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読書履歴#22_カルチャーが組織を強くする

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8月29日〜9月1日
文字数:約7,100

はじめに(所感)

私が在職する株式会社ネクスタでは、

カルチャーは「オープンで活発なコミュニケーション」
「自己実現の全力支援」
バリューは「驚くほどの価値を提供しよう」
「高速で改善し続けよう」
「信頼関係を積み上げよう」

を掲げています。
入社して半年経っていませんが、このバリューとカルチャーは大好きです。
そして社内ではこのバリュー・カルチャーを浸透させ、社外へ発信し、ネクスタに共感する仲間を集う役割を持っています。

しかし実際やってみると社外に発信する前にいかに社内に浸透させるかで苦労しています。
たとえばオープンで活発なコミュニケーションを実現するために、30分グループでディスカッションする時間を作ったりしたのですが、人によっては「業務時間を使ってまでやることと思えない」という意見もあったりで、真摯に受け止めながら、次どうするか?と考えて止まっていました。

そこでこの本を手に取って読んでみました。
メルカリやSHOWROOMでカルチャーを明文化して定着までの経験のある唐澤氏がとてもロジカルに丁寧にその手段を教えてくれており大変参考になりました。

早速、次の内容をやってみてどんな効果があるか試してみたいと思います。

①Stance(経営スタイルの確認):全員チームリーダー
②ルールブック作成
③EXジャーニーの作成(As-Is、To-Beの2軸で)
④バリュー・カルチャー体現者のモデルケース作成と表彰制度案策定

そもそもカルチャーって何だろう?カルチャー作りたいけどまだ自分の頭の中だけ。という人におすすめの一冊です。

第0章 なぜカルチャーが重要になるのか

顧客が製品のブランドに興味関心を持ち好感を持つように、働く人はカルチャーに興味関心を持ち好感を持つ
・経営戦略を考えるように組織戦略(カルチャーモデル)も人材市場動向や自社のコアコンピタンス、ターゲット、ポジショニングなど踏まえて人事制度や育成施策を導入し、そのカルチャーで優秀な人材の心を掴む
EX(Employee Experience)を向上させ、エンゲージメント(会社に対する愛着、信頼や絆)を高めることが重要
・漠然と優秀な人、会社に合う人が欲しいと考えるよりも、自社にとって優秀な人とはどんな人材で、自社に合うのはどんな人材なのか、そしてその後ろ盾となるカルチャーはどんなものかを明らかにすることが重要
・Googleでは成果を生むチームの条件を「心理的安全性」「相互信頼」「構造と明確さ」「仕事の意味」「インパクト」が重要と定義
・Amazonは働く人全てがリーダーであると考え「リーダーシップ・プリンシプル」を公開し行動指針を定めている
ブランドは製品・サービスを通じて顧客の頭や心の中にあるもので、カルチャーを社内に浸透させることで一人ひとりの社員の行動・言動を通して顧客へ正しく伝達するもの
カルチャーは会社にとって何を優先すべきでどんな意思決定をし、どんな戦略を立てるかを考える際に指針となる羅針盤であり、会社のトップやリーダーに成り代わって目に見えないところで働いてくれる
・カルチャーは社内だけでなく社外にも発信することで「プロジェクトを円滑に進めることができ」「採用活動や人材育成を優位に運ぶ」
・カルチャーが最も影響するのは採用
・かつては新卒一括採用で高学歴でコミュ力の高い学生を採用し「自社のカルチャーに染め上げる」のが一般的だった
・Z世代(1996年〜2012年生まれ)は「自分らしさ」「個人」を尊重するのが当たり前でコストをかけて採用しても「カルチャーに染める」までもなく退職してしまう
・第1章はカルチャーとは何か、ビジョン・ミッション・バリューとの関係性と全体像について
・第2〜5章は実践としてどういったカルチャーを作り社内外へ浸透させる具体的なプロセス
・第6章はテクノロジーの進化を踏まえたこれからカルチャーについて

