みやびなかかし

詩を書いています。好きなモノはたぶん、、孤独と夕暮れ。小説の執筆にも挑戦中。依頼やお題…

みやびなかかし

詩を書いています。好きなモノはたぶん、、孤独と夕暮れ。小説の執筆にも挑戦中。依頼やお題も欲しいです。好きになって下さい。

最近の記事

都会混じりのオレンジ

ひどい二日酔いに 随分と のたうちまわっていた ズキンズキンと瞼を叩く日差しが ようやく傾き煤けだした頃 とうに空っぽの胃を労る様に 恐る恐る自身の食欲を確認する 狂おしい程切なく茜色に染まった6畳間 ゆっくり身体を上げてカーテンの外を眺めると とろりとした夕日が地平に溶け込む瞬間だった 宇宙船に攫われたのかと 或いは車に轢かれる瞬間の野良猫が見る最期の景色はこんなだろうなと 視界も感覚も永劫の橙が包みこんだ一瞬 時間は奪われ 音は消え去り それから ようやく 世界を 

    • 辞典

      皿に置かれたパパイヤのスライス 油画に写すに最適に見える情景だが 思慮深い人々に言わせればその重みの概念は 形而上学に分類されるという 糸引く納豆を歌った詩句 その臭気は外国人にとって如何にも不可解で 見出しはことごとく黒塗りにされた いつまでも綺麗にたためないTシャツ 正しい技術はアパレル従事者と 一部の清廉な主婦達のみによって共有されており 50年に一度山深き寺社にて密やかに公開される 街で見かけた爆乳の女 あざとく覆う小さなTシャツの丈は腹にも足らず 臍の窪みから

      • 尿意

        叫び声が夕闇に遠く響いた 時間が少しだけ歪む 一昨年の今頃 団子を食べていた 男の頭の中にふとそんな情景が思い出され 瞬く間に 世界は押し潰される 最寄駅には間に合わない 女が甘い香りで肩をぶつけてくるが ITs your own business 4「×:|¥4€# 誰とも分からぬため息と同調して 全身が黄金色に輝き出す さて、 ふう、おれ、、俺。 来世はエジプト王にでもなろうかしら

        • モーニングルーティン

          テーブルにおいたiphoneを覗きながら 右手にハンバーガーを頬張り 左手に熱いコーヒーを啜り ふと眼前の壁を眺めては 思い出したように鞄の中から哲学書を取り出す バーガーを左手に持ち変えて 右手はナプキンでちょちょと指を擦ってから なるべく油で汚さないように 慎重に、ガサツに、ページを開く インクの上に視線を落とすも なんだかんだ言葉は頭に入らず 咀嚼したものを飲み込むうちに本を閉じる 朝マックを食べている束の間の十数分 俺は何にも考えてないんだなと思いながら でもこの時

          日常

          夜 大通りで青年が死んだ 大破したバイクの残骸よりも大袈裟に 彼の身体は千切れていた 血溜まりから漂っていたという酒の香りを 人々は連日叩き上げた 昼 豪邸で老婆が死んだ 富豪の旦那は国すら動かすが 彼女の死に目には会えず 感情と倫理の境目は誰にも分からなかった 朝 コンビニのトイレで赤子が生まれた 可能に塗れた若き母親の選択は苦いものだったが その瞬間彼女の生命の輝きは止まることを知らなかった 朝 路地裏で青年が死んだ 決して届かない祈りの儚さと矛盾の香りは 禍々しい

          the sky

          砂漠の夜はどこまでも青かった 頭上は何億もの星々の軌跡 丘には商人とラクダの影が浮かび上がる 時間の隙間にオアシスと草花が 現れては消えて 消えては現れて 瞬きするのも憚れていた 僅かに顔を撫でる風音も、 小さな狼の遠吠えも、 何処かで僕を呼ぶ人の声も、 分厚い永劫の静寂が踏みつけ掻き消していた 僕の右手はいつからか左足になり 目は鼻と眉毛と混ざって区別もない 内臓が次々と尻から流れ出て 悠久の大河の如く溢れ出た血液が 意識の断崖に流れ落ちていく 歴史の教科書を誦じ

          休憩時間

          錆びた鉄のがりがりした触感 なぞった指の腹が汚れている 油混じりの汗を拭いながら 反対の手で口に押し込む塩むすびの 只 ひたすらの 美味さ 一瞬 隣の友人に目をやって 何も言わずに席を立った

          伊勢

          清流に浮かぶ木の葉の影 小魚がふと見上げるように 一瞬動きを止めて泳ぎ出す 岩の上でたくさんの若者が愛や友情を 弾けさせていて でもその話し声は神の囁きにかき消されていた それはいつかの、五十鈴川で見た夏の風景

