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都会混じりのオレンジ

ひどい二日酔いに
随分と
のたうちまわっていた

ズキンズキンと瞼を叩く日差しが
ようやく傾き煤けだした頃
とうに空っぽの胃を労る様に
恐る恐る自身の食欲を確認する
狂おしい程切なく茜色に染まった6畳間
ゆっくり身体を上げてカーテンの外を眺めると
とろりとした夕日が地平に溶け込む瞬間だった

宇宙船に攫われたのかと
或いは車に轢かれる瞬間の野良猫が見る最期の景色はこんなだろうなと

視界も感覚も永劫の橙が包みこんだ一瞬
時間は奪われ 音は消え去り
それから
ようやく
世界を 宇宙を
僕の手中に取り戻した

風の色はもう夜風に近い
失われた昨日の記憶は拒否しようにも、
きっと戻ってくるのだろう

空の音はもう識別できない
汗ばんだ身体と乾いた喉を誤魔化すように
僕はとにかく、とりあえず

酒を飲もうとグラスに手を伸ばしている


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