見出し画像

『竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記』を読んで 

『竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記』 森見登美彦(訳)、川上弘美(訳)、中島京子(訳)、堀江敏幸(訳)、江國香織(訳) 2016.01.12 発行 河出書房新社

内容
 絢爛豪華に花開いた平安王朝の珠玉の名作を、人気作家による新訳・全訳で収録。最古の物語「竹取物語」から、一人の女性の成長日記「更級日記」まで。千年の時をへて蘇る、恋と冒険と人生。
 「もの」を「かたる」のが文学である。奇譚と冒険と心情、そこに詩的感興が加わって、物語と日記はこの国の文学の基本形となった。――池澤夏樹
竹取の翁が竹の中から見つけた〝かぐや姫〟をめぐって貴公子五人と帝が求婚する、仮名による日本最古の物語、「竹取物語」。在原業平と思われる男を主人公に、恋と友情、別離、人生が和歌を中心に描かれる「伊勢物語」。「虫めづる姫君」などユーモアと機知に富む十篇と一つの断章から成る最古の短篇小説集「堤中納言物語」。「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとしてするなり」、土佐国司の任を終えて京に戻るまでを描く日記体の紀行文、紀貫之「土左日記」。十三歳から四十余年に及ぶ半生を綴った菅原孝標女「更級日記」。燦然と輝く王朝文学の傑作を、新訳・全訳で収録。 

河出書房新社より

『竹取物語』

 現存する最古の物語。かぐや姫が竹の中から生まれて、月へ帰って行くまでの話で、伝奇性、空想性の強い作り物語です。

 『源氏物語』では、「物語の出で来始めのおや」と評しています。

 以前読んだのは随分前だったため、どんな内容だったか曖昧でしたが、「こういう話だったな」と思い返しながら読み進めました。ユーモア溢れる作品で、五人の求婚者たちの阿呆ぶりが見事に描かれ面白いです。

 また、随所に語源に関する駄洒落は、現在も使われている言葉で、富士山の名称の由来など、日本語の歴史を語っています。それも相まって、とてもリアリティ溢れる物語になっています。 

 ところで、かぐや姫が月で犯した罪とは何だったのか、気になります。

『伊勢物語』

 和歌を中心とした百二十五の章段から構成され、在原業平とおぼしき人物の生涯を描いています。和歌と散文とを見事に融合させた歌物語というジャンルを開拓した作品でもあります。

 各段はすべて独立の物語で、それぞれの段には、一首以上の和歌が必ず入っています。

 男女の哀愁に満ちた恋物語、恋愛の逸話が多く、話自体は短いにもかかわらず、恋愛の本質を捉えていると思いました。

 数行だけで、恋愛を表現していることに、驚愕し、どうしてそんな芸当ができるのだろうと考えると、やはり和歌にあるのだと思います。

『堤中納言物語』

 十編の物語から構成される短編物語。

 伝統的な「もののあわれ」の世界を描く一方で、人生の断面を皮肉たっぷりな笑いで表現しています。短編集でありながら、味わいが多様でした。

『土左日記』

 紀貫之が土佐の守の任期を終え、京に帰り着くまでの五十日余りの旅程を綴った日記。
 仮名文字を使用し、女性が書いたかのように装っているのが特徴で、自照性の強い日記文学という文芸を確立し、女流日記文学へ受け継がれます。

 本文の訳は、ひらがなで、説明や注は(…)で書かれています。ひらがなだけで書かれていたら、読むのに苦労しましたが、(…)で補足があるため、ひらがな酔いをしながらも何とか読み終えることができました。

『更級日記』

 菅原孝標女の十三歳から約四十年間の人生を回想的に綴った日記。
 少女期は、源氏物語をはじめとする物語世界への憧れ、晩年は仏にすがる心境、信仰の世界を求めていく様子が描かれています。 

 菅原孝標女は、物語の美的世界に憧れますが、現実はそうはいかず、物語とは違う生活に失望します。そのため、「子どもを贅沢に育てられますように」「財産ができますように」など、神仏参り、パワースポット巡りのようなことをします。
 
 今でもそのようなことをする人は多くいるため、現代的な物語だと感じました。昔も今も、人間の本質は変わっていない、もしくは昔に逆行しているのかもしれません。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?