          あってはいけない

          銃声はネットを通じて鳴り響いた それは昼下がりの街の喧騒に紛れたが 夕方テレビから流れた現場のそれは 想像を遥か超えて大きいものだった わが国にも戦争が靴音を響かせてやってきたと 何年も叩かれながら一億の上に立ち続けた男 最後にはその身をもって国民を守ったが 平和ボケした市民は誰一人 彼を救うことができなかった 歴史の転換点が今日だとしたら そのニュースをiPhoneで目にした途端 僕の視界は何だか白けたようになって 人々の表情は何故だか見えづらく あるはずの喧騒も全く聴

          あってはいけない

          colorful sadness

          はじまりはLSDを使ったみたいに鮮やかで 結末がハイビームの尾を引いている 沈黙の隙間をひっそりと野良猫が往来するが 見逃そうにも目脂で瞳は閉まらない 路地裏のバケツは血まみれで 銃の引き金に言及する者は無かった ハーフのホッピーは永遠に交わらず 焼酎が痺れを切らして帰っていった 月夜に反響する怒号はモノラルだったが ビートルズがMIXの手腕を発揮する レコードに刻まれた爪痕を目ざとく見つけたと 名探偵は興奮気味に走り出す 彼の両足は既に吹き飛んでいたが 指摘はミュートされ

          酔い覚ましの夢

          こんな夢をみた 私がまっすぐ降り立った街は、夕日の只中にあった。 そこら中に震える黒い線は果たしてトタン屋根のようで、風からは昭和の匂いがした。 職場の知人女性がふいに眼前に現れて「ようやく就職が決まったの」とはにかんだ。「とは言っても実家の八百屋よ。私の仕事は大根を洗い続けるだけなんだけど。」 振り返ると屋根の上で、目が合ったのは不貞腐れた髪の長い女。歳は若かったが、私の母親。 家一つ離れたトタンから彼女は遠くを眺めている。慣れた足取りで私は近づき、何か言おうと口

          酔い覚ましの夢

          ある日のパラディドル

          太鼓を叩くぞ どんどんどんどんどん さぁどんどん どんどん叩くぞ どんどんどんどん ああ心地よい どんどんどんどんどん どんどんどんどんどん どんどんどんどんどん どんどんどんどんどん どどどんどんどどん すいませんちょっと咽せました それでも叩くぞ どんどんどんどん Dont let me down (ぼくをがっかりさせないで) どんどんどんどん どんどんどんどん どんどん どんどんどん どん どんどんどん どんどんどんどん イケイケドンドン どんどんどんどん!! どん

          ある日のパラディドル

          非合理的思考

          満開の桜が散る頃に 去年も何とか生きたと思う つむじに残る花びらより 絡まる指を冷たく見ている 春が終わったらそのときは 酒をやめると決めているから 一人で生きるには空が青過ぎる 時間は風に運ばれ 香りは誰かに訪ねられ 閑散な公園に佇むと 明日はきっとこないと思う ロケット花火の骸と共に 砂利の苦味が口に広がる 春が終わったらそのときは 職安に行くと決めているから 一人で生きるには飯が旨過ぎる 景色は夢に溶かされ 痛みは確かに感じられ

          非合理的思考

          ソクラテスへの批判

          言葉は影にすぎない 魂や肉体や欲望そのもの そういった本質の何れかも含みはしない 言葉を人が発する時の音韻 空気の響き 余韻 感情 悪意 そういったエレメントを完全に表す事すら言葉は出来ない なのに、太古の馬鹿げた西洋の哲学者たちが 筋肉にまかせて言葉の立場を出鱈目に強めてしまった 言葉は影にすぎない 其れだけで存在する事は決してない 其れが表すモノ、其れを発するモノ、其れを受け止めるモノ 過保護なほどに他者の協力を得て、何とか存在し得るようだ 言葉は影にすぎない 其れ

          ソクラテスへの批判

          pray for living

          心臓がチくりと痛む時 少しだけ死を意識する 戯言のように死を思う時 輝くような生が見えてくる しかし眼前の生がはっきりと囁く時 奴の息は臭くてたまらない 灯を消してチューハイにほだされ、眠る 夢の輝きは万華鏡 微かに聞こえる隣人のいびきがドアを叩き 得体の知れない日常が俺を覗き込んでくる 10月の分厚い雲を眺める時 この雨が一生止まなかったらと憂う 冬の日差しに一抹の暖を感じた時 身体中の細胞が一斉に伸びをする 胸のときめきは万華鏡 かつての恋人が急にパイパンになった時 取

          情勢

          「気に入らないな」と動いた口が バタフライエフェクトに連れられて 世界中に爆弾を落とした 子供たちの阿鼻叫喚がこだましつづけ 荘厳な第九がリフレインする 海水はどこもかしこも干上がってしまい リュウグウノツカイはとうとう天竺に辿り着いた分厚い雲をじっと睨む老人は 舟の用意に余念がない メディアは打って変わってお祭り騒ぎで インターネットは人々を慰めるフリして傷つけている 政治家の顔はデジタル化されて 1とも0とも分からない声だけがひびく 乱高下するチャートにはもはや、