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丁寧な梱包を解いて、日本酒の繊細な時間と繋がり直す。

新型コロナが世界を席巻して以降、ぼくの自粛は日本酒のオンライン購入から始まりました。

それまでは、日本酒愛に溢れる居酒屋さんや酒屋さんの話を聞きながら楽しむのがぼくにとっての日本酒だったんですね。

人生で初めて日本酒をオンライン購入した際には、ちゃんとした状態で届くかなーって不安もゼロでは無かったんですが、その不安を大きく裏切るような丁寧な梱包で大事にやって来て、

その姿を見たときに、お気に入りの日本酒が届いてそれを口にできる喜びを上回るぐらい、その丁寧な心が無性に嬉しかった。

と思ったら、感染リスクの不安を抱えながらぼくの家まで丁寧に運んでくれた宅急便配達の方、そもそも困難な状況下で丁寧に日本酒を造ってくれた方々、注文があるまで丁寧に保管し丁寧な梱包を施してくれた酒屋さん、そして酒米を丁寧に造られた農家の方々などが頭に浮かんできて。。

あ、これは、奇跡の積み重ねでぼくの元に届いたんだって、胸に来るものがあったんですね。そのことを過去に記事にしました。

今回は、ぼくにとっての新たな日常となった日本酒オンライン購入において、丁寧な梱包を解いていく過程で感じたことを書いていきたいと思います。

購入先は大阪にある酒専門店の『鍵や』さんです。


日本酒オンライン購入で届く丁寧な梱包

今回は4合瓶(720ml)を4本購入。ダンボール箱でクール宅急便で届きました。いつものヤマトの配達員さんがとっても感じの良い方で、受け取る段階から嬉しい気持ちに。


梱包を解いていきます。中はこんな感じ。4合瓶が最大6本入る箱に4本の日本酒。空きの2本のスペースには紙の緩衝材。


日本酒を取り出しました。仕切りも段ボール紙で頑丈。見えにくいですが、底には輸送時の振動・衝撃を吸収する白い緩衝材が敷かれてます。

真ん中の空白2本分を埋める紙を丸めた緩衝材。結構分厚めの紙で安心感があります。これが空白スペース1本分あたり3つずつ、合計6個詰まってました。

底を覗くために、緩衝材を取り出していきます。

底にある白い緩衝材。

取り出してみるとかなりの厚みがあることが分かります。これならばっちり大切な日本酒を守ってくれそう。


プチプチの緩衝材に巻かれた日本酒たち。ご対面はもうすぐのドキドキタイムです。

プチプチの緩衝材を剥がすと、さらにラベルを保護するための養生シートが巻かれてたり、もう一重袋に入ってたり。
こういう丁寧な心配りがほんとに嬉しいんですよね。ラベルはその日本酒の顔なので、とっても大切。

全ての緩衝材を取り除いてついにご対面。みんな、いい顔してます。クール宅急便で運ばれるような繊細なお酒たちなのでほんとはすぐにでも冷蔵保存すべきところ、美しい顔立ちをつい眺めてしまう、うっとりタイム。

丁寧な梱包にある丁寧な心配りが、ぼくと日本酒を繋げてくれる瞬間です。


日本酒の繊細な時間に繋がり直す

この丁寧な心配り、ぼくには日本酒への愛情そのものにしか見えないんですね。もっと言うと、日本酒への愛情以上の価値があると思ってます。

日本酒は、お米と水と微生物(麹菌、酵母)という極めてシンプルな素材だけで、信じられないくらい美しい味わいを表現できる。そんな酒造りに携わる造り手の技の背景には、日本酒が一つのプロダクトとして世に出るまでに存在した膨大な手間ひまと時間の積み重ね、歴史があるわけです。

8世紀前半に編纂されたと言われる『播磨国風土記』には、「神さまにお供えしたお米(おこわ)にカビが生えたらお酒が醸された」といった記述があって、そんな遥か昔から、「腐敗」と「発酵」の境目を綱渡りしながら、お酒を造ってきたわけです。

「腐敗」と「発酵」の境目を注意深く観察していると、腐敗どころか、むしろ旨みが増して美しい繊細な味わいが現れた。何なら保存性も担保されている。その方法を選りすぐって、伝承して、再現可能なように体系化して、それをまた伝承して。

例えば米麹造り。麹菌が米の中に菌糸を張り巡らせて、米の中にあるデンプン質を食べてエネルギーを吸収する。その吸収過程でデンプンが糖分に分解されるんですが、腐敗の原因になる雑菌は糖分が大好き。それに加えて、麹菌そのものがとても繊細だから、他の雑菌にすぐにやられてしまう。

だから、米麹を造るには麹室(こうじむろ)という特別な密室を作って外界と隔絶して、空気の乾燥した寒い時期、つまり雑菌の少ない時期を選んで細心の注意を払いながら、きっちり時間を計って完成させていくんですね。

そういう繊細な技を、自然と人(社会)が交差する日本酒造りの場で一つ一つ、地道に積み重ねてきた。


そんな、気の遠くなるような膨大な時間と手間によって形になった日本酒が目の前にある。

丸められ丁寧に敷き詰められた紙を手にして、底に敷かれた厚みのある緩衝材を手に取って、瓶のラベルを保護する養生シートを剥がしていると、そのような掛け替えのない時間の積み重ねとその貴重さが、何かもう言葉に出来ないくらい大切なことに思えてきて。

オンラインで購入した日本酒。

その丁寧な梱包を解いていくと、日本酒に流れる貴重で繊細な時間と繋がり直したような気がしました。

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