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自己紹介

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#自己紹介

自分の名前

自分の名前

親には申し訳ないが、物心のついた頃から自分の名前が大嫌いだった。

「松田」は奈良の近所のおっちゃん、おばちゃんから「まった君」と呼ばれる。道を歩いていると「まったくん、おはよう」と挨拶されるのが恥ずかしい。響きが芋っぽいし、実際に田舎者だから余計に烙印を押されたようで下を向いてしまう。

「光正」の名前がなによりイヤだった。自己紹介すると「ミツマサ?武将みたいやな」と即座に返ってくる。それが条件

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流儀

流儀

自分の眼で見たもの、耳で聴いたものしか意見を言わない。

ノンフィクションの本やドキュメンタリーを見ても脳が「事実」と認識しない。歴史の授業は好きだったが、フィクションとして楽しんできた。

今、ロシアやウクライナで起きていることも現地に行かない限り「戦争反対」を叫ぶことはない。人命が失われることは痛ましい。だからこそ「情報」によって語りたくない。

生まれつき何かが欠如しているのだろう。了見が狭

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夢

愛知の伊勢湾岸道路に赤いランプとけたたましいサイレンが響き渡った。4人の救急隊員が担架を持って走ってくる。鮮血に染まった右手には買ったばかりのiPhone5c。「大丈夫ですか?」「ゆっくり寝転んでください」。

2013年10月13日深夜0時、奈良を飛び出して日本一周の旅に出た。ホンダCB1300、通称「ビッグワン」。ヴィクトリーレッド×ホワイトのボディ。父と弟と40万円ずつ出しあい、我が家に来た

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出逢い

出逢い

「この世にオギャアと生まれた人間は誰と出会うか、それ以外に意味はない。だから俺たちは都で人と出逢う”都会”で生きている」。7年前、そう教えてくれた人がいた。

『レヴェナント:蘇りし者』が公開されたのは2016年の4月。熊に襲われたハンターのヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)が殺された一人息子の復讐のため、瀕死の状態から蘇るストーリーだ。

グラスは真冬の川に入り、魚を掴んでそのまま頭から

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兄弟

兄弟

生まれて初めてヒトに会ったのは母親の胎内だった。記憶はないけど思い出はある。

8分早く生まれてはみたけれど、自分を兄だと感じたことは一度もない。世界が勝手に一卵性双生児と呼んでいるだけ。いちいち説明するのが面倒くさいので「ふたご」という体で36年間生きている。

きっと弟は先に生まれることを譲ってくれたのだろう。

親は三輪素麺の職人。家の工場が広いからキャッチボールの場所には困らない。中学・高

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事故紹介

事故紹介

2013年10月13日深夜0時。店長資格をとったばかりのミニストップを退職し日本一周の旅に出た。赤白のホンダCB1300、通称「ビッグワン」。

アルバイトで貯めた旅費の50万円に旅日記のポケットノート、寝袋と着替えだけをナイキのリュックに詰め、奈良を飛び出した。

2004年公開の『モーターサイクル・ダイアリーズ』に人生を奪われた心がようやく点灯。
しかしスタートから秋風が全身を打ち、1時間で心

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