カルチャーモデル
最高の組織文化のつくり方
ISBN978-4-7993-2668-8
P24〜P68

第1章 カルチャーとは何か

・カルチャーには
①自然に醸成されたカルチャー
創業以来、経営者や歴代の社員が企業活動を行い、脈々と受け継がれてきた独自のもの
→一般的に企業文化と表現されるもの
②意図的に設計されたカルチャー
企業が明確な意思や方向性を持って作ったもの
→ミッション・ビジョン・バリューなど明文化し作り出す
・意図的に設計されたカルチャーはコーポレートアイデンティティ、組織風土改革など対外的または人事戦略など限定的に捉えれてしまいがち
・しかしカルチャーはあらゆる企業活動に関連する。〇〇らしさと言い換えることができる
カルチャーモデルは事業と組織の両輪に働く鍵であり、カルチャーは意図的に作ることができる

◼️カルチャーとミッション・ビジョン・バリュー(MVV)
①ビジョン型
・ビジョン:実現したい社会
・ミッション:ビジョン実現のために会社が果たすべき役割・使命
・バリュー:ミッションを達成するために社員がとるべき行動指針
②ミッション型
・ミッション:(目指す社会のために)会社が果たすべき役割・使命
・ビジョン:ミッションを達成するために目指す中期的な会社のゴール
・バリュー:ビジョンを実現するために社員がとるべき行動指針

カルチャーとはMVVというインプットの影響を強く受け、企業としての日々の活動を通してアウトプットとして存在するもの
企業の事業活動はMVVから具体化されたゴール、ゴール達成のための「戦略」「戦術」、それを遂行するための施策を決定しPDCAサイクルを回すこと
バリューは最下部にあるもので、ミッションを達成するための行動指針であり「何を捨てるべきか」を定義している
・バリューを設定するときつい陥りがちなのは、あれもこれも重要だと考えてしまうこと
・「カスタマーファーストと利益重視」「グローバル成長と地域社会への貢献」など状況によって判断を難しくするバリューが混在してしまうことがある
バリューは究極の選択に対して迷いなく意思決定するための判断軸となるべきもの
・組織におけるカルチャーを一貫して構築することがビジネスモデルを実行し成果につなげることに大きく影響している
・事業(ビジネスモデル)と組織(カルチャーモデル)の両輪を回すことがプロダクトやサービスの差別化につながり、競争優位性を高める

◼️7Sフレームワーク
<ハードの3S>
①Strategy(戦略)
②Structure(組織構造)
③Systems(制度)
<ソフトの4S>
④Shared Value(共通価値観、理念)
⑤Staff(人材)
⑥Skill(能力)
⑦Style(経営スタイル、社風)
・ハードは比較的容易に変更できるが、ソフトは変更が難しいとされている
ビジネスモデルを7Sと対比させると
Propotion(顧客への提供価値)
Strategy(事業戦略)
Business Development(事業開発、パートナーシップ)
Product Development(製品、サービス開発)
Promotion(広告、広報)
Value Chain(調達、製造、販売チャネル)
Sales(営業、顧客接点)
ミッションを実現するためにPropotionを定義し、それを実現するためのStrategyを決定し7つの要素を計画する
各要素の指針となるのがStrategy
・この時点の7つの要素は計画でしかないので、それを実行するオペレーションがあって初めて顧客に価値が提供できる

・次にカルチャーモデルについて7要素を考えると
Stance(組織としてのあり方)
Shared Value(行動指針)
Structure(組織構造、形態)
System(制度)
Staff(採用、育成)
Skill(組織としてのスキル、強み)
Style(組織風土)
・カルチャーモデルはビジネスモデルと両輪の関係にあるので、Strategyは入らず、その代わりとしてStanceが入り、これは自社が取るカルチャーの方向性を決めることで主に経営のリーダーシップスタイルのあり方に定義される
・そしてShared Valueがカルチャーモデルの各要素を束ねる中心的な存在
・カルチャーモデルもビジネスモデルと同じくこの段階では計画でしかないので、ここにピープルマネージメントが必要
CXを高めると売上・利益も高まり、EXを高めると従業員のモチベーションも高まり結果としてCXにも影響する
・オペレーション → CX
 ピープルマネージメント → EX
を向上させるために不可欠。

