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看護師が改めて”死”について考える/臨終の謎


日常の死

看護師3年しかやっていない私でも、
この仕事をしているとたくさんの”死”に出会います。

私は救急科で働いているので
他の看護師よりも死に関わる機会が多いと思います。

救急車で運ばれ、救急科に入院する患者さんは
ほっとくと2、3日で亡くなる人がほとんどです。
しかし、ほっとくことはしないので、
治療をすれば9割以上が1ヵ月以内に退院していきます。

1ヵ月に5、6人くらいは(もっといるかもしれないが)、全力で治療をしても入院後数日~1週間で亡くなる人がいる。

また、1年に2、3人ほど3か月くらい
救急科に入院し、退院することなく亡くなっていく人がいます。

こんなことは思ったらいけないのですが
どこか、日常の”死”に慣れてしまっていたと
ある本を読んで思いました。

今まで私が見送った患者さんを
思い出させる本を紹介したいと思います。

「臨終の謎」

※ネタバレはありません。

(1)概要

この本は、著者の志賀医師が
実際に診てきた患者さんを紹介しています。

ネタバレはしたくないので、
ぜひ読んで自身の感想を
持っていただきたいのですが、、

私が心に残った一部エピソードを下記で紹介します。

箇条書きにしました。

  • 苦しまずに最期を迎えるために医療者ができることPg95~:緩和治療はあくまで患者の苦痛を軽減するために行う。延命は必ずしも患者のためではない。家族のためでもない。

  • 死別ストレスから親を守る家族Pg124:何が正解だったのかか分からなくなった。

  • 死の間際に聞こえる亡くなっているはずの母の声Pg139:お迎え現象とは?亡くなる直前、その人が一番会いたい人が迎えに来てくれているのかもしれない。そう思うと心が温かくなります。

  • 末期の水Pg147:旅立つ家族を慈しむために与える最期の水。ただの儀式ではなく、死者の人生に感謝する残されたものの思いの1つの伝え方なのかもしれないと私は思います。

  • 中治りPg164:亡くなる前に一瞬元気になる現象。私はこの現象は最期に愛した人たちに愛を伝えるための時間なのではないかとひそかに思っています。

  • 命は自分だけのものではないPg201:生命が誕生した時から名の億年もの間命が繋がれたと思うと不思議な思いになります。自分の存在する意味って何だろうと、哲学的な考えをついしてしまいました。

以上の項目から3つ私の考えを述べたいです。

(2)緩和治療とは

「緩和治療」と聞いたとき、
どんなことを想像しますか?

以前術後の患者さんに対して
緩和チームが介入しようという話が上がり
家族に説明することになりました。

しかし、家族は緩和チームの介入を拒否しました。

一般的に、「緩和」と聞くと
”死”のイメージが付いているからです。

ご家族が
「もう亡くなるってことですか!?」
と言っていたのが印象的でした。

緩和治療という名前が
誤解を生みやすいんだと思います。

緩和を辞書で調べると

厳しさや激しさの程度を和らげること。また、和らぐこと。

デジタル大辞泉

言葉の通り、苦痛を取り除くことが
「緩和」の目的なのです。

痛みのせいで眠れない、イライラする、苦しい、動けない。これは、死の直前だから起こるわけではありません。

すぐ死に直結しない
痛みや息苦しさ、倦怠感、嘔気、掻痒感は
様々な病気やけがで生じます。

それを軽減するために使用される言葉が
「緩和」なのです。

もちろん、亡くなる直前の人も
苦痛が伴っている場合があります。
死が近い人は苦痛が多いことが
多いのだと思います。

医師や看護師は
患者の治療をしていくために
症状の”緩和治療”をしていきます。

また、患者が苦痛なく日常を過ごせるように
”緩和ケア”を行います。

それは、死が近いとか
関係ありません。

どの患者にも平等に
症状の緩和を目指しています。

どうか、「緩和」と聞いて
”死”だけを想像しないで欲しいです。

(3)延命治療はしたくない、本当?

延命は望みません。
たくさんの患者さんから
聞いてきました。

同時にたくさんのご家族の方からも
聞いてきました。

しかし、死が見えてくると
あと数時間、命を伸ばしてください。
もう少しだけ一緒にいさせてください。
とご家族から要望があることがあります。

数分無理やり心臓を動かすことは出来ます。
しかし、本当にそれは
本人が望んだことなのでしょうか?

最近そんなことをよく考えます。

延命治療のについて語るとここでは
収まらないので、
また次の機会に
話そうかと思います。

延命治療、家族のエゴになっていませんか?

