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ELLEGARDENの活動休止から学ぶ!組織崩壊を防ぐためのインナーブランディングの秘訣

こんにちは、ブランディングプランナーのヤマグチタツヤ(@yhkyamaguchi)です。

最近はイベント登壇の偉そうな自己紹介スライドをガン無視して「元々はアイドルでしたが、最近は農業をメイン事業にしてご飯を食べています」からトークを始めることにハマっています。


さて、今回は前回の欅坂46から学ぶブランドPR戦略論のnoteからの「音楽解釈から学ぶ!ブランディング・PR戦略」シリーズの第2段です。

欅坂46のnoteの反響が予想よりも遥かに大きく、「もっと音楽×ブランディングで語れることがあるのでは?」と思い、また筆を取ってみたくなりました。

それに際して、「どのアーティストをブランド解体しようかな〜」と考えていたら、まさかのELLEGARDEN(通称:エルレ)のGt&Vo.でフロントマンの細美武士さんがご結婚されたとのこと!

本当におめでたいし、僕自身も嬉しいので「これはもうファンとしてエルレ&細美さんブランドでいかねば!」と思い、今回のnoteを書くに至りました。

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(エルレ復活ライブのチケットが取れなかったので、仕事終わりにZOZOマリンスタジアムの外で音漏れ聞きに行ったくらいにはガチなファンです)


というわけで!

今回は20代〜30代にかけて今でも根強いコアなファンを多く抱える「伝説的ロックバンドELLEGARDENの活動休止」を題材に"インナーブランディング(理念浸透型の組織作り)"を学べるnoteを書いていきます。

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(出典:https://ellegarden.jp/)

★この記事の前提(言葉の定義)★
ブランド:(相手に伝わる形で編集された)独自の価値・個性
コーポレートブランディング:経営者の思想・理念(ミッションビジョンバリューなど)
ブランディング:あらゆるコミュニケーションにおいて、ブランドを一貫
 させてターゲットへ伝えること 

 Ex)スタバは「サードプレイス」がブランド、「フレンドリーな接客,    リラックスできる空間・内装」がブランディング。
インナーブランディング:社員・メンバーに企業ブランドや社長の思いを浸透・理解してもらう施策全般のこと

※より、これら「そもそものブランディングの前提」の理解を深めたい方はこちらの記事をどうぞ!→  https://note.mu/yamatatsutatsu/n/nc3d1a589ff32


1. そもそもELLEGARDENは、なぜ活動休止になったのか?

※まず本題に入る前に、この注意事項を必ず読んでから本noteをご覧いただけますようお願いいたします※

※このnoteでこれから書くことは、あくまで仮説・推測ベースのお話です。
(当人たちの実際のやり取りや真偽の全ては、どのメディアにも記述がありません)

そのため、この記事を読む際は「聴き手が歌詞を自由に解釈する」のと同じような心持ちでご覧いただけますと幸いです
(真に伝えたいことは「仮説が合っていた場合、どのようにしたら活動休止にならずに済んだのか?」をブランディングの観点で考察することなので......。)

自分もエルレ好きの一ファンだからこそ、強くここは表明させてください。
こちらご了承いただける方のみ、続きをご覧いただければ嬉しい限りです。


さて、本題に入ります!

ELLEGARDENは、1998年〜2008年という2000年代バンドの中で超異質なほど人気となった伝説的ロックバンドです。

作詞作曲を担当するギターボーカルの細美武士さんを中心に、US西海岸をイメージさせるようなカラッとしたギターサウンドのエモ・パンクロックを生み続けてきました。

「シンプルでキャッチーなギターリフ」や「ルート音だけ変える独特のアルペジオ」に、細美さんのとにかく耳触りの良い声と英語詞中心の歌詞が特徴で、その後の邦楽ロックバンドの曲作りにも大きく影響を与えています。
(ワンオクのTakaも2018年10月のROCKIN'ON JAPAとNでエルレ愛を語っていますね)


こちらの『Salamander』はあくまで一例ですが、このようなシンプルだけど耳に残るリフを中心としたサウンドの楽曲が彼らの特徴です。


ちなみに、日本語楽曲かつライブだとこんな感じ(やっぱりカッコいい......)。


さて、彼らが当時どれほど異質だったのか?

