colorful sadness

はじまりはLSDを使ったみたいに鮮やかで
結末がハイビームの尾を引いている
沈黙の隙間をひっそりと野良猫が往来するが
見逃そうにも目脂で瞳は閉まらない
路地裏のバケツは血まみれで
銃の引き金に言及する者は無かった

ハーフのホッピーは永遠に交わらず
焼酎が痺れを切らして帰っていった
月夜に反響する怒号はモノラルだったが
ビートルズがMIXの手腕を発揮する
レコードに刻まれた爪痕を目ざとく見つけたと
名探偵は興奮気味に走り出す
彼の両足は既に吹き飛んでいたが
指摘はミュートされモナリザの下に隠れた

配信者の愛液が椅子の下に溜まり
やがて地面は均衡を失う
電子の果てで縺れ合う何億もの人々が
ドア越しに彼女を覗いていた
仮想通貨はその価値を奪われて
今や玉蜀黍のように小さく見えたが
それはやがてくる更なる狂乱への堆肥だと
両腕に抱え込んだ一円玉を涙目に
ギャンブラーはまだ命の火を燃やしている

鳥と赤子の声が雑音を掻き消して
辺り一体が焼け野原になる
高層ビルが幾度も崩れ果てて
泥とも肉とも分からぬ姿になった
土石流は微動だにせず
積み重なった死体がようやく天空に届き
神話ぶりに、人類は言葉を取り戻す
一丸となって発した言葉は
紛うことなきとっておきの

果てない夢と諦めの呪詛であった