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おいしい酒器。利き酒Vol.5『阿部勘/純米吟醸/吟のいろは』

自分の魅力と持ち味を最高の形で表現してくれる器。日本酒は、そんな酒器を求めている。

同じ日本酒で、酒器を変えると味わいがどれほど変化するのか。酒器を代えて利き酒する、「おいしい酒器」シリーズの第5弾。

酒器が変わると味わいも相当変化する。

日本酒の美味しさの本質は「味わいの重なり模様」にあると思っているぼくは、普段日本酒をワイングラスで飲む(『リーデル』というグラスメーカの脚なしタイプ)。ワイングラスで飲む理由について詳しくは以下記事の通り。

そんなぼくの個人的嗜好は一旦置いておいて、他の酒器で飲むと味わいや香りが具体的にどう違うのか試してみた、その記録。

1.銘柄選定の基準

今回酒器別のテイスティングに選んだ銘柄は、『阿部勘/純米吟醸/吟のいろは』。

選定理由は、これまでの4本は単体でも十分楽しめるお酒だったため、「食中酒」寄りのお酒で試してみたかった。(注釈:ほんとはラベル格好良いし、気になって仕方なかった銘柄なのに飲んだことなくて、酒屋さんで見かけてそのままご購入。。)

【基本spec】 
原料:米、米麹
製造時期:2020年2月
造り:純米吟醸
使用米:吟のいろは100%
精米歩合: 50%
アルコール分:15度


2.用いた酒器と選定の基準

今回用いた酒器はこれまでと同じく以下一覧表の5種類。

1)普段は①のワイングラスで飲んでいるので、これがぼくの標準。

2)②利き猪口だけ磁器になるが、これは利き酒の一般「標準」酒器。ぼくの「標準」である①ワイングラスとの差異を知る目的。利き猪口のサイズは①ワイングラスの口先口径と同じぐらいの8勺(1合の8/10)を使用。

3)②以外の素材は全てグラスで揃えた。素材は同じ条件で、形状が違うだけで味わいがどれだけ変化するのかを見るのが目的。

3.酒器別 利き酒の結果

①ワイングラス 結果:○
上立香は、瓜を思わせるフルーティな香り、奥の方にほのかな酸味を感じさせる。

口に含むと厚めのお米の甘みと旨みが、柔らかく優しい酸味と苦味に乗ってバランスよく大きく口の中に広がる。

甘みの上品さを失わないまま綺麗に静かにキレていく。

味わいの重なり感はこれが一番だと思うが、余韻での苦味が少し気になるか。ただ、舌の前面に暫し感じる酸味の余韻といい、全体的に美味しい。

②利き猪口 結果:◎

入口の瓜の香りはやや弱くなる。
ワイングラスに比べて苦味が出てこない分、酸味の柔らかさが前に出てきて、お米の甘みの上品さを伝えてくれる。

ワイングラスに比べてキレも柔らかい。
こっちのほうが酒質に合っていると思う。

③天開グラス 結果:○
上立ち香はほぼなくなる。
口に含むと、柔らかい酸味が前に出てくることで甘みとの融合感を感じる。甘みの美味しさが舌の上に留まり楽しませてくれる。
余韻で少し苦味を感じるが、気にならない程度。
飲み口として軽やか。飲みやすい。

④カクテルグラス 結果:○または△

上立ち香は感じない。
口に含むと、お米の旨みと甘みが軽快さを帯びる。くどさを感じないのは、酸味と苦味がギリギリ表に出てこないところのバランスでしっかりと下支えになっているからだと思う。

他の酒器に比べて飲み口がやや軽快過ぎる気がするが、その分旨みと甘みだけを軽やかに楽しめる。

⑤シャンパングラス 結果:×

上立ち香はほぼない。
口に含むと苦味が前面に出てきて、甘み旨みを上回ってしまい、バランスが崩れている気がする。辛口好き、アルコールの刺激が気にならない人であれば向いているかも知れないが、本来のこのお酒の特徴は感じられないと思う。


4.総評

全体のバランス感では利き猪口が一番良い。

入口の香りを楽しめるのは想定通りワイングラスが一番だが、「純米吟醸」ながらこのお酒の特徴は上立ち香というより、むしろお米の旨みと甘みにあると思う。その点、利き猪口がこの特徴を一番綺麗に見せてくれる気がする。

ただ、シャンパングラスはバランスが崩れているとして、その他の酒器はそれぞれ違った良さを見せてくれるため、ほんとは甲乙つけがたい。

これ、実はすごく良く造られたお酒なのかも知れない。幅広い食事との組み合わせが楽しめそうと言う点において食中酒よりなお酒だと思うが、一方で表情が素晴らしく多彩だと感じた。

こういう実力のあるお酒は、酒器をあまり選ばないのかも知れないです。

ちなみに最後に熱燗にしてみたところ、これがまた素晴らしく美味しかった!温めることで、お米のど真ん中にある旨みと甘みを、今度はまろやかさを持って表現してくれました。

こういうすごいお酒、あるもんなんですね。

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