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2023年上半期の本ベスト約10冊
2023年の上半期は、色々本を読みました(上の画像はその一部です)。せっかくなので、2023年6月末までに読み終えた本(刊行年問わず)の中から、特に好きなものを選んでみました。
なお、2023年の読了・本関連ツイートはこちらにまとめました。あなたの積読拡充のお供にぜひどうぞ👇
※以下、全て敬称略&順不同。読了ツイートに感想を加筆しているものもあります。
※出版社名後に発行年を記載。
月面文字翻刻一例
川野芽生 著/書肆侃侃房(2022)
第65回現代歌人協会賞を受賞した歌集『Lilith』など、そのみずみずしい才能でいま最も注目される歌人・作家、川野芽生。『無垢なる花たちのためのユートピア』以前の初期作品を中心に、「ねむらない樹」川野芽生特集で話題となった「蟲科病院」、書き下ろしの「天屍節」など全51編を収録した待望の初掌編集。
月面文字翻刻一例
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) January 26, 2023
川野芽生 著/書肆侃侃房
これは危ない。心を全部持って行かれてしまう。まるで浮遊し続ける一方通行の幽体離脱。危ない、でもそうなりたくて川野作品を読んでいる節がある。
装幀も素晴らしくて、まるで月面に触れているみたい。月光と影を思わせる配色も素敵。#読了 pic.twitter.com/zO8vdgyqCU
『無垢なる花たちのためのユートピア』を読んだ時、この人が描く世界を好きになってしまうのは仕方ないよなぁと感じました。この、最高に居心地が悪くて居心地のいい浮遊感を知ってしまったら、もう逃れられません……。
老神介護
劉 慈欣 著/KADOKAWA(2022)
『三体』の劉慈欣、中国で100万部突破のSF短編集!
突如現れた宇宙船から、次々地球に降り立った神は、みすぼらしい姿でこう言った。「わしらは神じゃ。この世界を創造した労に報いると思って、食べものを少し分けてくれんかの」。
老神介護
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) February 4, 2023
劉 慈欣 著/KADOKAWA
言わずと知れた「三体」の著者による短編集。難解な作風なのかと思ってたけど、本作は知性とユーモアに溢れるエンタメ感満載。骨太で広大な世界観なのに親しみやすい雰囲気だし、短編集としての仕掛けに気付くと楽しい。翻訳の読み心地もよくて好きです。#読了 pic.twitter.com/6iWhvoKXNF
劉慈欣作品は本作と『円 劉慈欣短篇集』を読んだのですが、全作に共通してSF描写の迫力はもちろん“貧困層の苦難”や“一般の生活”がドキュメンタリー並みにリアルに描かれていて、凄みがあるなぁと感じました。それ故にまた更にSFの重厚さが増す……。
夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く
奈倉有里 著/イースト・プレス(2021)
「分断する」言葉ではなく、「つなぐ」言葉を求めて。
今、ロシアはどうなっているのか。高校卒業後、単身ロシアに渡り、日本人として初めてロシア国立ゴーリキー文学大学を卒業した筆者が、テロ・貧富・宗教により分断が進み、状況が激変していくロシアのリアルを活写する。
夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) February 8, 2023
奈倉有里 著/イースト・プレス
読みつつ心がぎゅっとなって最後はほろりと泣いてしまった。言葉は見えないものにも形をくれて繋ぎ止めてくれるから、そこに人が居ることを忘れたくないなぁ。言葉に魅了された人生を本で読むの大好きです。#読了 pic.twitter.com/rer9Fuq8zw
本作については、こちらのエッセイでも取り上げています。直接的に関係があるわけではないのですが、ロシア・フィンランドという土地柄から、連想した作品同士でした。
その昔、N市では: カシュニッツ短編傑作選
マリー・ルイーゼ・カシュニッツ 著/東京創元社(2022)
日常に忍びこむ奇妙な幻想。背筋を震わせる人間心理の闇。懸命に生きる人々の切なさ。戦後ドイツを代表する女性作家の粋を集めた、全15作の日本オリジナル傑作選!