例:メルカリ
・ミッション「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」
・バリュー「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」
・バリューは社員が何か判断する時に自然と言葉として出てくるほど浸透しており、もう一つ「性善説」(人は生まれながらに善の心を持つ)という言葉もよく利用されていた。これを「Trust&Openness」という言葉で表現した

カルチャーモデル
最高の組織文化のつくり方
ISBN978-4-7993-2668-8
P70〜P117

第2章 どういったカルチャーを作るべきか

制度やルールには考える余地がなく「これはこう決まっている」と思考停止し、それを守ることが目的となってしまう
・かたやカルチャーガイドラインは仕事の質を一定に保ち、スピーディーに遂行するためのガイドラインではあるが考える余地がある
・つまりカルチャーは自ら考える組織を育てることにつながる

◼️経営スタンスの4象限
①カリスマリーダー経営(変化志向×中央集権型)
・個のリーダーの強みを最大化することで成果を挙げる
・強力なトップダウンで大胆な意思決定ができる
②チームリーダー経営(安定志向×中央集権型)
・経営陣がチームで意思決定し、全員の力を結集し成長する
・一社に長期的に働き、合議のためのすり合わせスキルを高める
③複数リーダー経営(安定志向×分散型)
・組織を分散して各責任者に権限を委譲する
・各責任者のレベルに依存するためリーダーシップ層の育成が重視される
④全員リーダー(変化志向×分散型)
・MVVで大枠の方向性だけ規定しあと個人に任せる
・個の多様性を最大化し違いから変化を起こし成長することに期待
・社員に自律性とリーダーシップが求められる

・カルチャーは正解があるわけでなく「好きか嫌いか」
組織にカルチャーを浸透させるには、組織にまつわるあらゆる活動が同じ方向性でないと整合性が取れず浸透しきれない

カルチャーモデル
最高の組織文化のつくり方
ISBN978-4-7993-2668-8
P120〜P140

第3章 カルチャーモデルを作る

・カルチャーを作るプロセス
①現状のカルチャーの棚卸
②ビジョン・ミッションを設定
③カルチャーの方向性を決める

④カルチャーを言語化する
⑤カルチャーを浸透させる

①現状のカルチャーを棚卸する
・組織としてのあり方(経営スタンスの4象限)がどれに分類されるかによって7SのStance以外の他の6つの要素がどう規定されるべきかは自ずと方向性が見えて来る
②ビジョン・ミッションを定める
・第1章参照
③カルチャーの方向性を決める
P159〜209まで経営スタンスの4象限別に6つの要素の詳細説明
(※個人的に:チームリーダー経営は前職の自分のマネージメント経験を説かれているようで読み応えあった)

カルチャーモデル
最高の組織文化のつくり方
ISBN978-4-7993-2668-8
P142〜P210

第4章 いかにカルチャーを言語化するか

・カルチャーを作るプロセス
①現状のカルチャーの棚卸
②ビジョン・ミッションを設定
③カルチャーの方向性を決める
④カルチャーを言語化する
⑤カルチャーを浸透させる

④カルチャーを言語化する
・ここでいうカルチャーの言語化とは人事制度や採用の方針を決めていくことを指す(成果主義での評価制度にしよう、新卒一括採用で自社らしい社員を育成しようなど)
・トップが変われば多少なりともリーダーシップは異なり、社員の経営者への期待と経営者の社員への期待のギャップから変革期には停滞感が生じやすい

カルチャーモデル
最高の組織文化のつくり方
ISBN978-4-7993-2668-8
P212〜P256

第5署 カルチャーの浸透のさせ方

・カルチャーを作るプロセス
①現状のカルチャーの棚卸
②ビジョン・ミッションを設定
③カルチャーの方向性を決める
④カルチャーを言語化する
⑤カルチャーを浸透させる
・カルチャーを言語化し計画の段階が完了したら、最後はピープルマネージメントを通じた実行の段階
◼️5Aを用いたカルチャーの浸透
①認知(Aware)
・言語化したMVVやカルチャーの目に触れる機会(タッチポイント)をつくる
・エントランスや朝礼の唱和など古い会社がやるイメージがあるが、非常に意味のあること
・社内だけでなく社外にも認知を広げることが重要
・カルチャーは、さまざまな要素から複合的に出来上がっているので簡単には真似できるものでなく競争優位の源泉となる
・だからこそ積極的に発信してカルチャーフィットした人材の採用につなげた方が会社にはプラスになる
・目指しているカルチャーはあるけど、道半ばだと言うことがあれば、それも含めて素直に知らせる
カリスマリーダー経営は、強力なトップダウン体制で代表の言葉や考え方を際立たせこの人について行けば間違いないと思わせるような伝え方をする
チームリーダー経営で安定した成長戦略を目指すなら社内の和を重視するカルチャーを明示する
複数リーダー、全員リーダー経営は、若手の時から積極的に権限移譲し重要な機会を任されることがあると明示する