(4)中治り

私は何度もこの場面に遭遇しています。

重症心筋梗塞で循環補助装置が1か月以上はずれず。
呼吸器も2か月かけて、やっと外れる時間を作れるようになってきた。という患者さんがいました。

症状は良くなったり、悪くなったり。

ある日、なんと、歩行器を使用して
10mほど歩いた日がありました。

すごい!こんなに良くなって!
と、病棟全体が歓喜で沸きました。

しかし、次の日心不全悪化で
その数日後にあっという間に亡くなりました。

一瞬良くなった日、
家のリンゴ農場について楽しそうに
奥さんと話していました。

神様がくれた、家族と語り合う
最期の時間だったのだと思います。

私の祖父、祖母にも中治りが確かにありました。

祖父は亡くなる2週間前には
意思疎通が難しかったです。

亡くなる前日、
母がお見舞いに行くとしっかり目を開けて、
「演奏会頑張って」と母に伝えたのです。

祖父は母のフルートが大好きだったので、
母にもう一度その気持ちを
伝えてくれたのかもしれない。

祖母の場合は、
末期がんで1年間の闘病生活をしていました。

1ヵ月ほどぐったりと過ごしていましたが、
亡くなる3日前、気分が良く、よく話すようになりました。
その日に「もう私はダメだ」と突然言いました。

そこから家族が集まって来て、
最期にみんなと話すことができました。

大切な人と過ごしたいという気持ちが
中治り現象を引き起こすのでしょうか。

毎回とても不思議な気持ちになります。
しかし、この現象を見るたびに、
ああ、もうすぐ死が近いんだと
思わずにはいられないのです。

(5)人生とは

人の人生が終わるということは
何十年と描かれてきた軌跡が止まるということ。

人が誰と出会い、誰を愛し、愛されてきたのか
何に興味を持ち、何に一生懸命になってきたのか
何に希望を持ち、絶望してきたのか

ひどい人生だったと思う人がいるかもしれない。
でもその人生は全てがひどいものだったのか。

幸せそうに過ごしている人がいる。
でも、その人の人生は幸せだけだったのか。

まったく同じ人生は
人類が誕生してから1つもない。

私の人生も私なりの軌跡を描いているはず。

人の死を見ると、自分の人生についても考えさせられます。

本を勧めたい人

部署によっては患者さんが亡くなることが
珍しいこともあると思います。
しかし、病院外にいる人に比べて
入院している方は圧倒的に”死”に近い人々です。

現実に絶望している人
未来を考えられない人
何も信じられない人

健康で生きてきた、まだ若い私にとって
”死”を感じることがどんなものか
想像できません。

医療者として患者さんに関わっていく上では、
患者さんの心を知ろうとすることは必要なことで。
患者さんの気持ちを理解しようとすることが
結果的に患者さんの不安を軽くすることに繋がるかもしれない。

看護師や看護学生がこの本を読み、
”死”について考えることは
看護をしていく者として必要な看護観を
養うことができるかもしれない。
看護師なら読んで欲しい一冊です。

看護師以外でも、
患者に関わる医療者や医療事務者
患者の家族や友人、同僚
たくさんの人に読んで、考えて欲しいです。

おわりに

誰にでも「死」は訪れます。
自分はどんな「死」を迎えたいか、
家族にどんな「死」を迎えて欲しいか。

「死」について考え
自分の人生を振り返り、
未来をどう変えていくか行動してみませんか?

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みなみ🌼看護師が読むべき本紹介 on Instagram: "@nurse.book373←他の投稿はこちら 忙しい毎日の中でも、本を読んで教養を身に着けませんか? 看護師へお勧めしたい本を紹介しています! 「臨終の謎」 志賀貢 著 読んでみたいと思ったら「👍」の スタンプで教えてください😳 なるほど→👍 参考になった→👍👍 すぐ読みます→👍👍👍 もっと聞きたいことがあれば ぜひコメントで教えてください👀 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ◆自己紹介 ✾インスタ運用について知識0からのスタート ✾海外で働くために資金稼ぎ中 ✾長野県で働く現役救急看護師 ✾1998年生まれの25歳 ◆発信内容 ✾自分が読んだ本の記録 #臨終の謎 #看取り #終末期 #看護師 #看護師勉強 #本紹介 #自立女子 #夢を叶える方法 #自分らしく働く #自分らしく生きる" 0 likes, 0 comments - nurse.book373 on July 14, 2024: "@nurse www.instagram.com


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