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教え子と父の手作りキャンプ

愛媛県松山市を流れている石手川と重信川の合流地点には出合大橋と言う大きな橋が架かっています。その橋脚が私たちのキャンプの場所でした。今から50年以上前のお話です。

小学校の教師をしていた父は、夏休みになると教え子たちを連れてキャンプに出掛けていました

参加人数は10人以内。幼かった私も父と一緒に行きたかったので、無理を言って連れて行ってもらっていました。

一番の目的は川遊びです。海と違って泳いだ後の始末が楽だったので私は川のキャンプが好きでした。川の水はその頃はとてもきれいでしたが、思いの外冷たかった記憶があります。

キャンプに必要なものはほとんど父が準備していました。今と違って便利なキャンプグッズが揃っていたわけではありませんがその場にあるものを上手く活かしたキャンプで、その手作り感が良かったと思います

地面のゴロゴロした大きな石を拾って、ビニールシートを敷き、その上にござを敷いたら、メイン基地の完成です。座り心地が悪い時は、バスタオルなどを敷いてそれぞれが居心地を良くしていました。

イベントの一つはご飯作りです。人気メニューは子どもたちが大好きなカレーライス

川遊びに疲れたら夕飯の準備が始まります。河原に転がっている大きな石を積み上げて、かまど作りです。
子どもたちはキャンプ遊びの一環で料理の行程を楽しんでいました

「野菜は大きめに切れよ、ゴロゴロしとんがええけんな」
「山ごりさん、ジャガイモの皮は剥ぐん」
「剥いた方がおいしいぞ」
「山ごりさん、玉ねぎ剥いたら涙が出てきた・・・」
「泣いとけ、泣いとけ」

「山ごりさん、もうルー入れてもかまんかなー」
「おー、もうちょっと待てや、野菜が煮えてからぞ」
山ごりと言うのは父のあだ名です。父は子どもたちからそう呼ばれていました。

川から上がって少し冷えた体にバスタオルを巻いたままで、ぐつぐつ煮えるカレー鍋を「まだかなー、お腹減ったな―」と、覗き込んでいました。

飯盒で炊くご飯の味は格別でした。煙たくなる風下を避けながら、炊け具合を見ていました。飯盒から取り出す時のご飯の香りは今も忘れられません

おこげ入りの大盛りのご飯にカレーをたっぷりかけて、みんなで立って食べていました。キャンプの時のカレーライスは、家で食べるよりも数段美味しかったと思います。

みんなが競うようにお代わりするので鍋はあっという間に空になりました。自然の中では食欲が旺盛になるのです。

ご飯を食べ終わったら、花火大会です。意外に盛り上がるのが線香花火で、お兄さんやお姉さんはキャーキャー言いながら、花火の火の玉を隣同士でくっつけあって遊んでいました

その頃になると、風が心地よくなって、昼間の暑さがうそのように涼しくなります。

キャンプの最後はかまどの薪を眺めながら、輪になって、しりとりやクイズをして遊びました。遊びつかれた子どもたちはだんだん無口になって、川のせせらぎを聞きながら、パチパチと言う火の粉をぼんやりと眺めていました

自然との一体感を感じるあの時間は、幼かった私の記憶にも鮮明に残っています。

翌朝は、川の水でざぶざぶ顔を洗って、早々に帰り支度です。片付けもみんなで一緒にやるのであっという間でした。

お前ら、来た時よりもきれいにして帰るぞ」父の号令で、その辺のごみをきれいに拾いました。

帰りは山ごり先生のおごりで素うどんを食べて解散です。

父は毎年のようにその時々の教え子たちとプライベートなキャンプに出掛けていました。面倒なことがたくさんあったと思いますが、子どもたちとの触れ合いが何より楽しかったんだと思います


【毎日がバトル:山田家の女たち】

《北条の鹿島には私もよく行ったんよ》


トップ画面のイラストを懸命に描いているばあばと。

「私は下の子が小さかったけん、川のキャンプは行ってないんよ、けど海のキャンプはよう一緒に行ったよ、お料理班よ」

「私は海にはほとんど行ってないわい、就職しとったけんね」

「私ら、子どもたちと協力して、料理作ったよ、やっぱりカレーは多かったね、夕方になったら海からの風が気持ちよかったんよ」

「北条の鹿島じゃったんじゃろ」

「そうよ、あそこでも、テントは張らんかったんよ、納涼席があってね、そこに蚊帳を張ってね、蚊取り線香もしてキャンプしよったんよ、おしゃれじゃなかったけど納涼席は居心地がよかったわい」

「ほんと鹿島は船に乗るけん、旅気分が盛り上がったろう」

「後で振り返って写真見ても、子どもらは喜んどったよ」

子どもたちと参加したキャンプは親子のキャンプとはまた違ったいい思い出になっているようです。母もまるで先生のようだったと思います。


【ばあばの俳句】


朝散歩大樹の陰に涼誘ふ


母は大樹がとても好きです。寄り添っていると心穏やかになり、木から教えられる事も多いと言います。特に夏の暑さをしのぐ時の大樹の陰はありがたくまた癒しを感じるそうです。そんな様子を詠みました。


イラストの中の母の姿が穏やかに描かれている様子が母の気持ちを表しているなと思います。


▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。

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私のアルバムの中の写真から

また明日お会いしましょう。💗

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