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山田邦明『クリエイター1年目のビジネススキル図鑑』KADOKAWA

1,000人以上のクリエーターと対話を繰り返す中で、心から創作を楽しんでいる人の共通点が分ったと著者は言う。それは、自分自身の「創作」に「ビジネス」も含めることができていることであった。

反対に「ビジネス」に「創作」を含め、「成功するために創作をする」「有名になるために創作をする」と、「創作」が手段になってしまい、苦しんでしまう。

創作を目的にし、ビジネスを取り込んでいく。この技術を本書では、「ビジネススキル」と呼ぶ。「ビジネススキル」を学び、創作を楽しみ続ける力を身につけるために本書がある。

「クリエーター」を「創作している人」と定義する。プロ・アマを問わない。世界中に5,000万人以上存在し、経済的規模は10兆円を超えていると言われている。

稼ぐ手段も多様化し、出版者や制作会社、ゲーム会社から依頼を受ける「受注モデル」、YouTubeなどのプラットフォームを利用して広告収入を受け取る「広告収入モデル」が一般的であったが、コンテンツ視聴者からの「投げ銭」、会員限定のコミュニティの参加者から会費を受け取る「オンラインサロン」、会員限定で動画や文章などを配信するなかで受け取る「購読料」のように、ファンとダイレクトにつながり、稼ぐことも可能となった。

全てのクリエーターにとって必須のビジネススキルは、「お金を稼ぐ」「ビジネスの基礎」「法律・契約」「税金」「独立・法人化」「トラブル対応」である。

創作でお金を稼ぐビジネスモデルは、大きく分けて、「クライアントモデル」「プラットフォームモデル」「ファンモデル」の3つである。

1人1人のファンに届けたいのであればファンモデル、世の中にインパクトを与えるような大きな仕事をしたいのであればクライアントモデルと考えられる。

①クライアントモデルで、積極的に自分から企業に提案する場合
クライアントもビジネスをしている以上、何かを達成したい。そこにマッチしていることを示すことで、仕事を獲得することができる。たとえば「出版社」は、売れる書籍の企画を常に探している。そこで、まさにそのように感じられる「企画書」を作成し、出版社に持ち込んだり、編集者を紹介してもらうことで、出版にこぎ着ける。

自分にしか創れない漫画・イラスト、自分だけが知っている特別な知見(知識)を、出版社の人に「売れる」と思ってもらえる形にしていく。
YouTuberやTikTokerやInstagramerこそ、企画書を作成し、企業に提案することの効果は大きくなる。他のYouTuberやTikTokerは企画書を作成・提案することはないため差別化しやすく、かつ、普段の活動で育まれた影響力がすでにあることから、企業は広告効果を実感しやすい。
クリエーター本人が、企業に「企画書」を作成して持っていくことで、普段の何倍もの金額の案件が獲得することができる。
また、自身のSNSで、「○○企業さんの案件やりたいなー。誰かお知り合いいたら紹介してください!」って言うだけで、予想以上に紹介してくれる人がいたり、実際に決まるケースも多い。

②狙った企業から誘いを受ける場合
企業は「この人に頼めば自社商品が売れる」と判断すれば、その人に頼むこととなる。クライアントの商品を一番うまく売るのが自分であっても、それにクライアントが気づいていなければ、仕事の依頼は来ない。クライアントが気づけるように露出していくのが、有効な戦略である。
企業のWebサイトや代表者や社員のTwitterなどを覗いてみる。

報酬の決め方
①マーケット相場から決める方法
②コストを積み上げて決める方法
③自分で好きに決める方法
クライアントが提示した報酬があまりに安い気がする場合は、他のクライアントと取引する場合の相場観を伝えるとスムーズである。
価格表は分りやすく掲載する場合と、希望があった際に特定の人のに見せる場合がある。それぞれメリットとデメリットがある。

仕事の選び方は、①仕事の目的、②仕事の条件、③仕事相手の3つの観点から検討する。
特に仕事相手は大切である。変なクライアントとは付き合わない。やりがいを搾取したり、割に合わなかったり、喜びを感じられない。下記のような人たちは怪しいので、周りの評判などを聞く。
・お礼を言わない。
・契約書を拒む。
・他にも頼む人がいると言う。
・納期を超短期間に要求する。
・友達価格で安価でお願いしてくる。

