3歳の男の子がケラケラ笑っていた
☆☆ショートショートストーリー
両親の反対を押しきって結婚したエリさんは、地方都市に住む親元を離れて、東京で暮らしています。地元に帰ってきて欲しかった両親とはいつしか疎遠になりました。
エリさんは、両親への申し訳なさもあって、故郷が遠のき、子どもが生まれてからも、一度しか、親元には帰っていませんでした。
彼女の息子は3歳半になっていました。
息子のみつる君は、エリさんから見てもお爺ちゃんによく似ています。楽しいことがあった時にくしゃくしゃにして笑う顔がおじいちゃんにそっくりだと思っていました。
エリさんは息子の笑顔を見るたびに、田舎の父親のことを思い出して、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
エリさんはご主人の二郎さんにその思いを伝えました。
「最近、田舎の両親から、連絡がないけど、元気にしてるかなー、二郎さん、みつるも大分大きくなってきたから、次の連休に田舎に帰ろうかなー、思いきって」と言うと
二郎さんは「僕は連休は休みが取れそうにないから、エリだけ帰ってきたらいいよ、みつるを連れて帰ってこいよ」とやさしく答えていました。
エリさんはサプライズで実家に帰ることにして、チケットを予約しようと思っていたある日の夜のことです。
隣で寝ていたみつる君が本当に楽しそうにケラケラ笑っています。とてもとても楽しそうに声を出して喜んでいます。
「あっ、は、は、は、はー、おもしろい・・」
エリさんは、「みつるが笑ってる、楽しそう、どんな夢をみてるんたろう」と思っていました。
すると、笑っていたみつる君が、突然むくっと起き上がりました。
エリさんはみつる君を抱き上げて、「ミー君、どうしたのー、物凄く楽しそうだったよー、笑ってたね」と聞くと
みつる君は、「ママ、楽しかったー、ぼく、遊園地で遊んでたんだよー、初めて行った遊園地」
「みー君、どんな遊び・・・」
「くるくる回るやつ」
「あっ、観覧車」
「うん」
「そーかー、ケラケラ笑ってたけど、楽しかったの」
「うん」
「誰と遊んでたのー」と訪ねると、みつる君は
「僕ね、じいじと遊んでたの、じいじも楽しそうだったよー」と、答えました。
エリさんはちょっとびっくりしました。
エリさんが小さい頃、お父さんとよく行っていた遊園地に観覧車があって、お父さんと乗っていたからです。
その日の朝、エリさんに田舎のお母さんから電話がありました。
「エリ、お父さんが昨日の夜、倒れてね、意識が戻らないんだよ」
エリさんはお母さんに伝えました。
「あ母さん、昨日ね、みつるの夢にお父さんが出てきたんよ・・・・」
その時、みつる君は、かわいい笑顔で、玄関に向かって手を振っていました。
そして、みつる君は大きな声で言いました。
「じいじ、また遊びに来てね・・・」
エリさんは玄関に目をやりましたが誰もいませんでした。
電話の向こうで、お母さんの大きな声が聞こえてきました。
「エリ、お父さんの意識が戻ったよー」
エリさんがみつる君の顔を覗き込むと、みつる君はじいじとそっくりのくしゃくしゃの笑顔で笑っていました。
エリさんのお父さんは、奇跡が起きたように意識を取り戻したのです。
お父さんが目が覚めて最初に言った言葉は
「みつるは何処だ」でした。
☆☆☆
私が生まれて始めて書いた短い物語です。最後まで読んでいただいてありがとうございました。私のショートショートストーリーの第一歩になりました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《あんたこんなん書くんじゃね、まー、やっとうみ》
母にショートショートを音読したあとの親子の会話です。
「あんた、ホントにあった事かと思たがね、お父さんの意識が戻って良かったねー」
「お母さん、これは私が始めて書いたショートショート、短い物語なんよ」
「私は、お父さんが無くなってしまうんかと思とったら、意識が戻って良かった良かった」
「お母さん、私の初の物語はどうだった」
「あんた、今度はもっともっとハッピーな楽しい物語を書いとうみや」
母が物語に入り込んでいたのにびっくりしました。これから時々ショートショートストーリーにもチャレンジしていこうと思っています。
【ばあばの俳句】
行く春を惜しむ心のそれぞれに
季節は緩やかに初夏に向かって歩み始めています。優しく暖かな春の空気を惜しむように、それぞれが思い思いの場所で行く春を楽しんでいます。
母はそれぞれの過ごし方を松山の印象深いロケーションに描きました。今年の春は存分に楽しめないことも多かった分、季節の移ろいはなおさら愛おしいものになっています。
▽この記事の中の「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」は毎日、音声配信しています。20時前後に発信している「フリートークでこんばんは」もお聞きいただければ嬉しいです。
今日もたくさんの記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただきありがとうございます。
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私のアルバムの中の写真から
また明日お会いしましょう。💗
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