②訴求(Appeal)
・認知の時点ではカルチャーを知っているだけだが、そのカルチャーに共感・好感を抱かせるために共通認識の醸成が重要
・有効な手段としてワークショップや社内合宿、オフサイトミーティングなどカルチャーを議論する場を設ける
カルチャーはシンプルなほど、解釈の余地が広がる
・解釈の幅をあえて持たせてバリューを自分事化させるのもカルチャーを浸透させる方法の一つだが、ブレやズレも生じやすい
ブレやズレを無くしたい場合はガイドラインやブックで詳細に判断基準を示す
メルカリでは四半期に一度カルチャーを体現している人を表彰している
・経営者、経営メンバーがカルチャーを体現しバリューを唱え続けることが重要
企業のカルチャーを訴求する効果的な方法に入社前から退社までのEXジャーニーとして設定し、その中の一つ一つにカルチャーを組み込むこと(P293〜301にメルカリの事例)
・企業のカルチャーと働く環境、人事制度を一貫させることで従業員のミスマッチを防ぎ、カルチャーフィットの高い人材を採用することにつながる

③調査(Ask)
・カルチャーに興味を持ち、共感する仕掛けを訴求したら今度は従業員、求職者が自ら調査することを促す
・従業員、求職者に調査を促すうえで重要なことは、認知や訴求の段階で十分に好奇心を高められるような仕掛けを準備しておき、気になった時に「すぐに聞ける、すぐに調べられる」状態にしておくこと
カルチャーに関する情報を社外に対して共有するものもしてふさわしいのはオウンドメディア

④行動(Act)
・カルチャーを浸透させるうえで大きな役割を担うのが人事部門であることは確かだが、その運営の根幹を担う現場のマネージャーこそが率先してカルチャーを浸透させる役割を担う必要がある
マネージャーにはバリューに基づいた意思決定や行動を取りカルチャーを体現することが求められ、メンバーがカルチャーを体現できるように促す必要がある
・そのためには評価にバリューによる評価を組み込むことが必要で業績評価だけでなく行動評価(バリューの体現度合い)から統合的に判断する必要がある
・メルカリはOKRを導入しており、会社のOKR、チームのOKR、個人のOKRはそれぞれ連動している
・OKRは3ヶ月に一回設定し、重点的にコミットする業務の優先順位を明確にしている
OKRは明確に定量化できるがバリューへの評価は定量化が難しい
・本人と上司の体現度合いのギャップはよくあるが、重要なことは評価の正確さの追求でなく本人がフィードバックに納得し行動を変容していくこと
メルカリでは評価キャリブレーション会議を複数のマネージャーで実施し、評価をよりフェアにしている
・このキャリブレーション会議を通してマネージャーもバリューの理解を深めることができる

⑤推奨(Advocate)
・ここまでで企業のカルチャーに共感し自らの行動が組織内で評価されていると実感できたとき、ロイヤリティは高まり企業を他者に推奨したくなる

・企業は時代の変化のなかで、ビジネスモデルとカルチャーモデルを確立するサイクルを回し検証することが必要
・一つの指標としてeNPSを計測しカルチャーモデルが機能しているか検証するのも良い
・eNPSは従業員に「現在の職場で働くことを友人や知人に勧めたいと思いますか?」という設問に対して10段階でスコアリングする
・eNPSが低いのはピープルマネージメントに課題があるかもしれない

カルチャーモデル
最高の組織文化のつくり方
ISBN978-4-7993-2668-8
P258〜P353


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