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おいしい温度。燗の利き酒Vol.3『白岳仙/辛口純米/真紅』

日本酒は、自分の魅力と特性を最高の形で表現してくれる温度を求めている。

「同じ日本酒で、燗の温度を変えると味わいがどれほど変化するか」を試す『おいしい温度。燗の利き酒』シリーズの第3段。

このシリーズを始めたきっかけは、別の記事で書いたとおり、『赤武』の生酒を温めて飲んだら予想以上に美味しかったこと。燗付けの技術、知識面ともに素人同然の「燗」の世界にしっかり足を踏み入れてみようと思いました。

1.  銘柄選定

福井県福井市にある『安本酒造』さんの醸されるお酒。

こういう事態とあって最近はオンラインで日本酒を購入しており、その1本がこの『白岳仙/辛口純米/真紅』。

先日冷やして頂いた際、飲み口が所謂「辛口」のお酒ながらも、お米の旨みと柔らかい酸味をしっかりと感じ取れる、「味わいの変遷」を楽しめるお酒であったことから、燗にした時の味わいの変化を確かめたいと思い、選定させて頂きました。

裏ラベルの写真です。
福井県産の五百万石を100%使用。

2.  用いた酒器等備品、及び燗付け方法

1) 酒器
・8勺サイズの利き猪口(磁器)
・2合サイズの徳利(磁器)

2) 温度計
TANITAの料理用デジタル温度計(計測温度帯:-50℃~250℃)

3) 燗付け方法

・鍋にお湯を沸かし、沸騰寸前の90℃超で火を止める。

・徳利にお酒を注ぎ、徳利ごと鍋の中へ浸け湯煎。

・デジタル温度計を徳利内のお酒に浸け、温度が58℃になったところで鍋から徳利を引上げ、利き猪口に注いで利き酒。

・利き猪口は予めお湯を張って事前に温めておく。注いだ際の温度低下を防ぐため。

・また、以下の温度別利き酒では、「55℃から始めて5℃刻みで温度を自然に下げていき30℃まで試す」というのを2回やっています。この2回目の利き酒では、シリーズ初回でご紹介した『龍力』の蔵元 本田様より教えて頂いた、「一度飛びきり燗(60℃付近)まで上げて一度冷まし、再度温度を上げるとまた違った味わいになる」との貴重なアドバイスに従ってみました。

3.  利き酒結果 

以下は、上記の通り湯煎で燗付けした日本酒を55℃から順番に5℃刻みで自然に冷ましていき、下は35℃までの温度帯で利き酒した結果。

前回は60℃から始めたのですが、個人的には口に含む際のアルコール感が強すぎて味わいを確かめに行けないと感じ、今回は55℃スタートにしています。

また30℃日向燗は、これまでの利き酒からどうも輪郭がボケてしまう気がして、今回から外しています。

55℃=とびきり燗 結果:○
入口はアルコール感の中にもお米の甘さを感じる。口に含むと、入口の香りの想像とは違い、辛さを感じる。

旨味も酸味もあるが、苦味が表に出る。

50℃=熱燗 結果:○
入口のアルコール感がやや弱まると同時に、口に含んだ際の柔らかさが出てくる。お米の旨みが少し広がったと思った直後に酸味と苦味のキレがやってくる。

苦味が前面に出ながらも、裏に旨味と酸味を感じる。

45℃=上燗 結果:◎
口に含んだ際の柔らかさが少し増す感じで、55℃、50℃よりも飲みやすい。
不思議と苦味が少し後方へ下がる感じがあり、代わりに柔らかい酸味とお米の旨みの融合を感じる。

これは美味しい。

40℃=ぬる燗 結果:○
飲み口の柔らかさは、45℃と同じ。
45℃に比べて酸味が前面に出てくる。この酸味感は、どんな食事でも受け止めてくれそう。

35℃=人肌燗 結果:○
入口から酸味を感じるようになる。飲み口の柔らかさは健在、お米の旨味も優しく感じる。

酸味が前面に出てくるところが気にならなければ、飲み口の優しさはこれが一番。

4.  総評 

苦味や酸味を前面に感じる、所謂「辛口」のお酒というのは、実はあまり個人的には得意ではなくこれまでそんなに飲んでこなかったんですが、

味覚の幅を狭めるのも良くないと思い、最近は見かけたら買ってきて飲むようにしてます。

これまでの燗の利き酒では50℃から55℃あたりの熱めの温度帯が一番美味しいと感じたのに比べ、今回はそれより少し低い45℃あたりの味わいが一番美味しく感じました。苦味が少し後ろへ引く代わりに酸味の柔らかさがお米の旨みにきれいに乗ってくるような、絶妙なバランス感を感じました。

飲み口は一貫して、キレのあるドライなお酒ながら旨味と柔らかい酸味も感じる。その不思議な味わいは、冷やして飲んだ時も燗で温度帯を変えた時も、変わらずそこにいる気がして、これは面白いなと思いました。

この特徴的なお酒の味わいは、完全ブラインドで飲んでも温度帯を問わず当てられるかも知れません。それくらい、「顔」の輪郭がしっかりと分かるお酒だなと思います。

面白いなーって思います
こんなお酒もあるんだと、勉強になりました。

ごちそうさまでした!



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