まとめると、ざっとこんな感じです。

○インディーズバンドにも関わらずオリコン週間ランキング1位獲得
とあるアルバムがインディーズ年間チャートで1年を通し上位をキープ
○ライブハウスでしかやらないバンドだったが、
あまりにチケットが取れないファンの涙の声を受け、泣く泣く幕張メッセでライブをすることになる

まるで、超伸びていくベンチャー・スタートアップ企業の如し......。


しかし、2008年5月、突然の活動休止が発表。同年9月には、区切りとしてのラストライブが新木場STUDIO COASTで開催されました。

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一体、なぜあそこまで人気を博しながら活動休止に至ったのか?

今回は、その裏側をインナーブランディングの観点から仮説立て・解釈し、「組織崩壊がなぜ起きるのか?」「どうすればそれを食い止められるのか?」ベンチャー企業の組織運営に転用できるヒントになるよう書いていこうと思います。


2. 「ミッション・ビジョンの共有不足」が活動休止のトリガー

まずは例のごとくELLEGARDENをブランド解体してみましょう。

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いきなり結論を述べてしまいますが、この活動休止はシンプルに音楽性の違いだと推測します。

より解像度高く言語化するならば、おそらくですが「他メンバーは今までのELLEGARDENの延長線上にあるロックを奏でたかった」のでしょう。

しかし、"細美さんが見えているビジョン"と"それを具現化する音楽"は今までのロックサウンドとは違うものになっていったのだと思われます。

※少し細かい補足となりますが、ELLEGARDEN休止後に細美さんが新たに立ち上げたバンド「the HIATUS」ではピアノやシンセ、ストリングスなどが多用されているため、そのような解釈をしています。


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先ほどのブランド解体図で説明するのであれば、他3人がSI(サービス・プロダクト)の赤枠で囲っている部分に共感を持っていたのに対し、細美さんはCI(ビジョン・ミッション)の部分で共感を持って欲しかったという乖離が見えてきます。

企業の組織づくり目線に転用すると、サービスはあくまでビジョン実現・ミッション達成の手段ですし、市場トレンドなどによって変化していくもの。

そのため、事業やサービスにだけ魅力を感じている人だと、時間が経つにサービスに変更があると辞めてしまう可能性が高まります。

※例えは良くないかもしれませんが、恋愛相手を「顔・ステータス」で選ぶのと「内面・価値観」で選ぶこととも構造的には同じなので、こちらで比喩すると皆さんもより理解がしやすいかもしれません。


さらに、活動休止前後の細美さんのインタビューを読み漁ると、他メンバーへのバッシングは一切無いものの「創りたい音楽性の違いがゆえのメンバー間でのモチベーション格差」が浮かび上がってきます。

山:「でも細美くんとしてはやっぱり、曲を作り、次のアルバムのヴィジョンを作る人間としては、絶対目線は下げたくないっていうところだったわけだよね。」
細:「そうですね。常に、ちょっと背伸びしてるんで。なんかでもこう言うと、メンバーはもうちょっとぬるくやりたいと思っていたのかっていうと、全然そんなことはなくて。みんなもすごいストイックだし、めちゃめちゃアーティスティックに、ほんとにがんばるんですよ、あの三人は。」
(ROCKIN'ON JAPAN 2008年6月号のインタビュー記事より引用・抜粋)

「創りたい音楽性の違い」。

これは、ベンチャー企業でいえば「事業のピボット」と同様に捉えることができます。

※ビジネス用語においてのピボットとは、「企業経営における"方向転換"や"路線変更"を表す言葉です。

よくあるパターンですが、「事業・プロダクトに惚れているからこの企業で働いています」というパターンで入社・所属している人の場合、大きな事業ピボットの際に「こんなプロダクトになるなら辞めます」となってしまうケースと、このエルレ活動休止の構造はとてもよく似ています。

・・・

少し長くなったので、簡単にまとめていきましょう。

この一連の騒動や着地、またthe HIATUSの1stアルバム楽曲の歌詞解釈をブランド/ブランディングの観点から考察した時に分かったことが1つありました。

それは「CEOの目指す方向性や創りたい社会への共感(ビジョンミッション)が不足している」という、非常にシンプルな問題です。

今回なら細美さんがCEOの立場なので、彼が「我々はどういう人に音楽を届け、社会がどういう風に変わっていったら理想か?」をバンドメンバーと上手く話ができなかったor伝えきれなかったようなイメージですね。


