名称未設定のデザイン

ノンデザイナーでも出来た!ゼロからの名刺リブランディング思考プロセスのまとめ

こんにちは、ブランディングプランナーのヤマグチタツヤ(@yhkyamaguchi)です。
名刺交換で「名前、いじっていいんですか?」とよく聞かれますが、ここぞとばかりに盛大にぜひいじってやってください。


さて、今日はそんな名刺に関してのお話です。

普段はコーポレートブランディングのお仕事をしているのですが、「最近、自分自身に目を向ける時間が減っているな......」と感じることがありました。

普段から内省を日々繰り返している人間ではありますが、それでもなんだか足りず。。

より相手にもっと自分のカルチャーや価値観を速く直感的に伝えたい......と思い、


その結果、


「そうだ! デザイナーではない自分だからこそ、名刺をゼロからコンセプトを考えて創れたなら、改めて自分の軸を再確認できるかもしれない!」


という、おそらく常人のそれとは大きくかけ離れた思考が雷鳴の如く脳内に突如として閃いてしまった上、その時なぜか無性にハイでポジティブだったのでチャレンジしてみたくなってしまいました。

俗世間ではこのような人のことを「ドM」と呼びます。


そこで、ヤマグチは無謀ながらに名刺をゼロから制作し始めました。

※ちなみに僕は高校生の時、美術工芸の授業で学年最下位を記録・偏差値27を叩き出した悪魔のポテンシャルを持つ男です。
美術の先生から「ヤマグチ君の絵は気持ちが悪いね」と言われるほどでした。下記がその証左です(19歳の時にハトの模写をしました)

画像1


・・・

では、古代壁画に掘られている絵のような禍々しいコンセプチュアルアートを描くこのノンデザイナー男がどのようにアイキャッチ画像のような名刺をつくることができたのか?のプロセスをこのnoteで思い出がてら振り返ってみます。


◆Part1. 突如はばかる『名刺、要らなくね?問題。』

「さ、目的やゴール、誰にいつ渡すかの5W1Hとか書き出して整理しよー」と企画書っぽいものを書き出したのですが、なんといきなり壁にぶち当たります。


それは...


「そもそも、この時代に名刺って要る?」


という、近代の人類史上の中でもそこそこ大きめなサイズの問いに自分で自分に問いを投げかけてしまったある種の病的な「WHY?」思考の成れの果てでした。要約すると「厨二病」という3文字に収まります。最初から収めればよかった。

画像2


考えてみてください。みなさん、名刺って貰った後ってどうしていますか?

周りの20〜30代男性に僕がヒアリングしたところ、大体はこの3つのパターンに落ち着きました。

1.名刺スキャンアプリでスキャンしたらファイリング。
2.名刺スキャンアプリでスキャンしたらシュレッダー行き。
3.貰ったものをファイリングするのみ。


これを聞いて思ったのは、「現在のビジネスシーンにおける名刺の意味合いって何?」ということです。

ぶっちゃけ、Facebookで友達になればそれで仕事連絡すら済んでしまうような時代。

しかし、ここはマナーにうるさい国代表格の日本です。名刺を渡さないというコミュニケーションはあまりにも既存のフォーマットから外れすぎて、それはそれでエゴ(自分)を出し過ぎているように特にご年配の方から思われてしまうように僕は感じます。

プロダクトアウトとマーケットインの感覚に近いですが、"エゴと常識の境目をうまく縫う"ようにしながら渡さないと日本ではやりづらいな......よし、名刺自体はつくろうというマインドになりました。


◆Part2. 「整理する→狂う→散らかす」

さて、やっと名刺をつくる意味が自分の中で腑に落ちました。

次に「名刺スキャンして、はい終わり勢」という時代の最先端を行くニュータイプでハイカラなイノベーター理論の最前線を駆け抜けるビジネスマンの方々に対して名刺を渡すという儀礼行為を通じ、「何をどう伝えるべきなのか?」を考えていきます。

(※「誰にいつどこで」は、名刺交換の場合は自分でコントロールできないので、逆に「いつでもどこでも誰にでも」を意識していました。)


というわけで、まずは「何を」の部分を改めて整理してみます。

◯What:ヨハク(≒ヤマグチタツヤ)の大切にしていることを知ってもらう
 →分解してざっくり説明すると以下2つです。

1.企業/個人のコア(=コーポレートブランド=独自の意志・哲学)を全ての企業活動(プロダクトづくり・組織づくり)に一気通貫させるお仕事をする人間であること。

  2.「既存の価値観に余白をつくる」という考え方を全活動の根本に置いていること。
→自社/自分らしさを貫いた結果、新たな価値観の組織やプロダクト、キャリアが生まれることでもっと生きやすくなる世の中になったら......という思想の人間であること。

