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酔い覚ましの夢

こんな夢をみた

私がまっすぐ降り立った街は、夕日の只中にあった。

そこら中に震える黒い線は果たしてトタン屋根のようで、風からは昭和の匂いがした。

職場の知人女性がふいに眼前に現れて「ようやく就職が決まったの」とはにかんだ。「とは言っても実家の八百屋よ。私の仕事は大根を洗い続けるだけなんだけど。」

振り返ると屋根の上で、目が合ったのは不貞腐れた髪の長い女。歳は若かったが、私の母親。

家一つ離れたトタンから彼女は遠くを眺めている。慣れた足取りで私は近づき、何か言おうと口を開く。すると突然、音階の壊れたチャルメラが何処からか流れてきた。

「この音は何?」私は尋ねる。
「いつものアレよ」母は気だるく答える。
「ラーメンの屋台かな?」
「違うわ。うちの両親が夜の営みしてるのよ」

チャルメラを口に咥えながら祖父と交わる祖母の姿を私は思い浮かべ、奇妙にも素直に受け止めた。その景色はアブノーマルというよりノスタルジーだった。

私が祖母の死を伝え聞いたのは半年程前のことだ。死に目に会えなかったことは、きっとずっと後悔するだろう。

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