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おいしい酒器。利き酒Vol.10『風の森/露葉風807』

自分の持ち味を最高の形で表現してくれる器。日本酒は、そんな酒器を求めている。

同じ日本酒で、酒器を変えると味わいがどれほど変化するのか。酒器を代えて利き酒する、「おいしい酒器」シリーズの第10回目。

酒器が変わると味わいも相当変化する。

日本酒の美味しさの本質は「味わいの重なり模様」にあると思っているぼくは、普段日本酒をワイングラスで飲む(『リーデル』というグラスメーカの脚なしタイプ)。ワイングラスで飲む理由について詳しくは以下記事の通り。

そんなぼくの個人的嗜好は一旦置いておいて、他の酒器で飲むと味わいや香りが具体的にどう違うのか試してみた、その記録。

1.銘柄選定の基準  

今回酒器別のテイスティングに選んだ銘柄は、『風の森/露葉風807』。

「無濾過生原酒」は、もはや完全に市民権を得た気がしますが、この『風の森』はそのトップランナーと言える銘柄だと思います。

奈良の油長酒造さんが造られる『風の森』ラインナップは、「無濾過」「無加水(原酒)」「生酒」のスペックで造られてます。造りのこだわりは、「つぼみのままお届けする」が狙いとのことで、開栓直後だけでなく2回目、3回目と飲むほどにつぼみが開いて美味しさが顔を覗かせる様子を楽しんで欲しいとのこと。

味わいの詳細は、以下3項「酒器別利き酒結果」の①ワイングラスを参照下さい。入口の炭酸ピチピチ感から「繊細さが生命線」と思わせながら、しっかりした甘みと酸のバランス感、原酒の重さを感じさせない丁寧な造りは圧巻。衝撃的に美味いお酒です。

ちなみに「露葉風」は奈良の酒米の名前。「807」は、精米歩合「80」%(20%だけ磨いた状態)で、「7」号酵母の意味です。

2.用いた酒器と選定の基準  

今回用いた酒器はこれまでと同じく以下一覧表の5種類。

1)普段は①のワイングラスで飲んでいるので、これがぼくの標準。

2)②利き猪口だけ磁器になるが、これは利き酒の一般「標準」酒器。ぼくの「標準」である①ワイングラスとの差異を知る目的。利き猪口のサイズは①ワイングラスの口先口径と同じぐらいの8勺(1合の8/10)を使用。

3)②以外の素材は全てグラスで揃えた。素材は同じ条件で、形状が違うだけで味わいがどれだけ変化するのかを見るのが目的。

3.酒器別利き酒結果 

①ワイングラス 結果:◎
上立香は、パイ生地に乗せるコンポートのようなリンゴやパイナップルを思わせる、厚めの甘酸っぱい香り。

口に含むと、ふくよかな甘みと旨味が綺麗な酸味と微炭酸に乗っかって口の中一杯に広がる。

この露葉風は色んな味わいの重なりがあって、味わいにふくらみを感じる。

こういう「繊細さ」が生命線のお酒は、開栓直後が一番美味しいはずと思い込んでましたが、しばらく置いて温度を少し上げて空気に触れさせたくらいが一番美味しいかも知れない。旨味がさらに重なるように口の中に広がります。

酸味が柔らかく、とことん綺麗なおかげで、これだけの旨みと甘さが有りながらくどさを全く感じさせないところに実力を感じる。

②利き猪口  結果:◎
味わいは、ワイングラスとほぼ同じながら、酸味がさらに柔らかく感じる。グラスでは味わいに輪郭が出るのに対して、磁器では少し柔らかくなる。酒器の素材の違いだと思う。

上立香が特徴のお酒ではないので、利き猪口で十分美味しい。

③天開グラス 結果:◎
全体的に飲み口の柔らかさを感じる。

お米の甘みと旨みの広がり、酸味とのバランス感も素晴らしい。特徴であるまろやかさも引き立つようで美味しい。

④カクテルグラス 結果:○
旨み感が少し後退するが、十分美味しい。低精白米なのに雑味がないんですね。このグラスだと通常は入口で苦味を感じやすいが、苦味をほぼ感じない酒質のために嫌さが全くない。

やっぱり酸味が特徴のお酒なんですね。グラスをら変えても酸味がしっかりあるから味わいのバランスが崩れない。

⑤シャンパングラス 結果:◎または○
味の膨らみ感はこれが一番。旨味がこれ以上ないほどに口の中に広がる。
嫌な要素なし、少し苦味を拾ってくるが、甘さと旨みのしっかり感と相まって嫌な感じはしない。美味しい。酸味もより一層柔らかい。

4.総評 

丁寧に造られた実力のあるお酒は酒器さえも選ばない、という事実を改めて認識させられる結果でした。

80%の低精米とは思えない、抜群の出来栄え。繊細さが生命線のお酒と思い込んでいたところ、温度を少し上げて空気に触れさせるとさらに美味しい。

酸味が柔らかく、とにかく綺麗でしっかりしているので、どんなグラスでもいけるということだと思います。とにかくグラスを変えても、温度を上げても甘さと酸味のバランス感が失われないのには驚きました。

風の森が美味しいのは知ってたつもりでしたが、ここまですごかったとは。これはもう、ラインナップの全てを飲んでみるしか無さそうです。

ごちそうさまでした!



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