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おいしい温度。燗の利き酒Vol.9『二兎/純米吟醸 生酒/山田錦 五十五』

日本酒は、自分の魅力と特性を最高の形で表現してくれる温度を求めている。

「同じ日本酒で、燗の温度を変えると味わいがどれほど変化するか」を試す『おいしい温度。燗の利き酒』シリーズの第9段。

今回は、愛知県 丸石醸造さんの『二兎』。以前にどこかの居酒屋さんで飲んだ際、綺麗な飲み口をベースとしながらも味わいの重なり模様を楽しめる面白いお酒だなという記憶があり、

今回は上記とは違う造りながら同じ銘柄が家にあったため、燗にしたらどんな味わいになるのか興味があり試してみました。

燗付けの方法は、千葉麻里絵さんの日本酒本にあった以下のアドバイスに従ってます。

1)「温度を5度刻みで上げていき、その都度香りを確かめる」

2)「その香りの変化を体感する」

3)「燗酒の出来上がりは香りの変化で判断する。温度を上げていくと炊きたての米のホクホクした香りが立つ瞬間がある」

4)「そこで急冷しながら再度ゆっくり加熱すると少し甘い香りが立ちのぼる。その瞬間で引き上げる」

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詳細は以下の通りです。

1. 銘柄選定

愛知県 丸石醸造さんの『二兎』。冒頭記載の通り、以前飲んだ際に、綺麗な飲み口をベースとしながらも、口に含んだ後の味わいは「このお酒の特徴はこれです!」と簡単に一言では表せない複雑さと面白さを感じ、燗にしたらどうなるのか試してみようと思いました。

冷やして飲んだ味わいは以下の通り。ちなみに生酒です。

入口は、奥の方にほのかに感じる華のある香りを、輪郭を伴ったシャープな酸の香りが引き締める。
口に含むとなだらかに膨らむお米の甘みを、柔らかく綺麗な酸味がなだらかに包んで沈めていく。
静かで綺麗な飲み口をベースとしながらも、旨みの膨らみ感を持つお酒。良い意味で単調ではない味わいの重なりと複雑さを持ちながら、綺麗な飲み口によって重さを感じさせない。
この貴重な味わい、その特徴を決して一言では表現させない、というこだわり。


造りに関するラベル写真です。

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2. 用いた酒器等の道具と燗付け方法

1) 道具
・8勺サイズの利き猪口(磁器)
・ちろり(アルミ製)
・温度計:TANITAの料理用デジタル温度計

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2)燗付け方法

ちろりに入れたお酒を鍋で湯煎。詳細は冒頭に記載の通りで、温度を上げながら5℃刻みで香りを確かめました。

ボウルに張った氷水で急冷し、その後再度温度を上げるという方法を採用してます。

燗および急冷の温度帯は以下の通りです。

3. 利き酒結果

上記の通り、温度を上げながら5℃刻みで都度香りを確認してます。

30℃を超えたあたりからお米の甘い香りが徐々に膨らんでくる。35℃あたりで一度利き酒するも、もう少しお米の甘みが欲しい気がして少し温度を上げてみる。

40℃あたりで甘さの香りがピークを迎えた気がして引き上げ。30℃まで氷水で急冷。再び40℃あたりまで上げる。

冷やした時に比べて、十分膨らんで表に出てきたお米の甘さを前面に出てきた酸味が引き締めるバランス感が最高に美味しい

この40℃あたりの味わいから、生酒ながら全面的に燗に向くお酒だという直感があり、少し高めの温度帯で再度試してみる。

今度は45℃あたりまで上げた上で35℃あたりまで急冷。再び45℃付近まで温める。

40℃付近に比べると甘さがほんの少し後退する代わりに、アルコールの香りや酸味を含めた全体の膨らみ感をベールにした「お米のほくほく感」を感じる

甘みと酸味の絶妙なバランス感を求めるなら40℃あたり。お米の炊きたてほくほく感を感じるにはもう少し高めの45℃超えあたりが良いと思う。


4. 総評 

これだけ湿気の高い季節に飲んでも、燗は全然美味しいと感じます。

飲むとホッとする感じあって、むしろ湿気の高い季節だからこそ、身体がこういう温かい飲み物を「栄養」として求めているような実感さえあります。

冷やして飲んだ際、グラスに注いだ後少し置いて常温に戻る過程で感じた甘さと旨みの膨らみ感は、燗にすることでさらなる豊かさを見せてくれました。

温かい温度の中で表に顔を出すお米の甘さが、同じく温めることで存在感を増す丁寧な酸味で引き締められる。そのバランス感がたまらなく美味しいと感じました。

丁寧に造られた実力のあるお酒は、生酒であっても燗にして美味い。
美味しい日本酒の褒め言葉は、「何をやっても美味しい」だと改めて認識させられるお酒でした。

ごちごうさまでした!




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