#45 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた
旅の第二交差点ーネパール④
スペインでやると決めた、徒歩による巡礼の練習も兼ねて、往路はほとんど小走りのようなスピードで向かったボダナートだったが、復路はそこでの体験を何度も反芻しながら、バスでのんびりと帰った。
日本人のオーナーが常駐している、タメル地区のゲストハウスに着いても、そのことが頭から離れず、その癒着を解くのには時間をかけるしかなさそうだった。
その晩は何をするでもなく、晩飯を摂った後に就寝した。
そして、翌日、何をして過ごそうかと、カトマンズに着いた時のように、惚けた頭で考えていると、ふと漫画が置かれた本棚を見つけた。
そこのオーナーが、訪れる旅行客の暇つぶしのために集めたという、その漫画類の中に、手塚治虫著「ブッダ」を見つけたのである。
相変わらず、でたらめではあるが、宗教的なものに対しては何でも、とにかく曝露を増やそうとしていたぼくは、その「ブッダ」を手にとって、貪るように読み始めた。
かなりの割合で、創作が盛り込まれているという触れ込みの本作であるが、ぼくが今後の予定を決めるにあたっては、含蓄に富んで余りあるものだった。
作中に出てきた、ブッダ生誕の地、「ルンビニ」に訪れようということに決めたのだ。
ネパール南部、インドとの国境に程近い場所に、ルンビニという街が実在している。
歴史を振り返ってみると、インドの北部、当時カピラバストゥ王国の王子として生まれた、「シッダールタ(後の釈迦)」であったが、その生誕の地として語り継がれているのが、このルンビニという街だった。
そして、その街の記念公園には、まさにシッダールタが生まれたとされる、巨大な菩提樹が現存しており、その樹の根元で瞑想などしてみれば、何を感じるのだろうと、興味ごころが盛り上がっていたのだ。
漫画「ブッダ」の内容とリンクする土地が、ネパールや北インドに散在することなどが分かり、また作品自体が、非常な示唆に富んでいたことなどから、ちょっとした興奮状態のまま、ぼくはルンビニ行きを即決したのだった。
続く
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