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2019年4月の記事一覧
時間がアフォードするもの(20)
「自分探し」とは本来、「自分」を探すことではなく、既存の環境のなかで自分が居やすい場所を見つけたり、つくり出したりすることだ。
人間の心的な機能も脳の内部で自律できる過程ではなく、環境との関係性にこそ、その本質がある。
『〈心〉はからだの外にある』の一節である。自分探しは、自分の中にある何かを探す行為ではないと、心理主義的な考えから一歩距離をおいた考えである。さらに、アフォーダンスを提唱したギ
未来のために現在があると信じた平成、そして令和(16)
本を読んでいて、ときに内臓が震えるときがある。寒気に近い感覚だ。それが起こるのは、自分が無意識に信じていたものが否定され、そしてその否定の論理に自分が納得してしまっているときだ。
頭はNO、体はYES。
この分離した状況を内臓、特に胃が察知するのだ。たまにこれが体調不良につながることさえある。そのほか、前頭葉が破裂しそうになる感覚もあるが、それはまた別の機会に読書の身体感覚みたいなテーマで書こ
大山エンリコイサム『アゲインスト・リテラシー』と見田宗介『現代社会はどこに向かうか』(15)
「いきなり前人未到」だなんて大げさなテキストが帯に書かれている。グラフィティ文化論という未知の領域に対して、いとうせいこうが言うなら、そうなのだろうと思いこんでいたが、実際にはその思い込みがより強まったというのが読後感である。日常的に目に入っていたグラフィティがいったいどういう経緯で、なぜ、背後にあるもの、どのように解読すればいいのか、それ以上にグラフィティは理解しうるものだという可能性を提示して
もっとみる誰かにインタビューするということ(14)
衝動的に話を聞いてみたいと思うときがある。それは複数人のなかに共通点を見つけたときである。リストアップした3,4人が考えていることを聞くことで、点と点がつながり、まだ誰も見たことが、考えたことがない切り口が浮かびあがるのではないか、という期待感があるからだ。その切り口は自分にとって新たな発見となり、充足感をもたらす。もちろん、その発見から次のステップ(コンセプト、事業など)につながればよりよいが、
もっとみるティム・インゴルド『ラインズ』(13)
彼の論述はぶらぶら歩きのように進み、立ち止まり、道草を食い、また進む。このプロセス自体が思考の実質であり、文の歩みを単なる「輸送」(すなわち出発点と到着点が決まっていてそのあいだを直線でむすぶ動き)にしない秘訣だ。ついで概念的語呂合わせとは、音と音の呼応を発想の飛躍のばねとする語呂合わせのように、思いもよらない事例のあいだに類似や並行関係を見出し、それに沿って論述を横すべりさせていく傾向をさす。