ここに至る原体験は長くなるので本記事では割愛するものの、「なぜこの仕事をしていて、それを通じて何をしたい存在なのか?」はだいぶ整理できました。


次にそれを「どう伝えるか」です。

まず言っておくと、僕に直接会ったことのある人はご存知だと思いますが僕は「バカ真面目」です。

バカだし真面目なのもありますが、自他共に認めるほどきっちりしっかり丁寧にいろいろやるよねと言われるタイプの人間なのです。


しかし、上記にあるように「価値観に余白をつくること」からブレてはなりません

自分で考えておきながら、「なんて業を勝手に背負ってしまったのだ......ブランドをつくるとはそういうことだと分かってはいるけれど、あの名刺という枠からどうやってはみ出ていけばいいんだ......」と3分ほど脳内でのたうち回りながら、ふと思いつきます。


「そうだ、狂おう!」

画像14

とにかく真面目なヤマグチタツヤは、理性を保てる範囲の中でお酒をガブガブと飲み始めます。

Whatに書かれたコンセプトを表す名刺のブレストを日々真面目に、且つ警察に捕まらない程度には夜な夜な酩酊しつつやり続けます。

※僕まで捕まってしまうと全国の山口達也さんがより生きづらい社会になってしまうことへの配慮は欠かせません。


こちらが酔いながら悪戦苦闘したノートです。

すごい絵の数々でピカソの絵を初めて見たあの頃の童心が脳裏の淵からついふっと蘇ってきます。僕自身、あまり何をしていたのか覚えていません。

画像3

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ただ唯一、朦朧とした記憶の中で覚えているのは、「動詞(破る・めくるなど)」「素材(紙・金属など)」「形(厚み・硬さなど)」の3パターンの切り口で考えていたということです。

例えば、2枚目の画像の右側は名刺や自分のコンセプトから連想される「動詞」をブレストで書きまくっていますね(字が象形文字で読めない)。


そして、フラフラに酩酊しつつも頑張った結果、3つのパターンが出てきました。簡単にご紹介しましょう。


①表裏一体ver

画像5

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名刺だけど「表も裏もない」というアイディアですね。

「この人から見たら×でも、あの人から見たら○だよね」のような"価値観の余白をつくる"というミッションを表すために価値観の表裏一体性を表したアイディアです。

ただ、「複雑性が高く、パッと見てこの思想が伝わるかと言われると、抽象的な思考が好きな人しか分からないだろう」という難点もあります。


②価値観めくりver

画像7

これはデザイン性に特化したアイディアです。

ロゴ部分を押すことによって出来る影によってヨハクのロゴを表せるようになっています。

たしかにこういう名刺を見かけたことはありませんが、ただ「既存の価値観をめくる」よりも「コアを一気通貫させる」というWhatの方が表現したいので、その点がやや難点です。


③一気通貫ver

画像8

「企業のコアとなるコーポレートブランドを全ての施策に一気通貫させる」というコンセプトから、ど真ん中にコアを穴を開ける(=貫通させる)というアイディアがこのパターンです。

直感的にインパクトがあり分かりやすいものの、シンプル過ぎて逆にこれでいいのだろうか?情報不足過ぎないか?という点が心配です。

※なぜ穴の向こう側に"フローリングの床"の画像を選んだのかはお酒のせいで記憶がございません。


◆Part3. 「見てもらう→選ぶ→磨く」

次に、これらを知り合い数名に見せて印象をリサーチしてみます。

コーポレートブランディングをやっていると思うのですが、就活生の自己分析と同じで「自分のことなんて自分だけじゃ分からない」んですよね。

己の哲学とマス市場の間を縫うようなものを作らないとただのアーティスティック兄ちゃんで終わるので、客観的な意見をまた酒を飲みながら数名の方にもらってきました。

画像13

その結果、やはり①と②はヨハクの概念が直感的に伝わりづらいことが分かりました。

しかし、③の一気通貫verはとても評判が良かったのです。

やはり、直感的な分かりやすさと「なぜ、穴?」というところからヨハクのコンセプトや思いを山口が口で説明できるコミュニケーションが発生できるようになっていたことが人気の要因でした。


というわけで、これをブラッシュアップ!

(ヤマグチはイラストレーター等を一切いじれないため、ここからは僕ディレクションの元、知り合いのデザイナーに馬肉を奢ることによりいろいろ調整をしていくことになります)

画像9

うーん......

