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今日から、私は、要らない人材

(Twitterはこちら → @yanagi_092)
※このnoteは、毎週土曜の夕方に投稿しています

年収

13年目になりました。前回記事のとおり、ここから会社人生の崩壊が始まります。初めにお断りしたいのですが、当時在籍していた東京海上に対して、何か恨みがある訳ではありません。ただ、私の経験した苦難や葛藤が、多くの人の参考になるのではないかと思っています。

そう、日本型終身雇用の会社においては、ほとんどの人が何処かのタイミングで出世競争から脱落し、私と同じような絶望を経験する可能性があるからです。

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今日、私は出世のレールを外れました

東京海上においては新たな人事制度への移行があり、各従業員に対して新制度におけるランクの通知が行われました。

私は2年前に旧制度で「次世代リーダー研修」の選抜をクリアしていましたので、新制度においても出世の壁を越えたランク(StageE)になると思っていましたが・・・

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上司「申し訳ないが、やなぎくんはStageD(出世の壁を越えてないランク)ということになった」

ぼく「えっ・・・」

上司「組織の都合もあって、君をしっかり人事に推せていなかった・・・、申し訳ない」

ぼく「・・・(混乱して言葉が出ない)」

その日は、席に戻っても仕事になりませんでした。頭が回って吐き気がして、手から汗も噴き出すような状況でした。

ぼく「えっと、今の段階で出世の壁を越えていないということは、、出世は4年以上も大幅に遅れた認定ってこと?奴隷確定ってこと?えっ?ええぇぇぇ??」

地獄


周りの人達に申し訳ない気持ち

当時、新人事制度のランク区分については、各従業員へ個別に伝えられたのみで、全店通知で公表された訳ではありませんでした。したがって、同じ課長代理でもStageDなのかStageEなのか分からない状態です。

周りの人達は悪気無く「やなぎくんはStageEだから・・・」と言うのですが、「いや、実はStageEから落とされました」とは言えず、本当に辛かったです。

そしてある日、同僚から相談を受けます。

同僚「あのさ、相談なんだけどさ、StageEの人事評価シートなんだけどさ」

ぼく「ごめん、、、実は、、、俺、落とされたんだ」

同僚「えっ・・・、どういうこと・・・」

このように、「やなぎは当然にStageEだろう」という暗黙の空気があって、上記のような交通事故(笑)も発生しました。何だか本当に情けなくて、どうしていいか分からない日々を過ごすうちに、会社に行くのが苦痛になってきました。

「会社に行きたくない・・・」、こんな経験は初めてです。姫路損害サービス課に勤務していた頃は、暴力団事務所に示談のアポがある日も、元気に出社していました。ストレス耐性には自信のあった私ですが、初めて会社に行きたくなくなりました。

ぼく「このままではマズいぞ、なんとかしないと・・・」

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カウンセリングを受けてみる

なぜこんなに苦しいのだろう、何に苦しんでいるのだろう、他人からの見え方が辛いのだろうか・・・ 私は、自分自身を見失っていました。そして、こういったことは専門家を頼った方が良いと思い、心理カウンセラーに相談してみました。

カウンセラー「話を伺っていると、やなぎさんは無名高校から多大な努力で大学に合格して、それ以降はずっと昇り調子の人生を歩んでこられたようですね。多少の浮き沈みはあったと思いますが、常に上昇し続けてきたように感じます。そして今回、初めて大きな挫折を経験されようとしています」

カウンセラー「ずっと昇り続けた人が、初めて経験する下降。ここから先、どれだけ落ちていくか分からない、どれだけ深い谷なのか見当もつかない。だって、ずっと昇ってきたから。そして、これは本当に辛い試練であることを認識された方が良いと思います。他人は『そんなことがストレスなの?』と言うかもしれませんが、ずっと昇り調子だった人にとっては、とてつもないストレスになります」

カウンセラー「実は、私も日系企業の出身なので、お気持ちは分かります。日系企業では会社が人生そのものに思えてきて、『出世=良い人生、それ以外はダメな人生』といった錯覚を生み出します。そして、この内向きな錯覚が、日系企業の非生産的な過重労働を生み出しているのかもしれません」