打ち合わせの型
①オフライン
訪問 → 着席 → 起立 → 挨拶 → 名刺交換 → 打ち合わせ開始 ②オンライン
準備 → 挨拶 → 打ち合わせ開始
打ち合わせでクライアントは信頼できるかどうか見ている。
①話をちゃんと聞いているか
②確認すべきことを聞いているか
③最低限の礼儀がなっているか

打ち合わせ後の仕事の流れ
打ち合わせ → 仕事の受注・承諾 → 見積書の提出 → 契約書の締結 → 納品・納品書の提出 → 請求書の提出 → 領収書 → 入金

②プラットフォームモデルの場合
YouTubeで稼ぐ。
・パートナープログラム(広告収入)
・チャンネルメンバーシップ
・スーパーチャット
・PR案件
・商品販売
TikTokで稼ぐ。
・ビフティング
・PR案件
・商品販売
Instagramで稼ぐ
・広告収入
・バッジ
・PR案件
・商品販売
プラットフォームモデルは、プラットフォーム側が強くなるよう設計されているので、頑張って発信していても、もらえるお金が思うように増えないことがあり、消耗してしまうことがある。
話題になろうとするあまり過激な表現で炎上やトラブルに巻き込まれる可能性もある。
プラットフォームモデルに限界を感じる場合は、クライアントモデルやファンモデルを併用してみるのもよい。

投稿していたら、事務所から所属のお誘いを受けた場合
条件面で後々揉めないよう、しっかりと条件を確認する。契約書に押印する前に、隅々まで慎重に確認する。
所属契約は、準委任契約や請負契約が多いので、クリエーターは個人事業主等として会社と契約する構図となる。
場合によっては、確定申告や、保険の処置(社会保険への加入など)が必要となる。

③ファンモデルの場合
投げ銭、ファンクラブ、オンラインサロン、オリジナル商品販売など、ファンから直接お金をもらう仕組みはどんどん整ってきている。
国内サービス
note:サブスク支援
elu:デジタルデータ販売支援
BASE:商品販売支援
pixivFANBOX:コミュニティ支援
CAMPFIREコミュニティ:コミュニティ支援
skeb:作品販売支援
17LIVE:投げ銭支援
海外サービス
substack:メルマガ配信支援
cameo:動画コンテンツ販売支援
patreon:メンバーシップ支援
shopify:コンテンツ販売支援
売上と原価と利益の関係をしっかりおさえて、維持に時間がかかってしまい、創作する時間が減ってしまったなど、ないようにする。

売上と利益は、似ているようで違う意味の言葉である。計算式で表わすと、「売上ーコスト=利益」である。コストが引かれても利益が出ているかどうかが大切である。
自分の人件費を忘れないように、
10時間かかっていたら、時給1,000円として1万円のコストがかかっている。仮にそれを5,000円で売った場合
5,000 ー 10,000 = -5,000 円 
5,000円の赤字と考えることができ、時給1,000円のアルバイトをしたほうが効率がいい状態ともいえる。
自分の時給は、自分のほしい時給を仮に設定してみるとよい。

売上から引かれるコストとして
・作業場家賃
・ツール利用料
・人件費
・広告費 その他

特定の顧客から取引を開始してから終わるまでの期間に、どれだけの利益をもたらすかの総額を算出する指標「LTV」(Life Time Value)という考え方もある。1人のファンがクリエイターにどれだけの利益をもたらしてくれるかということになる。
顧客1人を獲得するために費やされるコストをCAC(Customer Acquisition Cost)と言うが、LTV>3CAC であればいいと言われたりする。

今すぐできることは、
①自分が今やっている創作活動のビジネスモデルを考えてみる。
②価格表を作ってみる。
③売上と利益を計算してみる。

このあと、「ビジネスの基礎」スキル、「法律・契約」スキル、「税金」スキル、「独立・法人化」スキル、「トラブル対応」スキルについて説明が続く。

クリエイターとしてやっていこうと考えている人、クリエイターとしてやり出した人にとって、とても有益な本である。著者は弁護士であるが、税理士、社会保険労務士のほか、クリエイターも編集に協力しているので、すばらしい内容になっていると思う。なお、QRコードで、ビジネスフォーマットを参照できる。

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