その昔、N市では: カシュニッツ短編傑作選
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) February 23, 2023
マリー・ルイーゼ・カシュニッツ 著/東京創元社
ずっと焦がれてた本をやっと読めた。孤独感、シュールさ、ひんやりした幻想が本の隙間から溢れ出す。これは大好きな“奇妙な味”。もっと邦訳出て欲しい…。物語のモノクロの景色に合った装幀も素敵。#読了 pic.twitter.com/at8WgfW1mY
また、こちらのツイートに翻訳者の方が反応を下さり、嬉しい続報を教えて下さいました🙌
カシュニッツ「その昔から、N市では カシュニッツ短編傑作選」東京創元社を読んでくださり、ありがとうございます。気に入っていただけたようでなによりです。続刊、すでに翻訳準備に入っています。
— Shinichi Sakayori (@vergiss_nie) March 29, 2023
すべての、白いものたちの
ハン・ガン 著/河出文庫(2023)
アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の傑作が文庫化。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。
生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。
すべての、白いものたちの
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) February 25, 2023
ハン・ガン 著/河出文庫
“白いもの”の中を彷徨う、アンビエントミュージックを聴くように読んだ一冊。エッセイ、小説、散文詩…どれでもあってどこにも属せない浮遊感。だけど最後、自分が元居た場所に帰って来たと気付いてハッとする。それさえデジャブかのような。#読了 pic.twitter.com/GJX81TErad
白い世界の中にサッと散る赤が鮮明で残酷。それでいて飲まれるような白。不思議な雰囲気の本でした。
外国語の遊園地
黒田龍之助 著/白水社(2023)
はじめて手にする海外製品はときになぜかなつかしい。旧ソ連や東欧で出合ったさまざまな物をとおして、外国語の魅力を語る「物語」。
外国語の遊園地
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) March 28, 2023
黒田龍之助 著/白水社
言葉を探求する人のエッセイ好きかもな〜と思っていた所で本書を読み、やっぱり好き!となった。言葉を通して世界を見る、純粋でほわっとしたあったかい想像力、言葉との冒険譚。家にあるマルタの新聞やタイの硬貨を引っ張り出して眺めてしまう。#読了 pic.twitter.com/6XBx64dt83
中庭のオレンジ
吉田篤弘著 / 中央公論新社(2022)
やすらぎのひとときに、心にあかりを灯す21話の物語。◇オオカミの先生の〈ヴァンパイア〉退治◇ギター弾きの少女の恋◇予言犬ジェラルドと花を運ぶ舟◇天使が見つけた常夜灯のぬくもり……他
中庭のオレンジ
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) April 6, 2023
吉田篤弘著 / 中央公論新社
こんなに素敵な読み心地の短編集ある…?とうっとりした。図書館の中庭、土の中で眠る本、物語を宿すオレンジ…。夜の中でぼんやり読みたいお話が沢山。“物語に答えや終わりを求めない”の尊さを噛み締める一冊。装幀や挿絵、本のサイズ感も好き。#読了 pic.twitter.com/PDgBtYSbci
装幀や挿絵は、著者が担当しているとか。何と多才な……。
鏡の迷宮 パリ警視庁怪事件捜査室
エリック・フアシエ著/早川書房(2022)
19世紀、七月革命直後のパリで、下院議員の息子が夜会のさなか、突如身を投げて死んだ。父の遺志を継いで化学者から転身したパリ警視庁の若き警部ヴァランタンは、元徒刑囚で元治安局長のヴィドックの助けを借り、新政権を揺さぶるこの事件を捜査することに!