カウンセラー「私は、何人かの副社長などの役員と対話をしたことがあります。そして、皆さん口を揃えて同じことを言っていました。それは何だと思いますか?」

ぼく「それは、、、お話の流れを踏まえると、大出世して良い人生だったのではないですか」

カウンセラー「いえ、違います。全員が『なぜ社長になれなかったんだ、なぜ・・・』と悔やむように話され、全く納得していないご様子でした。そして、私からすると、やなぎさんも社長になれなかった役員と同じことで悩んでいらっしゃるように見えます」

カウンセラー「周りの評価を気にして、色々なことを犠牲にして、多くのことを我慢し続けて、実際に出世できないことが分かると不満が爆発する。それは、やなぎさんの話も役員の話も同じなのです。ただ、やなぎさんは不幸にも、そのタイミングが早かっただけ。一方で、早かった分だけ、やり直しができるのも事実です」

カウンセラー「やなぎさんは、若い頃から『優秀だ』と褒められることも多かったのではないですか。そのような方は、『会社で優秀と評価されること』が、強いアイデンティティになっていきます。それは、優秀と言われる期間が長いほど、より強固なアイデンティティとなります。やなぎさんの心は『他人から優秀とよばれる自分』に強く依拠しており、今はこのアイデンティティを失いつつあって、どうしてよいか分からず苦しんでいるのではないでしょうか」

話を聞きながら、私は泣いていました。

苦しみの原因は、自分自身のアイデンティティを他人と会社に委ねていたこと。しかし、原因が分かっても、このような心理的要因は外科手術的に解決できるものではなく、長年の月日で築き上げられたアイデンティティを変えるのは、容易ではないことも教えられました。

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そして、この日から「自分のことは自分が一番分かっていない」ことを知ることができました。もっと自分の心の動きを理解しようと思い、心理学とか哲学とか仏教等の本を読み漁りました。もちろん、流行りのアドラー心理学もかなり読み込みました。

結局、どの本にも共通しているのは「自分の評価を他人に委ねるのではなく、自分を信任できるのは自分だけ」「周りの評価に怯えて過ごす人生は幸せなのか。どんなに頑張っても、1-2割は自分を嫌う人が居る」といったもので、全てが目からウロコでした。


それでも私は歩き続けたい

カウンセリングを経て、「苦しみの原因」を知ることができたので、会社に行きたくない病は解消することができました。しかし、日本型終身雇用の会社において出世を目指すには、完璧な八方美人を演じなければなりません。1-2割でも自分を嫌う人を作ってしまうと、「バランス感覚が悪い」という烙印を押されてしまいます。

私は、レールから落ちてしまいましたが、引き続き苦しみながらレールへの復活を目指すのか、それとも平穏な生活を送るのか、とても悩みました。そんなある日、Mr.Childrenの「GIFT」を聴いていました。

地平線の先に辿り着いても
新しい地平線が広がるだけ
「もうやめにしようか?」自分の胸に聞くと
「まだ歩き続けたい」と返事が聞こえたよ
- Mr.Children 「GIFT」-


そう、私の答えは「まだ歩き続けたい」でした。日本型終身雇用の会社において、レールからの脱落=完全な敗北です。一部の特例を除いて、敗者復活戦は存在しません。ここからの復活は奇跡に近い確率ですから、期待値的にも合理的な選択ではないことは分かっていました。

それでも、、、それでも、私は諦めきれなかった。まだ歩き続けたかった。そして、ここからは出世や人事評価に関する本を読み漁るのですが、何冊か共通して以下のことが書かれていました。

「人事評価に不満を言う多くの人は、人事規則すら読んでいない。なぜだ?? 大学受験の時は過去問を使ってしっかり研究して、傾向と対策を練っていたのに、なぜ!? もちろん、出世も大学受験も運の要素がある。とはいえ、過去問(人事規則)を使って傾向と対策を練れば、運の部分を少なくすることができる。自分は優秀だという自惚れが強い人ほど、人事規則を見ようとしない傾向がある」

まるで私自身のことを指摘されているような気がして、とても恥ずかしく思いました。しかし、「まだ歩き続けたい」と決めた私は、人事規則の分析を開始するのでした。

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(続く)

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