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アルバムレビュー

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漫然とアルバムを聴いていると印象を忘れてしまうので、アルバムを聴きながら1曲づつ感想を書き留めてみることにしました。特にジャンルレス。その日選んだアルバムを聴いてレビューしていき… もっと読む
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#音楽レビュー

Bruce Dickinson / The Mandrake Project (2024)

Bruce Dickinson / The Mandrake Project (2024)

★★★ 感動した/ウルッと来た
★★ ワクワクした/耳を惹かれた
★ 平常

全体評価:★★★19年ぶり、アイアンメイデンのボーカリスト、ブルース・ディッキンソンのソロ作。前作同様ロイ・Zとタッグを組み、コンセプトアルバムとしての作品。

まず、メタル色は薄い。というか、最近改めて思うが00年代以降「メタル」というとグロウルボイス(いわゆるデス声)の印象が強くなっている気がする。そもそもブルースは

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2022 ベストメタル/ハードコア(一部プログレ)系アルバム 4月-5月

2022 ベストメタル/ハードコア(一部プログレ)系アルバム 4月-5月

よーし、メタルについて書くぞー!

年末にまとめてベストアルバムを選ぶより聴いた時点で書き続けていこう、と思ってベストアルバムの記事を書き始め随時更新していたのですが、既にかなりの分量になってきて「こりゃあかん」と記事を分けます。重すぎると読み込めなくなるんですよね。

この記事は4月~5月あたりで耳を惹かれたアルバムの紹介。流すと「空気感が変わる」「独特の時間を過ごせる」ものを選んだつもりです。

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2022 ベストメタル/ハードコア(一部プログレ)系アルバム 1月ー4月

2022 ベストメタル/ハードコア(一部プログレ)系アルバム 1月ー4月

2022年で「おっ」と思った新譜アルバムをまとめてご紹介。じっくり聞くような大作よりは聞いていて楽しい、テンションが上がる作品が多いのは聞き方を変えた(※1)影響かも。メタル/ハードコア系と言っても音像が広いのでいくつかのサブカテゴリに分けています。

・”新しさ”が耳を惹くアルバム ー 新規性があってこの界隈の音像を拡張する、挑戦しているアルバム。個人的には大好きだし、多くの人におススメします。

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なんとなく「東京の空気感」にも近い:Black Country, New Road / Ants From Up There(2022、UK)

なんとなく「東京の空気感」にも近い:Black Country, New Road / Ants From Up There(2022、UK)

UKインディーズロック、サウスロンドンシーンと呼ばれるバンド群の中から現れたブラックカントリーニューロード。昨年のデビューに引き続いてセカンドアルバムをリリース。本作はより焦点が定まった内容になっていて、UKロックの伝統、それこそビートルズ、いや、キンクス的な「さまざまな音のレイヤーを重ねていく」手法がとられているが、なぜかJ-POP、日本のインディーズ的な音作りにも感じる。古くはboatであった

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Oki / Tonkori In The Moonlight 月明りのトンコリ(2022、日本)

Oki / Tonkori In The Moonlight 月明りのトンコリ(2022、日本)

”辺境”と”中央”の止揚度 ★★★★★

トンコリとはアイヌに伝わる伝統的な弦楽器で、通常は五弦であることから「五弦琴」と訳される(三弦や六弦の物もあるが、非常に稀)。江戸時代には北海道の宗谷地方やオホーツク沿岸地域、天塩(美深)などでもほぼ同じ楽器が存在し「カー」と呼ばれ演奏されていた文献記録があるが、近代までに伝承は途絶えた。現在判明している製作法や演奏法は、すべて樺太アイヌのものである。

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N.W.O.B.H.M.の40年:Saxon / Carpe Diem(2022、UK)

N.W.O.B.H.M.の40年:Saxon / Carpe Diem(2022、UK)

NWOBHM度 ★★★★★

Saxon(サクソン)、1977年結成、1979年デビューでN.W.O.B.H.M.を代表する存在として80年代から活躍しているバンドです。N.W.O.B.H.M.からはIron Maiden、Def Leppardが破格の成功を収めましたが、それに次ぐ位置といえばSaxon。3バンドの中だとSaxonが一番デビューも速く(他の2バンドは1980年)、最初の狼煙を上げ

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Persefone / Metanoia(2022、アンドラ公国)

Persefone / Metanoia(2022、アンドラ公国)

