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日常

夜 大通りで青年が死んだ
大破したバイクの残骸よりも大袈裟に
彼の身体は千切れていた
血溜まりから漂っていたという酒の香りを
人々は連日叩き上げた

昼 豪邸で老婆が死んだ
富豪の旦那は国すら動かすが
彼女の死に目には会えず
感情と倫理の境目は誰にも分からなかった

朝 コンビニのトイレで赤子が生まれた
可能に塗れた若き母親の選択は苦いものだったが
その瞬間彼女の生命の輝きは止まることを知らなかった

朝 路地裏で青年が死んだ
決して届かない祈りの儚さと矛盾の香りは
禍々しいほど生臭いものだった


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