3. CEOは思いが強いがゆえに、言語化が苦手な人も多い

上述の通り、「細美武士が創っていきたい新たな音楽性の変化にメンバーがついていけなかった」という背景がこの活動休止の裏にはあったのではないかと僕は推測しています。

そして、これも想像の域を出ませんが、インタビュー内容やライブMCなどから察するに、細美さんは自分の思いを細かく言葉にして伝えるのが苦手な「ザ・アーティストタイプ」の方なのではないかな?と個人的に感じています。

こちらの書籍『14歳』を中心に、過去のインタビュー雑誌などでも度々このような言葉を残していました。

「自分の嫌なことは嫌だとダイレクトに言う子どもだった」
「本音と建前が分からなくて大人からも嫌われていた」


また、こちらのインタビュー記事ではASIAN KUNG-FU GENERATION(通称:アジカン)のギターボーカルである後藤正文さんからも「(細美くんは考え方が)芸術家過ぎる」と言われています。


親や親友も含め、僕らは全員「他人」なのですから、自分の思いを解像度高く伝えないと、自分の思いや意見は思っている以上に相手へ伝わりません。

逆に考えると、CEOはそのことを誰よりも一層強く理解していれば、より良い組織づくり・カルチャー醸成へと繋げられるはずだと僕は信じています。

もちろん、それぞれ人には得意・不得意があるので、「CEOが全面的に悪い!」というわけではありません。

そういう時は「他人を頼る」ということを視野に入れて動いていくことも必要になっていきます。

最近、自分の本業でも「社長である自分の思いやビジョンが抽象的過ぎて、うまくメンバーに伝わらないんだよね......」という経営者からの思想の言語化のご依頼や、そもそもの企業の核となるビジョンミッションバリューの言語化のお仕事をいただくことがあります。

別に僕でなくても良いのですが、周りに「抽象化して洗練された思いをターゲットの知識レベルに合わせて言語化・デザインする」のが得意な方がいれば、頼ってみるのも1つかなと思います(1人で抱え込むよりよっぽど楽で効率的にビジョン浸透を図ることができます)。


4. 「CEOの思想の言語化問題」はどう解決すれば良いのか?

では、細美さんはこの問題に対してどのようにすれば良かったのか?

これをインナーブランディング(理念浸透・組織作り)の観点から自分なりに整理してみました。

個人的な見解ですが、施策として以下の2つが挙げられます。

①「バンド結成時から何を実現したくてどこへ向かうために音楽をやるのか?」を言葉で伝え、メンバー間で議論すること(=”旗を立てる")

②ピボット(音楽性が変わる)のタイミングで「メンバーに対してなぜ変更しようと思ったのか?」の背景説明をすること

(※①も②も上述の通り、1人で出来なければ他人を頼る前提)


①に関して、これは企業でもそうですが、事業(作曲)をやりながらビジョンが見えてくる場合もあるので、段々と輪郭が見えてきた場合にCEOが中心となりつつ、メンバーと話しながら決めていくのがいいでしょう。

ただ、できれば創業タイミングで旗を立てておける方が採用や事業パートナー選びの際に役立つので、早めの方があとあとレバレッジが効きます(「思想の合わない人と仕事をしない」という判断軸ができ、カルチャー醸成に繋がるため)。

また、あくまで「創りたい世界の共通理解」が目的なので、言語化が能力的に難しいのであれば、理想の社会やそれを実現するためのミッションを絵に書いたって歌詞にしたってOKです。


②の背景説明に関して、これは必ず行わないと「え、なんで急に?どうしたの?」とメンバーが困惑します。

例えるなら、焼肉屋の店長が「明日から八百屋もやるから」と急に言い出すようなものです。

とはいえ、ベンチャー企業あるあるですが、事業のピボット自体は悪いことではありません。

「儲かる事業だけど向かうべき方向に向かっていない」
「向かう方向に沿っているけど、売上が伸びない」

こうした場合、ピボットを検討するのはとても自然なことです。


ですが、現在のサービスに思い入れの強い人にとっては急な舵切りは朝令暮改もいいところなわけで、いきなり結論だけ言われても脳内には「?」マークしか浮かびません。

もちろんいきなり言語化するのは慣れていないと大変なので、「自分でどうしても言語化できない......」という場合は、上述の通り"その仕事が得意な周りの人に協力を仰ぐ”のが良いでしょう。