プログレッシブメタルおススメ度 ★★★★☆

かなり神聖かつ荘厳なオープニングでスタートするアルバム。そこからデジタルビートが鳴り響き、だんだん加速していく。映画的なオープニングからゴリゴリのテクニカルプログメタルへ。今作はドラマティックさを増しているようだ。

Persefone(ペルセフォネ)はアンドラ公国のバンド。アンドラ公国というのはヨーロッパの小国でフランスとスペインの国境にある。中世の

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Vektor / Terminal Redux(2016、US)

Vektor / Terminal Redux(2016、US)

スラッシュ名盤度 ★★★★★

これは凄い! Voivodにも通じる奇妙な和音(ジャズ由来っぽい感じ)を超高速で奏でるスラッシーな曲が続き、どんどんテンションが上がっていく前半~中盤。引っ掛かりがあるテクニカルなスラッシュながらプログレ的な変拍子感よりは直情的な疾走感、ヘドバンに最適なテンション高い音像が続く。かと思えば9曲目では突如スウェーデンのGhostにも通じる、北欧的な美メロが出てきて雰囲

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Pharaoh / The Longest Night(2006、US)

Pharaoh / The Longest Night(2006、US)

掘り出し物度 ★★★★☆

ウクライナのメタルラジオ「Radio Metal」を聴いていたら偶然出会ったバンド。メイデンの後に流れて「初期(初期2枚〜ディッキンソン加入直後)メイデン」っぽいバンドだなぁと思って耳が惹かれたのでアルバムを聴いてみました。Pharaoh(ファラオ)は1997年に結成されたUSのパワーメタルバンドで2006年作の本作は2作目。Metallum(評価:86/100)でもR

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Steve Vai / Inviolate(2022、US)

Steve Vai / Inviolate(2022、US)

音の変態度 ★★★★☆

音の魔術師、と呼ばれるVai先生。ギタリストとしてよりルックスがどんどん奇術師みたいになってるからな気がしなくもないけれど、貴重な「大道芸としてのギタープレイ」を伝承する御方。もともとバンドは大道芸みたいなものだし、60年代のギタリストは手品みたいなところがあったからね。バイオリンの弓でギターを弾いて見せたジミーペイジとか、手元を隠して弾いていたリッチーブラックモアとか(

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THY ROW / Unchained(フィンランド、2021)

THY ROW / Unchained(フィンランド、2021)

ワイルドR'n'R Meets NWOBHM度 ★★★★★

先日、宇多田ヒカルの新譜の記事を書いたんですよ。そうしたら「あなたへのおススメ」で宇多田ヒカル関連がたくさん出てくるようになって、「もうわかったねん」と。いや、好きだしいいアルバムだと思ったから書いたんですけどね、これだけたくさん出てくると食傷気味に。凄い話題になっているんだなぁということとトレンドの凄さというものを感じるわけです。ふだ

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Obscura / A Valediction(2021、ドイツ)

Obscura / A Valediction(2021、ドイツ)

「チョットワカル」メタラー向けおススメ度 ★★★★★

「完全に理解した」のダニング=クルーガー効果なるものがある。

これは学習などで少しわかるようになると「もう全部分かった」みたいになる現象のことだけれど、これって音楽ジャンルについても当てはまる気がしていて、たとえばメタルって似て聞こえるじゃない。だからちょっと聞くと「だいたい同じに聞こえる」「だいたいパターンがわかった」となる。で、そこから

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Battle Beast / Circus Of Doom(2022、フィンランド)

Battle Beast / Circus Of Doom(2022、フィンランド)

北欧パワーメタルおススメ度 ★★★★★

今やフィンランド国内ではナイトウィッシュに次ぐ地位まで上り詰めたフィンランド・メタルシーンの大物、バトルビースト(BB)待望の新譜。もともとメインソングライターであったアントンカバネン(Gt)は脱退しビーストインブラック(BIB)を結成しています。BBはメタリカ、BIBはメガデス、みたいな立ち位置かも。双方に影響を与え合いながら作品群をリリースている印象。

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宇多田ヒカル / Badモード(2022、日本)

宇多田ヒカル / Badモード(2022、日本)

Producer – A. G. Cook (曲: 2, 3), Jason "Poo Bear" Boyd* (曲: 9), Nariaki Obukuro (曲: 4, 5, 7, 8), Sam Shepherd (曲: 1, 6, 10), Skrillex (曲: 9), Utada Hikaru

世界レベルのJ-POP ★★★★★

J-POPのトップアーティスト、宇多田ヒカルの新作

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