鏡の迷宮 パリ警視庁怪事件捜査室 エリック・フアシエ著/早川書房
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) April 14, 2023
舞台は1830年のパリ。糸を手繰り寄せるように明らかになる謎、ひっくり返る事実に、何度も息を飲んだ。そして、主人公なのに謎めいた警官・ヴァランタンの生き様が気になって仕方ない。続編も翻訳が出ますように…!#読了 pic.twitter.com/rkPeKdMKTH
『鏡の迷宮 パリ警視庁怪事件捜査室』を読む前に、ちょうどほぼ同じ時期のパリを舞台にした映画『幻滅』を観ていた。なので、パリの華やかさと混沌と貧富の差とあらゆる感情がないまぜになった熱量を感じながら読めたのもタイミングが良かった。そして本当に、ヴァランタンあなたって人は…。
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) April 14, 2023
作中、人物の聡明さを“知性を感じさせる広い額”、眉目秀麗な男性を“天使”って何度も描写していて「ああ、私は今、海外のお話を読んでいる…」という良さを噛み締めた。日本語ネイティブによる日本のお話も大好きだけど、ここでは無い何処かの誰かの言葉遣いが知れるのは翻訳物の楽しさの一つだなぁと。
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) April 14, 2023
ツイートで触れている映画『幻滅』は、19世紀フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの小説を原作にした2023年公開の映画です。当時のメディア戦略(今で言うダイレクトマーケティングや世論誘導など)を鮮やかかつ冷酷に描いた作品で、大変見ごたえがありました。
暗殺者たちに口紅を
ディアナ・レイバーン著/東京創元社(2023)
ナチの残党や犯罪者を標的としてきた暗殺組織〈美術館〉。暗殺業に40年を捧げた60歳のビリーたち4人は、引退の日を迎えた。記念のクルーズ旅行に出かけるが、彼女たちを殺すため組織から刺客が送り込まれてくる。生き延びるには、知恵と暗殺術を駆使して反撃するしかない。殺すか殺されるかの危険な作戦の行方は? 本国でベストセラーとなった極上のエンターテインメント
#暗殺者たちに口紅を
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) May 15, 2023
ディアナ・レイバーン著/東京創元社
シニアが活躍するお話が大好きなので、引退した60歳の女性暗殺者4人が古巣に命を狙われて…なんて聞いたらもう!知識と技術、人生の趣深さ、友情。目の前で動き出す彼女たちとの旅路、ドキドキハラハラの楽しい時間でした。#読了 (ゲラ読み) pic.twitter.com/3t0qcibCk3
シニア本の感想まとめはこちらにあります。
ループ・オブ・ザ・コード
荻堂顕 著/新潮社(2022)
疫病禍を経験した未来。WEO(世界生存機関)に所属する「私」は、かつて〈抹消〉を経験した国家〈イグノラビムス〉での現地調査を命じられる。謎の病とテロ事件に突如襲われた彼の国に隠された、衝撃の真相とは、一体。
ループ・オブ・ザ・コード
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) May 31, 2023
荻堂顕 著/新潮社
まるでハリウッド映画!疫病禍後の世界、張りぼての理想郷、抹消された国と価値観、アイデンティティ、其々の生き様…。過去と未来どちらに価値があるかはわからないけど、今自分が“死んでいない”のは足元の過去と頭上の未来のおかげ/せいなのかも。#読了 pic.twitter.com/OX5JOhhXEc
オレンジ色の世界
カレン・ラッセル著/河出書房新社(2023)
悪魔に授乳する新米ママ、〈湿地遺体〉の少女に恋した少年、奇妙な木に寄生された娘、水没都市に棲むゴンドラ乗りの姉妹……。不条理なこの現実を生き残るための、変身と反撃の作品集。
オレンジ色の世界
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) June 24, 2023
カレン・ラッセル著/河出書房新社
どの話も面白くて、永遠に続いて欲しかった本。山奥の幽霊、野生の木、沼地の女の子、竜巻、棺の中の遺体、荒海の死角…。人ではない/人智を超えた/人の想像力から生まれた存在との“中間地点”の関係を描く物語にゾクゾクした。とても好き。#読了 pic.twitter.com/HpgnGoyjTk
もう一度記憶を消して読みたい本。
約10冊だから11冊あってもいいよね!と開き直って選びました。どの本もとても好きですし、ここに挙げていない本も含め好きな本を見つけられるよい2023年上半期だったと思います。
後半戦でも、自分にとって良い本との出会いがあれば嬉しいですね。
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