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大学生のレポート:国際人口移動(移民)が送出国・受入国それぞれにどのような変化をもたらしたか

2021年1月18日 月曜日 17:04

引き続き今回も、昔のレポートを読み返すついでにnote上で公開する企画です。それでは、早速行きます!


当レポートは問に対して、受入国・送出国の各視点から、段落ごとに分けて分析していく。そして最後には、全体を踏まえた総括を行う。

排外主義

まず受入国内での一つ目の変化としては、加速する排外主義があげられる。移民が受入国民の仕事を奪うこと、麻薬や人身売買などの国際犯罪を持ち込むこと、斡旋会社を仲介して流入する非合法移民の存在、コロナウイルスの感染拡大等、非常に複雑な多くの要素が、排外主義を後押している。これらの共通項が、「不安」である。

受入国内でのこの感情は捌け口が無ければ溜まる一方だ。その不安からくるやり場のない感情をぶつける相手として、移民や難民が重宝される。人間というのは何かに付けて理由を追い求めたい生き物である 。

その性質が顕著に現れた結果が、ヘイトスピーチを始めとする差別的発言やトランプ大統領、東欧の独裁政権の台頭だ。短絡的に、コロナウイルスやそれに付随する経済的不安といった極めて煩雑な諸問題を「移民や難民のせい」と結論付けている。

現状、こうした手法で大衆の感情を煽り、支持を獲得しようとするポピュリズムが横行している。ここで更に問題の根深さを助長しているのが、「移民(外国人)は投票権持っていない」という事実だ。これは、移民たちを敵に回しても、政治家の国内支持基盤にはなんら支障をきたさないという事を意味する。このような要素も相まって、差別的な反移民感情が醸造されている。

移民政策

2つ目の変化としては、受入国内での移民労働者の権利等の適切な確保を前提とした移民政策がより強く求められるようになってきている。国内での競争力になる高度技能移民、国内産業の下部構造に組み込まれている外国人労働者確保の必要性が背景にある。

前者に関しては、IT系を中心に国際的に優秀な人材の争奪戦が起こっており、受入国はいい条件を提示しなければ彼らに国内で定着してもらえない

後者に関しては、日本に見られるように低賃金労働による「搾取の構図」が固定化されている。そのため、国際人権レジーム等によって方針に則った基本的人権の尊重が強く求められるようになってきている。基本的人権の尊重はもちろんのこと、行政による社会への統合も強く期待されている。

日本では技能実習生等が労働に従事するために数多く流入してきているのにも関わらず、統合政策が不十分で、権利保障が出来ていない。「非移民国」を掲げているのにも関わらず、前述のような労働力に頼る、政府の「ご都合主義」も限界が近い。

難民の受け入れも国家の果たすべき責任といった考え方の風潮が拡大している。EU圏では、条件のいいドイツなどを目指して多くの難民が流入してきており、その第一歩として移民管理の緩いイタリアに難民が集中している。

人道危機と移民排除という相容れない要素が交錯しているが、人権保護の潮流は法的な整備を伴って進んできている。こうした動向により移民の権利は拡大しており、受入国内の政治参加者を多様化させている。

それに付随し、国籍法問題も浮上している。二重国籍の国民も増加し、2つの国籍の存在によって悩まされる大坂なおみ選手のような個人のアイデンティティの問題が取り上げられることも増えてきている。

関連して、国籍選択制度等の整備の必要性も問われている。国内の多様性という意味では移民集団が「チャイナタウン」などのエスニックタウンを作り、独自の経済圏を形成するような例も見られている。ナショナリズム的動きとグローバル化という、相反する動きが同時進行している。

頭脳流出

送出国での1つ目の変化の一例目は、勢いが増す頭脳流出だ。生計を立てるために海外への出稼ぎを強いられる移民労働者だけでなく、その国の産業においての「競争力になるようなスキルを持った人材も良い豊かな生活や条件を求めて国外へと流出していってしまう事」を総称して「頭脳流出」という用語が使われる。

マレーシアでは、中国系のルーツを持つ人材が社会での違和感から国外で職を探す傾向にある 。流出の要因は国内にもあるということだ。

頭脳流出は送出国側にとって大きな損失のように見える。だが、国境を超えた環境で実力をつけ、人材が母国に将来戻ってくることもある。そういった人材の中には、海外で起業に大成功し、現地での雇用創出に貢献するような人材も見られる。この現象は「頭脳循環」と言われる。

このサイクルの維持のために、自国の有能な人材との関係性を途切れさせないという意味合いで、二重国籍が役立てられている。二重国籍者は、出身国とホスト国の架け橋となる。多国籍企業が社員を国外に転勤させようとする際にはビザの取得が必要だ。その手続は二重国籍があることで大幅に簡略化されるため、社員にとっての挑戦の機会が増え経済活動にプラスの効果をもたらす 。外国人材活用という国際社会の流れを汲んでいるといえる。

送出支援

二例目は、移民政策の一部である送出支援の必要性の高まりだ。送出国政府は、労働者たちの労働環境や労働条件を保護するよう受入国に求める。具体的には、虐待などによる人権侵害から自国民を守るために二国間協定を結んだりしている。移民自体の数が増えることによってこのような政府からのアクションを求める声は高まっている。

その一例としてフィリピン政府が挙げられる。移民たちは「輸出品」と捉えることも可能であるため、有用な人材を送り出す際には、それ相応の受入国側での対応を強気に求めることも出来る。政府の海外雇用庁がそういった人材の送り出しには責任を持っている。だが、いわゆるエリート人材以外の生活支援や権利について受入国側に強く願い入れをするのは難しいという現実がある。

最後に

ここまでの内容から見て分かる通り、一つの変化について着目すると芋蔓式で次々と関連している要素が出てくる。そして変化と変化の間に存在する関係性、相互作用についても考えなくてはならない。一つの観点に固執してしまうと見えなくなる要素がある。移民という大枠自体は、極めて複雑でかつ多層的な性質を持っていると言える。

そこであえてまとめるとすれば
「二極化」
「相容れない」
が外せない単語となる。

豊かさを求めて移動する高学歴のエリート移民と厳しい状況の中生計を立てるために出稼ぎに行く移民労働者からは、移民の特徴の「二極化」が見られる。簡単に言うならば、資本主義においての上部と下部への「二極化」として捉えられる。

高度技能移民への権利の拡張と、技能実習生への構造化された搾取の継続は「相容れない」問題だ。排外主義に象徴される内向きの動きのナショナリズムとグローバル化の影響でどんどんと当たり前になっていくトランスナショナリズムも「相容れない」性格だ。

移民排斥を掲げる政治と移民労働者なしでは成り立たない産業構造にも「相容れない」矛盾が見られる。

入国管理を徹底しないとテロから自国を守れないという安全保障上の問題と、人道的理由から難民を見捨てるわけにはいかないという問題も「相容れない」性格を持つ。

まとめとして、このような「単純な」解釈を提示してみた。しかし、短絡的な発想で諸問題について理解したつもりにならず、根本を見つめ、認識することの重要さを忘れてはならない。複雑な諸問題の本質を見出し、解決へと進んで行く必要がある。


最後まで読んでくださってありがとうございます!
また次回のnoteでお会いできるのを楽しみにしています👋

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