責任感が強いCEOだからこそ抱え込む方も多いと思うのですが、理想の実現において自分だけで抱え込む必要は全くもってないのです。


5. 他アーティストのインナーブランディング事例

最後に、他アーティストの例を見てみましょう。

「バンドの方向性の共通意識化」について、様々なアーティストインタビューから考察してみた時に見えてきたものを個人的に抜粋します。

5-1.事例①「一緒に過ごす時間を長くする」

インタビューを読んだり見たりしていると、BUMP OF CHICKEN、サカナクションやSEKAI NO OWARIなどからは「メンバー全員で時間を一緒に過ごすこと」が伺えます。

(バンプに至っては幼稚園からの幼馴染でもうそろそろアラフォーだけど、未だに4人でディズニーへ行ったりするほどの仲の良さ......!)


別の角度から見てみると、サカナクションやSEKAI NO OWARI、[Alexandros]などは「同じ家に住む」という過程があったため、それを通して無意識的にインナーブランディングが行われていたのだと推測できます。

もちろん家賃節約の面からその生活スタイルを選択した可能性のが高いとは思いますが、付随的にフロントマンの思想が暗黙知的に伝わるようになっていったのではないでしょうか?

いわゆる、日本文化的な「阿吽の呼吸」でフロントマンのビジョンを理解するイメージに近いです。


5-2.事例②「メンバー間でディスカッションを行う」

先ほどよりもベンチャー・スタートアップ企業で応用できそうなインナーブランディングでいくと、前回書いた欅坂46のブランドPR戦略noteの中盤〜後半でも取り上げた「メンバー間での話し合い」がそれにあたります。

下図のスクショ画像の赤枠・赤線の部分ですね。

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外部のファシリテーターを交えつつ「自分たちで自社のことを考える・話す場を設ける」というのは、ポピュラーですが非常に有効な手段だと思います。

この施策の注意点としては、外部のファシリテーターがいないと「社内の肩書きや人間関係などのポジショントークの力学が働くこと」。

そうするとディスカッションが上っ面で終わってしまう可能性が生じるので、組織の現状ステータスや人間関係を考慮して議論の場をデザインしていく必要があります。


6.まとめ〜組織崩壊はブランディングで防げる〜

「音楽性の違い」と「事業ピボット」の構造が同じこと、またその後のリーダーの対応に着目し、インナーブランディングの観点からELLEGARDENの活動休止を考察してみました。

書きながら自分で改めて思いましたが、やはり「メンバーが組織の何に共感しているのか?」を把握することは大切ですね。

模倣可能性の高いサービスや年収・休日などの福利厚生面への共感だと、他社への転職をはじめとした「メンバー脱退」が起こり、下手すると数名のスタートアップなら組織崩壊が起きる可能性も無くはありません。

だからこそ、他社が模倣できない企業のコアな部分(経営者のビジョンや原体験、それに紐づいて醸成されるカルチャー)でヒトを巻き込んでいくことがこれからはより大切になっていくなと、ELLEGARDENや他バンドを見ながら強く感じました。

※また、何度も繰り返しになりますが、この記事はあくまで僕の推測・解釈がベースとなっています。
ファクトベースの真偽に関しては不明な部分が多いので、どうしてもあくまで自分の脳内分析の域を出ませんが、何か不都合があればいつでも仰っていただけたらと思います。


7.おまけ〜the HIATUSの歌詞解釈〜

細美さんがthe HIATUSの1stアルバムの1曲目に持ってきた『Ghost In The Rain』の歌詞解釈も過去に趣味的に一度行っているので、もしご興味ある方がいらっしゃればぜひご覧くださいませ!

(エルレの他3人がいなくなった寂しさや、売れ線の曲を作ることなどに対する葛藤などが歌詞から解釈できるので、めちゃめちゃ面白いです!)


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