なんかシンプルじゃないし、そもそも裏面の文字ってオレまだ何も考えてなかったじゃん


というわけで、改めて課題点をピックアップするとこんな感じです。

・不要な情報が多い(「代表」や名前のローマ字表記)
・情報を一つの欄に複数載せ過ぎ(メアドと電話番号)
・フォントパターンが1つだけなので、これで良いのか分からない。
・裏面の文字を考えていないまま

というわけで! これらを全て解決していきます。

見た目をシュッとさせながら、フォントのパターン出しをし、裏面の言葉を考えた結果がこちらです。

(※ヤマグチは不器用過ぎてハサミとカッターを用いると周囲を傷つけてしまう恐れがあるため、手先の器用なデザイナーの方に切ってもらいました)

画像10

フォントで印象って全然違くなりますね......。

迷った挙句、選択したのは左上のフォントでした。

理由は「シンプルかつ細すぎず堅すぎず」が印象としてあったから。

最初は上の列の右から2番目がヤマグチタツヤ個人っぽいフォントだなと思ったのですが、

「いや、待て。のちのちヨハクと一緒に働きたいです!」なんていう稀有なメンバーやパートナーさんが出てきたらこのフォント合わないな......」

と思い、そちらではなく、誰でも受け入れられるような普遍性のある左上のフォントを選択しました。


◆サンプルが完成!

選んだデザインデータを持って、名刺屋さんへGOしました。

名刺屋さんが「え、正気ですか?穴、こんな開けるんですか?あの、ちょっと待ってくださいね......」と奇妙且つ神妙な面持ちになってバックヤードへ戻っていった後ろ姿が印象的で忘れられません。

しかも、紙は「厚みもありながらも堅すぎず柔軟に相手に合わせたブランドづくりをしていく」という意味合いから特殊な厚紙を選んだので、普通の裁断ができません。

店員さん、オーダーが多くてごめんよ......。


そして時は経ち、出来上がったのがこちらです!

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おお! ちゃんと穴空いているし、いい感じじゃん!


しかし、これはあくまで僕の中での満足度の高さの話。

早速、世間の皆様に見せてどういう意見をもらえるかをテストしてみます。


◆お披露目した結果はいかに......

果たして、美術偏差値27がつくった名刺は大衆の目にどう映るのか?

とりあえず、Twitterで報告してみました。


そして、いただいた反応が......


おお......!嬉しい......!

自分の美的センスにはトラウマがあったし、そもそもデザイナーじゃない人間だけど良いと思ってもらえる物を作れたことが嬉しすぎて思わず飛び跳ねました。

その後も会う人会う人にサンプルを見せまくる日々が続きましたが、想定していたような反応とその後の口頭コミュニケーションを取ることができ、名刺の機能性の良さも確認することができました。


正直、この名刺を見て感性が合わない方とはお互いのためにお仕事をすべきではないと思うし、逆に「良い!」と思う方とはご一緒したいという意図も込められています(この辺りは採用ブランディングの"母集団を減らす"ノウハウと同じですね)

「名刺を渡す」という行為が、現代において、さらには自分という人間やブランドにおいてどういうものなのか?

改めて自社/自分の思想に沿って考えるのは、とてもいい機会だなとつくりながら自分自身強く感じました。


◆自分のコアな価値観があれば、肩書きは飛び越えられる。

というわけで、美術の偏差値27のノンデザイナー人間が名刺をつくる過程を備忘録的にまとめてみました。

僕はコーポレートブランディングの人間なので少しポジショントークくさくなってしまいますが、それでもやはり「自分の中にブレないコアな価値観を持って、それを言語化してブレない軸にしておくこと」は大切なことだなと、自分自身を通して改めて感じました。


「自分のコアをきちんと持てば、何もないところからでも相手に自社/自分のカルチャーを伝えて共感を生むことができる」


これがコーポレートブランドの良さだし、そのブランドを成す根源の原体験は自分だけの過去や原体験があるからこそ、他の人が絶対に真似できない独自の強さへと昇華していきます。

(全く同じ人間なんていませんからね。いい意味で、この世は全員他人です)


自分と感性の合う人がお客様になったり、メンバーになったり、事業パートナーになったり......となっていくと、自分たちのカルチャーを崩すことなく、自分たちらしく前へ進んでいくことができるようになる。

このnoteの本当に言いたかったことは以上です。

「自分のコア」と「考え抜く努力」さえ出来れば、おそらくコンセプトはつくれるはずですので、自社や自分のブランドを深く強く内省しながらまずはみつけていってみてくださいね。


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Twitter:@yhkyamaguchi


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ヨハク代表/ブランディングプランナー。ビジョン共感で自走する組織ブランディング・PRを支援しています。noteはブランディングや組織カルチャー、音楽関連多め。(一社)日本ブランド経営学会 理事/Forbes JAPAN CAREER寄稿 ご連絡はTwitterのDMから。

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