現在の状況下で、あえて看護師を目指して学んでいます。中には親に勧められてという学生、ほかにやりたいことが見つからないからという学生も在学しています。
しかし入学後、学生は膨大な学習量を目の前にします。入学動機に関わらず看護について学び続けるためには、本人の動機づけが欠かせません。
 今回、仲間との協同学習を行うことで、教え合い、学び合う喜びを多くの学生が感じていました。一方で、少数ですがそもそもやる気になれなかったという学生もいました。これは、生活習慣の改善というテーマを教員から一方的に提示したことも原因だったかと思います。何故、このテーマを取り上げるのかについて、更に説明が必要だったのだと思います。
 また無断で欠席する学生もおり、困りました。ペアの相手役を変えて取り組んでもらいましたが、二人でその課題を行うことで、何を得てもらいたいと考えているのか、その見通しを繰り返し伝えることや、個別指導も重要だと感じます。
協同学習では成績の低い学生も成長を実感できると言われますが、学習内容の質を保証するためには、学生自身が学習することに魅力を感じ、学び続けてもらえるよう、動機づける教師自身のスキルの向上が重要です。
 「現場で活躍できる看護師」を育てるためには、教員が知識を伝える伝達者や学びを促進するファシリテーター、共に学び続ける同行者としての役割を、対象に応じてアレンジしながら果たす必要があります。教員間でも、このような協同の精神に基づく授業づくりを理解・実践していくことで高め合えると感じます。
このような学生・同僚への動機づけは協同学習をどのように活用すれば効果的でしょうか。安永先生のアドバイスをよろしくお願いいたします。

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